第1話
帰宅し、着替えを済ませ、今日の夕刊新聞を読みながら、珈琲を飲む。これが僕の日課だ。その新聞に興味深い記事が載っていた。
【未来遊園地で殺人!?】
『二月二日、午後五時三十分頃、未来遊園地の観覧車のゴンドラから、
「ナイフに容疑者の指紋か……。よくある話だな。安全大国日本は何処へ行ったんだか」
そう呟いた時、聞き覚えのある声が聞こえた。
「何悟った風に言ってんの」
「姉ちゃん、いつの間に」
僕の姉、京子は警察官だ。交通課ではアイドル的存在らしい。
「帰って来たなら、ただいまくらい言えよ」
「言ったよ。あんたが新聞に夢中で聞こえなかっただけじゃない。それに、あたし以外とまともに話せないあんたに言われたくないけど」
「悪かったな」
僕にだって欠点はある。僕は、他人と話すのが苦手だ。よく人に言われるのは、何も考えずに話せ。それが出来るなら、苦労はしない。
「ねえ、明日から旅行に行かない?」
「何だよ、急に。それに、仕事は?」
「いいじゃん、たまには二人でさ。それに、お父さんとお母さんが死んでから、楽しい事なんてあった?」
いつも前向きな姉ちゃんが、そんな事を言うとは思っていなかった。姉ちゃんも参っていたんだな。
「わかった。行くよ」
僕は姉ちゃんの誘いを断る事が出来なかった。
二月四日、僕達は新幹線の中にいる。外を見ると酔うからと言って、姉ちゃんは窓のブラインドを下げた。だが、僕には疑問が残った。
「全席の窓でやる必要ある?」
「仕方ないでしょ。少しでも外が見えたら嫌なの。それに、他にお客さんいなんだからいいじゃん」
「ま、僕には関係ないからいいけど」
それにしても、静かだ。いつの間にこの国の新幹線はこんなに静かに走れるようになったのだろう。それに走ると言うより、宙に浮いている感じがした。
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