第16話 覗きたいの?

 小鹿野さんの告白は、さっきの「能力」の告白より、重要で勇気がいるものだと思う。うーん、上手く自分でも言葉にできないんだけど、前のは強さの告白で、今のは弱さの告白、かな?

「確かにそんな便利な能力をいきなり手にしたら、誰でもつい使ってみたくなるさ。それは人間として当然だと思う。実際のところ……俺だってわからない」

「菅谷、あんたも女子トイレのぞきたいの?」

 ついストレートに訊いてしまった。菅谷は、さすがにあいつにしては珍しく照れて下をむいて頭をかいた。それでも誤魔化ごまかすことなく、顔を上げ天井を見ながらはっきり回答した。

「さっき三宅が言ったのは、結構こたえたよ。俺も偉そうなキレイごとは言えたもんじゃないんだ。まあトイレはちょっとアレだけど、でも、そりゃやっぱり、見たいという気持ちは、ある。実際問題として、性的欲求というのは始末に悪い。たぶん他の生き物を倒して喰らって生き延びて子孫を残すという、生き物の原初的欲求に近い部分だからだと思う。オスの本能だよ。決して無くなったり薄まったりしないで、死ぬまでこの獣めいた部分とつき合っていかなければならないんだろうな。だから、本吉の犯した過ちを、自分は潔白だという立ち位置で裁きたくないんだ」

「へー、正直じゃん菅谷」

 ちょっと見直した。

「じゃさ、カワイイ女の子2人を目の前にすると、やっぱりムラムラしてくる?」

「初級の算数もわからないのかお前は」

 ???

「まあいい。とにかく、どうしたものかな。まず盗撮は止めさせるべきだよな」

 私と小鹿野さんはうなずく。

「でも、カメラを回収して警察に渡したくない」

 うんうん、やはり2人ともうなずく。

「本吉は逮捕させたくないけど、このままではいけない。反省して責任はとって欲しい」

 そうだね、小鹿野さんの眼もそう言っている。2人ともやはりうなずく。

「わかった、では早く手を打とう。でないと、先に誰かがカメラを見つけて騒ぎが起きる可能性もある。そうなったら本吉は終わりだ」

「具体的にどうすんのさ?」

「そうだな、こういうのはどうだろう……」

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