第15話 いざ大浦城へ
館の外に出ると既にみんな待っていた 。
「 おー ! 直也殿 。 やっと来たか 。 わしはもう来ないかとカツェ殿と賭けをしてしまったではないか 。 」
そう言う李広はカツェとニヤニヤしながらこちらを見ている 。 カツェはカツェで勝てたからなのか嬉しそうだ 。
「 やっぱりね ! 来ると思ってたよ 。 あたしも李広も来るに賭けるって事で結局こいつで決めたんだけどな 。 」
カツェはポケットからコインを取り出し、親指で弾いて取って見せる 。 なるほど、コイントスだな 。
そこに木の幹に座っていたリリヤが降りてきて、
「 直也、遅かったね 。 お姉ちゃんとミサが迎えに行こうとコソコソしてたよ 。 」
リリヤは自分の荷物の紐を締めながら言った 。 リリヤはやっぱりしっかりしてるな 。
俺はリリヤの忠告を素直に聞いて、怪しい二人に近づく前にケルベロスを探すことにした 。 ...探すといってもすぐに見つかったんだけどな 。 散歩しそうなところを探せばいいだけだから 。
ケルベロスは門の前でお座りしていた 。 首には可愛らしい朱色の首輪と紐 。 完璧にわんちゃんになっている 。
「 ...ケルベロス ! お前ついに本当の犬になったのか ? 」
からかいがてら聞いてみた 。 するとケルベロスはお座りしたまま胸を張って
「 主が付けてくれたのだ ! 決して犬になったわけではないぞ ! 」
いや、多分雪乃はペットとして首輪を付けたんだと思うぞ 。 ケルベロスは妙に張り切っている 。 首輪ってそんなに嬉しいものなのか ?
「 まぁ、ミサと雪乃がどこかでコソコソしてるらしいから探しにいくぞ 。 」
ケルベロスの鼻があれば一発だろう 。
「 ...探す ? お前、本物のバカなのか ? 」
ケルベロスは半分固まって聞いてきた 。 俺がバカ ? なぜだ ?
俺はケルベロスの言った意味をバカとしか受けとらなかったので、ケルベロスの紐を取って歩こうとした 。
その時後ろから急に掴まれた 。
「 直也様 ! ここにおられましたか ! ささ、私と一緒に馬に乗りましょう 。 」
「 先輩、私とですよね ? 」
...ケルベロス、なるほど 。 そう言う意味か 。 どうして言ってくれなかったんだ ? おこるぞ ?
俺はミサと雪乃に連行される形でまた館の外の集合地に運ばれてしまった 。 もちろん、ケルベロスも一緒に 。 尻尾が千切れんばかりにフリフリだったのは彼の名誉の為に誰にも言わないでおこう 。
「 お姉ちゃん、ミサ 。 馬に乗るつもりかもしれないけど 。 歩きだよ ? 」
明るい二人にリリヤは冷静に言った 。 あからさまに二人のテンションが下がったのがわかる 。 俺は逆だがな 。 ...もう一匹、楽しそうな奴がいたな 。 さすがわんちゃんだ 。
「 では行くとするか ! 留守の間、蠣崎は慶広に任せておるから安心いたせ 。 船はわしが手配しておる 。 」
張り切って李広は歩き始めた 。 とても60近い人とは思えない 。 この時代の人は50年じゃなかったか ? 敦盛にもあるように 。
今回の旅の資金は砂金 。 李広が言うにはこの人数だと1年は軽くもつらしい 。 もちろん出してくれるのは李広だ 。 さすが大名、羽振りがいいね 。
俺達は街を抜けて港に向かった 。 港はすぐそこだし、街もそこまで大きくない 。 港に着くまで左右ではミサと雪乃がニコニコ俺の腕を掴んでいた 。 二人は競うように俺の腕を抱き寄せてる 。
...その...当たってるんですけど 。
カツェは李広と何か話してるし、ケルベロスはあちこち匂いを嗅いでいた 。 さすが犬 。
港とは言ったけど、そこまで大きなものではない 。 未来の漁船が4隻泊まれるかできないか程の小さな港 。 小さな船の横でおじいちゃんが魚を仕分けている 。
李広が奥にとまっているさっきの船の10倍は甲板だけであろうかという大きな船を指差して、
「 よしっ ! では、これより船で大浦城の港まで行く 。 3時間程で着くから各々、体を休めておくように ! 」
とどこで買ったのかすでに酒を持ちながら李広は言った 。 とりあえず船では休みたいな 。
俺の心配は無用だったのかミサも雪乃も船の中では絡んでこなかった 。 二人とも船に興味津々 。 乗ったことないのだろうか ?
ケルベロスというと四六時中ふらふらしてたけど 。 ケルベロスなんて海に入ること自体初めてなのかもしれない 。 ハーデスを助けたらポセイドンに頼んでケルベロスを海に叩き落としてもらおうかな ?
リリヤは雪乃にべったりだし、カツェと李広は酒を飲んでいる 。
だから俺も部屋で寝ることにした... 。
のだが、船が揺れてまくってなかなか寝ることができない 。
トントントンっ
扉を叩く音が聞こえる 。
一体誰だろ ? ミサか ?
俺は扉をゆっくりあけた 。そこには戦国時代の旅装束に身をまとったリリヤが立っていた 。
「 直也、僕は君に言っておかなければなあないことがある 。 」
神妙な顔で話しかけてきた 。
「 君はミサ以外の女性に近づいてはいけない 。 」
全く意味のわからないことを恐い顔で言ってくる奴だ 。 俺がミサ以外の女に近づいてはいけない ? 知るか 。
「 君はミサと結ばれなければならない 。 そうでないならこの世界は終わってしまう 。 予言には続きがあるんだ 。 」
予言 ? だから俺はそんなもの知らんと... 。
その時、リリヤの力が急に抜けた 。 そして、ふらりよろめき倒れそうになる 。
「...っ ! 」
俺は慌てて支えに入った 。
「 ...忘れちゃ、ダメだよ... 。 」
そう言ってリリヤは気を失った 。
仕方なく俺の部屋でリリヤを寝かせ、俺は床に寝転がった 。
港についたのか雪乃が俺を起こしにきた 。
「 あれ ? なんでリリヤがここにいるの ? 」
入って真っ先に雪乃がきいた 。 そしてリリヤを起こしにかかった 。
「 ...あれ ? お姉ちゃん、僕なんでここに ? 」
なんでってお前が来たんだろ !
「 先輩...これは一体 ? 」
やばい、やばい殺される 。
「 い、いやリリヤが倒れたから俺は助けただけで... 。 」
「 さすが先輩っ ! 優しいですね ! 」
雪乃はどうやら切り抜けたようだ 。
それにしてもリリヤ、どうしたんだ ?
「 ...直也、ありがと 。僕、たまに変なこと言ったり、いきなり気を失ったりするんだ 。 」
という事はさっきの事はリリヤは全く覚えていないのか ?
ミサ以外の女に近づいてはいけないってのはなんなんだ ?
疑問に包まれたまま、俺は旅団と共に船を降りた...
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