2章

第44話 相談を受けた

 学園祭のうわついた空気が名残惜なごりおしくも幕を閉じ、学内は通常の2学期の流れが始まって、落ち着きを取り戻してきた。また学力試験とか中間試験とかが来るんだよね。

 そんなある日の夕方、アパートの102号室で小鹿野さんと2人だけの時、小鹿野さんから相談を受けた。


 学校で、小鹿野さんに久しぶりに「トランプ占い」の相談がきたらしい。いつの間に占いの依頼が来たのか、いつ占いをしたのか、近くにいた私も全然気付かなかった。

 相談の内容は、ちょっと深刻なものらしい。でも小鹿野さんが私に相談した理由は「とにかく、全然『読めない』」からみたい。


 相談の内容は以下の通り。

 ツイッターに匿名で作ったアカウント、通称「裏アカ」がバレて、脅迫めいたメッセージが届くようになったんだと。

「裏アカ」は大量のフォロワーからチヤホヤされるから、つい調子に乗って写真いっぱいアップしたと。

 顔とか特定できる部分は、ぼかしたりカットしたりしたから、身元が分かることは無いと思ってた。

 ところが、フォロワーの1人がダイレクトメッセージで、「身元が分かったぞ」と通告してきた。

 最初はハッタリだと思って、その人物のアカウントをブロックした。更に念のため自分のアカウントにロックをかけ、承認した者以外入れないようにした。

 それでも別アカウントを作って承認させ、その後また身元が分かる内容のメッセージを送ってくるようになったと。しかも家族以外分からないようなプライベートな部分まで触れてきて、さすがに怖くなってきたし、このままにしておくわけにもいかないし、どうするべきだろうか、


「ネットの向こうは、さすがに読めないから、どうしようかと思って」

 小鹿野さんの特殊能力はサイコメトリーと呼ばれるものだ。この能力もいろいろ個体差があるらしく、小鹿野さんはあくまで物理的接触があった者の心理的内面が読めるに留まる。しかも48時間を過ぎると「ニオイが薄まる」ので判別が難しくなるらしい。

 トランプ占いに偽装したサイコメトリーは、トランプを触った者の内面を読み取り、さらにそこから派生して、その人が抱える問題に関係する人たちの内面も別途読み取ることで適切な解答を導き出すわけだが、今回のように相手がネットの向こうの正体不明な人物となるとお手上げである。

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