第42話 にゃはは

 式が終わって教室に戻る中、竹中さんを探して捕まえる。

「ねえ、校長の話まともに聞いてなくて分からなかったんだけど、休み中に何かあったの?」

 竹中さんは急に警戒した表情で周囲を見て、私の制服の袖を引っ張って、移動する生徒の流れから外に脱出した。

「そか、あんたら当事者だから、他の事件しらないか」

 竹中さんが話してくれた内容は、茶髪のヨシオさんから以前聞いたのと同じだった。だが、至近弾を受けた人物の体験談として、かなり具体的なものであった。

 竹中さんが入学して一緒に「つるんでいた」ギャル系の生徒たち、そのうちの数人がこの夏に補導され、停学処分にもなったそうだ。理由は薬物の使用らしい。

 警察の事情聴取は竹中さんのところにも来たそうだが「あんたらのおかげでさ、クスリが広まる前から、アタシはデートに忙しかったからね。いやホント助かったよ」だ、そうである。

 他にも暴走バイクと接触して試合出場できなくなった野球部生徒とか、生徒じゃないけどひったくりの被害がこの近くで頻繁に起きてるとか、結構騒ぎになってるみたい。

「ニュースでも取り上げられてたよ。テレビとか見てないの?」

「にゃはは、ゲームで忙しかったんで、全然……」

 実際、スマホのゲームが面白くて、それどころじゃなかった。小鹿野さんの寝息を聞きながら、朝までゲームして、そのまま小鹿野さんの起床と交代でダウンなんて日もあったくらいで。

 ま、とにかく、今は私らの周囲は平和だ。平和でなにより!

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