第2部 小鹿野蛍子はいじらしい
1章
第34話 まだ全然……
静かな夏の日の昼下がり。
クーラーが完璧に効いたフローリングの一室に私はいる。
本来なら快適極まりない環境のはずだった。
だが、なぜが私は体の不調を感じ、頭の痛みに耐えながらコメカミに手を当てていた。
なぜだろう。新築特有のニオイが漂う室内で、私は考えた。
ひょっとしたら、このニオイが体調不良の原因ではないだろうか。
おそらくこのニオイ、たぶん壁紙や塗装などの溶剤の臭気だろう。
使われている木材の防腐処理の薬剤のニオイもあるかもしれない。
さっきから続くこのバイオリズムの低下に伴う頭の痛み、これはひょっとして、シックハウス症候群……
「お前なあ、昨日も一昨日も、いや先週からずっとこの部屋で飲み食いして借りてきたDVD観たり持ち込んだゲームしたりマンガ読んだりで連日泊まって大騒ぎしてたくせに、宿題はじめた途端に都合よく症状が出るわけないだろ! 何がシックハウス症候群だ、ふざけるな! 第一、小鹿野に失礼だぞ」
「あ、ゴメン小鹿野さん。そんなつもりじゃなかったんだけど……」
「いいのよ気にしてないから。で、三宅さん、宿題どこまで進んだ?」
「まだ全然……」
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