第28話 こら!
その夜は、本当に楽しかった。
小鹿野さんが手持ちの材料でカレーを作ってくれたけど、とても美味しかった。
菅谷も泊まるわけで、男が家にいることで安心できたけど、食後、お風呂をどうするかという事で問題になった。
先に私たちが入ったら、後に入る菅谷が何を見つけるか心配だと私が主張。いい加減にしろと怒る菅谷。
とにかく先に菅谷が風呂に入り、私たちが後に一緒に入ることになった。
別々に入った方がいいかなとも思ったけど、一緒に入る方がやっぱり楽しそうだったし。
そんなわけで、菅谷が先にお風呂に入ったわけだけど、風呂からあがってきた菅谷が小鹿野さんに、台所や物置を見ておきたいと言い出した。何をするのかわからないけど、小鹿野さんはOKを出した。
次は私たちの番だ。
こーゆーのワクワクする。友達と一緒にお風呂入るなんて修学旅行みたい。
脱衣所で服を脱ぐ時も、なんかちょっと恥ずかしい。えーいと思い切って下着も脱いで裸になる。恥ずかしがってバスタオルを体に巻こうとする小鹿野さんから、タオルをもぎ取ったりしてキャッキャいいながら浴室に入る。なんて女の子みたいな事してるんだろ私! 女の子みたいだよね、ね?
「さーて、落とし物はないかな?」
「やめてよ三宅さん」小鹿野さんが苦笑してる。よし、女の子みたいだ!
髪も洗って2人で湯船につかりながら、学校の事とかのとりとめない話をする。
トランプ占いは結構な人気で、数日先まで予約が入っているそうだ。そのほとんどが恋愛相談で、こんなに人の秘密ばかり知ってしまっていいんだろうかって悩んじゃったとか。それと、あの竹中さん、最近化粧が薄くなったと思ったら、なんと例の彼氏とデートを重ねているんだと! それはビックリ! とにかくよかった。
お湯に浮かぶ小鹿野さんの胸が意外にあって、このコ着やせするタイプだったんだなって、ちょっと新鮮な驚きがあったり。
いきなり、外から窓をカリカリこする音がした。ビクッとした小鹿野さんが私に抱きついてくる。
私もギョッとしたけど、すりガラスの窓には見覚えのある前脚が2本見えていた。
タローが前脚で窓をカリカリとやってるんだ。
窓を開けるとタローが鼻先をつき出してきた。尻尾をぱたぱたと振って、その眼が「あそぼ、あそぼ」と言っている。
「こら! 番犬が風呂を覗くとはどういうことだ!」
「タローったら、ほんと嬉しいのね」
嬉しくて興奮してるタロー。前脚を窓枠からはずして地面におろした、と思ったら、いきなり窓をめがけて飛び込んできた!
タローの鼻先が私の顔面に直撃して、私とタローはそのまま湯船にひっくり返る!
悲鳴を上げる小鹿野さん
「三宅さん! 大丈夫?」
「テメー! 痛いじゃないか出てけこの野郎!」
「ダメよ! やめてお願い!」
興奮したまま狭い風呂場の中をずぶぬれで暴れるタロー。
「どうした! 大丈夫か!」
血相変えて扉を開けて飛び込んでくる菅谷!
一拍おいて、新たな悲鳴と怒号と吠え声が浴室に響いた。
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