第29話 こんな変態!
髪からは水がしたたり、頬が赤く
「ゴメンナサイね菅谷くん」
顔を赤くして謝る小鹿野さん。
「謝ることないよこんな変態!」
「変態とはなんだ! 場合が場合だから仕方ないだろ!」
「フン、小鹿野さんに免じて許してやるけど、この借りは高いわよ」
「借りなのか!」
土間ではタローが体を震わせて水を弾き飛ばしている。犬は便利だな。
「ところで、これ何?」
ちゃぶ台の上にいろいろ並んでいる。なんか知らんけど菅谷が作ったらしい。
「悪いけど、さっき台所と物置を漁って作ってみた。即席の武器だ」
「武器? これが?」
「反撃するにしても、三宅ならともかく小鹿野では相手を傷つけることに抵抗があるだろうから」
「ちょっと何よその言い方!」
「……小鹿野でも使える武器を作ってみた。このティッシュで包んだものは、コショウにトウガラシに火鉢の灰だ。顔に目掛けて投げつければ目つぶしの効果はあるから催涙スプレーの代わりになる。それからこのヘアスプレー、中のガスは可燃性ガスだ。だから相手に噴射しながら、ライターの火を近づければ小型の火炎放射器になる。」
へー! そりゃいいね。
「あと、最後の手段として果物ナイフとか千枚通しとかを使うといい。
小鹿野さんに念を押す菅谷。
「とにかく、こうなった責任は俺にもある。だから、ずっと一緒にいるというわけにはいかないが、できる限りは側にいて守れるようにはする。危険だから、しばらくは外出する時は同行する」
「本当? 私、行きたいところがあるんだけど……」
小鹿野さんが顔を赤くして、モジモジしながら言い淀んでいる。その仕草がやっぱりカワイイ!
「大丈夫だよ、菅谷からは私が守るから」
「お前なあ!」
「私ね、プール行きたいの」
途端に顔色が変わる菅谷。
「プール! 行こう行こう! 私も絶対行く!」
「学校、プール無いなんて知らなかったから、授業でも泳がないし、だからプール行きたいなって」
「そうなんだよねー、あの学校プール無いんだもん! 入学してから分かってビックリしちゃったよ」
「いや……プールは、その、マズイと思うぞ……」
「何がマズイのよ菅谷? 人の裸見といて、水着くらいで何言ってるのよ」
小鹿野さんが
「あー! アンタまさか!!」
「アンタまだカナヅチのままだったの!」
図星、という顔だ!
「わかった!! アンタ、プールが無いこと知ってて、それで今の高校選んだんでしょ!!」
日頃の偉そうな態度はどこへやら。うろたえてやんの。
「よし! そうと決まれば明日の学校帰りに水着買おう! 菅谷、あんたも一緒だよ。小鹿野さんの側にいなくちゃね。そんな顔しなくてもいいじゃん。浮輪くらい買ってあげるよ」
ウヒー! チョー気持ちいい!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます