第15話 なんでよ?


 モトキチか……。

 うーん……。

「状況を確認しよう。小鹿野がみつけたカメラは1カ所だけ?」

「気づいたのは5階に1つだけです」

「今もそこにあるのかな?」

「それは、見てないから分からないです」

「そうか、では今のところ物証はゼロだな」

「え? 菅谷が撮った監視カメラの画像は証拠にならないの?」思わず疑問点が口に出た。

「夜間に女子トイレに出入りしたというだけでは、隠しカメラとの関連は証明できないだろ。巡回と言われればそれまでだ」

「じゃさ、隠しカメラそのものを回収して、警察に渡せば?」

「それが一番いい。一番簡単だ。でも、やりたくない……」

「なんでよ?」

「本吉、いい先生だと思う。俺は好きだ。やったことは犯罪だが……正直俺は、本吉が逮捕されるのを見たくない」

 うん、確かにモトキチはいい先生だよ。まだ1カ月しか教わってないけどさ、偉そうにしないし、なんか、頼れるアニキって感じだし、でもそれとこれとは話が別だよ第一キモチワルイ!

「あの、ごめんなさい!」

 小鹿野さんがいきなり謝った。

「ごめんなさい。他の人が持ってない便利な道具があったら、他の人に気づかれずに誰かの秘密を見たくなる、その気持ち、私分かります! ごめんなさい!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る