第43話 気楽なものだ

 新学期早々、学園祭が始まる。

 まだ暑い最中に、みんな文字通り汗まみれになって準備に追われるわけだ。もっと涼しくなってからやればいいのにね。

 とはいえ、部活に入っていない私らは気楽なものだ。

 うちのクラスも、特に何かやるわけでもないし。

 あ、さすがにあの事件後じゃ何かやる雰囲気じゃなかったかも!


 まあ世の中には、生徒や先生の不祥事で学園祭そのものが中止になる学校もあるので、無事に学園祭が執り行われることだけでも喜ばしいことである。


 竹中さんは、彼氏が剣道部のエキシビジョンに出るとかでウキウキしてる。さそわれてるから小鹿野さんと一緒に見学に行こう。

 そういえば、この辺りの高校はみんな9月上旬に学園祭なんだけど、微妙に開催日がズレていたりする。つまり他の高校の学園祭にも行けるってことなんだ。

 学園祭は楽しみたいけど、学内有名人としての視線に疲れている私たちにとって、他校の学園祭というのは魅力的だった。うん、我ながらいい思いつきだ。

 さっそく小鹿野さんに声をかけてみた。ものすごい乗り気でOKしてくれた。ついでだからもう1人の学内有名人にも声をかける。

「なんで? どこの学園祭だって似たようなものだろ?」

 思っていた通りの返事がかえってきた。

「いや、菅谷の好きそうなイベントもあるからさ」

「どんな?」

「男子水泳部員によるシンクロ……」

 パズル雑誌に顔を戻して無視を決め込みやがった。いいもんね、2人だけで行くから。

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