第5話
僕達は入場料を払い、中に入った。僕は迷わずに、観覧車がある場所を目指した。姉ちゃんはトイレに行くと言って、姿を消した。
他のアトラクションはどんな物があるか気になり、周りを見ながら歩いたが、観覧車以外にはバーチャルで体験する物ばかりだった。
そんな事を確認しながら歩いたわりに、五分ほどで観覧車に辿り着いた。ゴンドラは全て、鏡張りになっていた。昨日の夢の僕は、ゴンドラを調べていた。しかし、今は営業中で、観覧車は動いている。ゴンドラの中をしっかり調べる事は出来ないだろう。……営業中?
おかしい。営業中なのに、どうして、誰もいないんだ?
姉ちゃんが戻ってきたのは、僕が観覧車乗り場に着き、三分ほど経った頃だった。
「恭介、ごめん。待った?」
「早くない?」
「そんな事無いよ。ところで、調査は終わった?」
「何の調査だよ?」
「ほら、観覧車で起きた殺人事件のだよ」
何故、そんな事を知っているのか、ふと疑問を感じたが、僕は何も言わなかった。僕の中で、その事件は解決していると思っていた。
「その事件なら、解決したでしょ」
「なんだ。恭介は流石だね。そんな事くらい、すでに知ってるか」
おかしい。その事件が解決したと思ったのは、僕が見た夢のせいだ。どうして姉ちゃんがそれを知っているんだ?そんな事を考えている僕を見て、姉ちゃんは言った。
「“なんでそんな事を知っている?”って言いたそうな顔してるね。あんたの事だもん。そんな事くらいしか、興味ないでしょ」
「そんな事ないし……」
姉ちゃんと僕が話をしていると、どこからか声が聞こえた。
「あの、すみません」
その女性は、僕に話しかけてきた。
「は、はい……」
僕は人と話しをするのが苦手だ。相手が女性となると、なおさらだ。
「でたよ。恭介の人見知り」
姉ちゃんは僕を、呆れた目で見つめた。
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