【完全新作 中編 】

「久しぶり、元気だった?」


数ヶ月振りに会う瑞希は、少し髪が伸び、メガネをしていて、ああ……やっぱり私はこの人が大好きなんだと、確認せざるを得なかった。



照れを誤魔化す様に笑いながら私に近づいてくる瑞希。

私の視界はぶれる。


会いたくて、会いたくて夢にまでみた瑞希が私の前に立った。



「おいおい、会って早々泣くなよ」


瑞希の匂いが私を包み込む。



「オレも会いたかったよ。すみれ」


瑞希はただ泣く私を笑いながら抱き締めてくれた。







「相変わらずだな」


「そんな事ないよ?」


「泣くのはベッドの中だけにしろよ」


「ちょ、ちょっとナニ言うのよ」



空港で瑞希をピックアップし、今はレンタカーを走らせている……主に瑞希がね。



「今夜からホーエンツォレルン城に泊まって、明日は」


「ストップ!!」


「ん、何?」


「オレ、今回の予定なんにも分かんないんだけど」


「だから、今説明を……」


「おまえ口ぶりがガイドだぞ」


「板についてる。って褒めてくれてるの?」


「はぁ……まぁ、いいや。続きどーぞ?」


「う、うん。今日から……」



瑞希は終始笑顔で私の話を聞いていた。

今日から3日間、ホーエンツォレルン城に滞在し、見学する事になっている。

それから、エルツ城へ移動して2日間を過ごし、最後にノイシュヴァンシュタイン城を案内する。



ガイド部長の伝で、エルツ城にも滞在出来る事になったのは本当に嬉しい限り。



「オレはすみれの見学に付き合うのが、今回の旅行なんだな」


「私もまだ行った事がなかったから、嬉しいよ」


「いや、そう言う意味じゃないんだけど……」



瑞希は、まぁいっか。と笑っていた。

私は、新たな古城に会える事で頭が一杯。


そして、大好きな瑞希に会えた事で、テンションが驚く程、高くなっていた。



長いドライブも瑞希と話をしていると、あっと言う間だった。




「おまえ……どんなガイドしてんだ?」


無事に着いた私達は、リアルメイド服を着たメイドさんに案内され、客室へと通された。


お城の一部屋。

でも、今は昔とは違い観光をメインとされ、城に泊まれるのも観光ならでは。


だから、部屋も普通のホテルを想像していたんだ。



「ガイド部長が手配してくれたんだけど……」



部屋の中央には、サイズが合っていない、でっかいシャンデリアが神々しく光を放っていた。


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