第23話 意外だねえ

「意外だねえ、あのギャル系の竹中がねえ」

「ホントは言っちゃいけないんだけどね」

 小鹿野さんが言うには、隣のクラスの吉川くん、女の子みたいな感じのほっそりした男の子、竹中さんは彼のことが知りたかったらしい。

「昔、子犬を連れて散歩してた時に、野良犬に襲われたのを助けてくれたんだって。でも、その時は名前も言ってくれなかったんだけど、校内で一目見て、あの時の男の子だと分かったらしいんだ。でもどうしていいかわからない、そもそも私の事を憶えていないんじゃないか。そんな相談だったの」

 その後、小鹿野さんは竹中さんと一緒に、隣のクラスへ行き、その彼氏の席を教えてもらって、机を触った。

 見えたものをその場で言うと不自然だから、また教室に戻ってトランプをシャッフルして、それらしく体裁を整えて、それから「何か棒のようなものを使って追い払ったのでは?」と言ったらしい。「そうなの! すごく強かった!」と竹中さんの反応。

「その彼氏、剣道やってるみたいなんだ」

「剣道か、この辺やってる人多いもんね。キリトくんとか」

 誰それ? という顔をこっちに向ける小鹿野さん。ありゃ、見てないか、あのアニメ。

「でね、ストレートにお礼を言ったほうがいいと思うよって、言ってあげたんだ。それと、『付き合ってる女の子はいないみたいよ』って」

 それ聞いた時の竹中さんの顔が見たかったな。どんな返事したんだろ。


 翌朝、小鹿野さんと一緒に教室に入ると、席に座っていた竹中さんと顔をあわせてしまった。相変わらずハデな化粧だな。

 一応挨拶をしようと思ったら、竹中はすぐに顔をそらしてしまった。

 ありゃ、嫌われた? ひょっとして昨日の件、上手くいかなかった?

 不安に思っていたら、竹中さんは顔をそらしたまま、右手でVサインを送ってきた!


 私と小鹿野さんは、共に小さくガッツポーズをした!

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