第27話 逃げるなんておかしい!

 本吉……。

 やはりそうなの?


 その名を菅谷が口にした時、納得と意外とが入り混じった感覚になった。

 小鹿野さんも否定していない。小鹿野さんが感じた「匂い」は、誰とは断定できないけど、知っている人間のものだったらしいし……。

 何よりトイレにカメラ仕掛けるような変態だから、確かにあり得る。

 モトキチが辞めた後の学校の情報がモトキチに伝わっていれば、菅谷の交遊関係から、カメラのマイクロSDを交換するような女子生徒として、私と小鹿野さんはすぐ分かるかも……。

 モトキチが住んでいた川越市内のアパートはすでに引き払ったと聞いているけど、そんなの車一台あればどこへでも行けるわけだし、これはちょっとマズイんじゃないか。


「とりあえずさ、今日私ここに泊まるよ!」

 驚いて私を見る小鹿野さんと菅谷。

「だって、小鹿野さん1人にしておけないじゃない!」

「今夜は小鹿野がビジネスホテルに泊まるということもできるぞ」

「いや、逃げるなんておかしい!」

「お前なあ……」

「逃げるんじゃなくて、迎え討つ方がいい!」

 思わず拳を握りしめて叫んでしまった。

「あのなあ…………それもいいかな」


 まずは親の説得からだと菅谷に言われた。うん、そりゃそうだよね。

 ちょっと気が重いけど、ママに電話してみる……。


 電話ごしにギャーギャーやりあってしまった。

「お願いだから私を信用してよ、ねえ……え? 逆に先方が心配だって? ちょっとお、少しはこっちを心配してよ!……うん、わかった……一度帰るからさ、着替えとかも必要だし……」


 電話を切って、こっちは了解もらったよと菅谷に伝える。

 交代に菅谷が自宅へ電話をかける。すんなり電話が終わる菅谷。どんな家庭なんだ?


 私と菅谷は、交代で着替えを取りに戻ることにした。私が先に戻るので、その間は菅谷が残ることになる。

「タロー、私が戻るまで、ちゃんと小鹿野さん守るんだよ」

「お前、嫌味な奴だな」


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