第13話 私バカにされてる?

 居間に戻ると、ちゃぶ台の上は何事もなかったように落ち着いていた。私が積み上げたティッシュの山と、私が踏みつけたためにひっくり返った湯飲みがあったけど、今は跡形もなくキレイに片付けられ、新しいお茶が湯気を立てている。

 あーあ、迷惑かけてばかりだな、私。

 せめて片付けくらいすればよかった……。


 ちゃぶ台の向こうには、菅谷が背中を丸めて座っている。

 さっき私が菅谷に対して言ったセリフ、とった態度を思い出して、顔が赤くなってきたのが自分でもわかる。


「座って、三宅さん」小鹿野さんが座布団にてのひらを向けてすすめる。

 はい、ごめんなさい。


「お茶、どうぞ」小鹿野さんが湯飲みを差し出してくれる。

 はい、ごめんなさい。


「三宅、さっきは悪かった」菅谷が謝る。

 はい、ごめんなさい。

 あれ?


「小鹿野にもヒドイ事言って悪かった。謝る。この通りだ、申し訳ない」

 菅谷はちゃぶ台に両手をついて頭を下げた。

「菅谷くんいいのよ、気にしないで」

 小鹿野さんは、ほっそりとしたてのひらを顔の前で横に振る。

 いいなあ、カワイイと動作の一つ一つが絵になるもんなあ。

「それより、お茶、冷めないうちにどうぞ」

 はい、いただきます。

 私は両手で湯飲みを掴んでフーフーして一口飲んだ。

 うーん、今のカワイイ動作だったかな? わかんないや。

 でも一口飲んだら、喉が渇いていることに身体が気づいたみたいで、残りを一気にゴクゴク飲んでしまった。

 ふう、やっと気持ちが落ち着いた。

 落ち着いてきたら、私もラクに謝罪の言葉が出てきた。

「菅谷、さっきはゴメンね。ちょっと言い過ぎた」

 小鹿野さんと菅谷がそろってこっちを見る。私が謝るのって、そんなに変?

「いやー、ホント、ヒドイ事言っちゃったよね。ゴメンね。男の子は仕方ないんだよね。さっき見たのネタにしても怒らないから」

 菅谷が盛大にお茶をむせている。あーありゃ鼻に入ったね。涙流して咳き込んでる。小鹿野さんがティッシュを箱ごと持って菅谷のそばに寄る。

 ハハハ……私、またやっちゃった?


 鼻かんで涙ふいてメガネもふいてかけなおして、ようやく菅谷が口を開いた。

「バカな話はこれくらいにして、小鹿野の能力だが」

「ひょっとして、私バカにされてる?」

「サイコメトリーと呼ばれてるものだな。さっき調べてみたんだが、マンガの話だと思っていたがどうやら実在するらしい。」

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