第11話 アンドロイドは襲撃者を捕まえる

「ほらぁ、やっぱりヤバい仕事だったじゃなぁい。ナッチの勘ってほんっと、当てになんないねぇ」


 ソファに座ったピンクヘアの女性が情けなさそうに言う。カメラでは暗くてわからなかったが、ミオと同じシュガーピンクのふわふわ頭をしている。胸元を強調する服装。背が高くなく、後ろ姿であれば見間違えたかもしれない。


「いまさら言ってんじゃねーよ。あん時はお前も賛成したじゃねえか。なあ、あんた、一体何なんだ?」


 武器を取り上げられた男は床にあぐらをかいて不機嫌そうだ。整髪剤で整えたのだろう、ギラギラ光る髪の毛の匂いが船内に染み付きやしないかと心配になる。

 ミオが嫌う匂いだ。

 貨物室の客室に通したのは正解だった。心持ち空調を強めておく。


「先ほども自己紹介しましたが、もう一度繰り返したほうがいいですか?」

「いらねーよ、そんな中身のない自己紹介。それに、いーかげんこれ、取ってくれねえか?」


 両手首に光る腕輪をこちらに突き出してくる。二人を招き入れた歳、拘束に使った電子手錠だ。


「無理です。残念ながらこの鍵はここにはありません」

「おい、何てもん着けんだよっ。トイレも風呂も入れねえじゃねえか」

「両手が離れなくなったわけではありませんから、問題はないでしょう。手前にひねれば外れます」


 男が言われたようにひねると、電子手錠は左右に分かれた。


「お、ほんとだ」

「ちなみに、その腕輪を無理に外そうとするといろいろ仕掛けが出ますから、お勧めできません」

「いろいろって?」

「爆発したり電流が走ったり、しびれたり眠ったり、それから毒が」


 本来は移送する動物が暴れないように両手足を拘束するためのものだ。ロックさえしてしまえば外れることはまずない。こういう用途に使うことになるとは予想もしていなかったが。


「ストップ。もういい、わかった。おとなしくするよ」


 あきらめて、男は頭の後ろで腕を組んだ。


「ほんと、何なんだ、あんた。とらえどころがないって言うかなんつーか」

「尋問しているのは私です。あなた方の会話から、今回の襲撃は誰かの依頼であることは推量できます。こういう仕事が日常的にあることも。どういう仕組みなのか、教えてもらえますか?」

「教えるわけないだろ? 曲がりなりにもプロだからな」


 顔を背けた男と対象的に、女は身を乗り出してきた。


「いーんじゃないかなぁ。ナッチ。隠すほどのことじゃないでしょぉ? みーんな知ってることだしぃ。あ、あたしはスゥって呼んでねぇ。あたしたちはぁ、襲撃屋なのぉ」

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