第3話


目覚めた時、周りには人なんて居なかった。

洸夜は、あの光に全員が包まれた筈なんだがと考えていた。

その時に声が聞こえた。


『ようこそ、上代 洸夜様』

「・・・誰だ、お前」

『私はここの案内人でございます。貴方様は此処で、特別な力を手に入れる事ができます』

「・・・いくつ貰えるんだ?」

『四つでございます』

「質問良いか?」

『どうぞ』

「お前、雪奈だろ」

『・・・何故、そんな事をおしゃられたのか私には解りません』

「良いから出てこい。俺が向かっても良いが?」

『ですから訳が・・・ってちょっと話を聞いて下さい!』


洸夜は、近くにあった柱を触り、其れから数歩歩くと、一人の女性がいた。


「ほら、雪奈じゃん」

「え〜私がちゃんと説明しようとしているのに、なんで無視したのか教えて貰えない?」

「姿を明かそうとしない奴の話なんて聞くか?」

「忘れてた。洸夜がこんな性格だって事を忘れてた」


少し項垂れる雪奈と呼ばれた女性。

この女性こそが天野 雪奈である。

そんな彼女に洸夜は、心配そうな顔でこう言った。


「気分でも悪いのか?」

「ちょっと、忘れてた事を思い出しただけ、だから心配しないで」

「ん?そうか、それなら良いか・・・」


少しの間洸夜は、この神殿を動き回る事にした様で雪奈から離れていった。

数分後、ちゃんと話が再開された。


「説明を少し省くと、洸夜は異世界に呼ばれた。しかし、ここに私が呼び出したここは解る?」

「ああ、そこは解ってる。だが、ここに俺だけが呼ばれた?」

「それは最初に言ったでしょ?貴方には四つの力を手に入れる事ができるって」

「何故、俺なんだ?」

「私の事を助けてくれたから」

「助けた?何処でだ?」

「トラックに、轢かれそうになった私を助けてくれたから」

「助けたのは猫だけの筈・・・ってまさか」

「そう、その猫が私だったのよ。そのお礼に貴方の家に向かったけど」

「俺は何も望まなかったっと」

「はい・・・お礼を渡せなかったら私は帰れませんでした」

「しかし、人間界が好きになってしまって帰りたくなくなったと」

「・・・はい」


暫しの沈黙そしてその沈黙を破ったのは洸夜だった。


「お前、口調が大分と変わったな」

「私は元々、こういう口調でしたよ?でも、貴方がもっとフランクで良いって言われてたから、私の先輩が、使っていた言葉遣いをしていただけです」

「俺の所為か」

「はい、貴方の所為です」

「「・・・・・・プッ、アハハハハ」」

「笑わせるなよ」

「そちらこそ」


人きしり笑った所で雪奈が、少し真面目な顔に戻った。


「では、本題に入らせて貰います」

「・・・今日の昼、何にしようか?」

「そう言ってる場合じゃないでしょう!?ちゃんとして下さい」

「ちゃんとしてるぞ?お前にキスが出来るくらい」

「ふざけてますよね!?でもキスは嬉しいかも・・・」

「おい、ちょっと待て」


少し照れる雪奈と、今聞いた言葉にイヤな予感がする洸夜。

そして、しばらく経って洸夜が仕切り直した。


「ちゃんとしようぜ雪奈」

「あなたが、話を乱したんでしょ!?」

「まあまあ、落ち着けよ禿げるぞ」

「女性に、そんな言葉を使わないで下さい」


もうしばらくお待ち下さい。


「では、何が願いですか?」

「と言われても、何が欲しいとか決まってない」

「あれだけ時間があったのに?」

「だって、喋りまくってたからな」

「まぁ良いとしましょう。じゃあサンプルをご用意しま「あ、良い事を思いついた」・・・マイペースですね」

「それが、俺だからなで、良いことっていうのは一つ目の願いは、能力付きのクジをくれ」

「大量にありますが?」


その中の一つって、結構変な能力が付きそうですねと考えながら持って来た。


「何、勘違いしてるかわからないが三回引くぞ」

「その中の一つですね」

「やっぱり勘違いしてたか。これは、お願いだぞ?その三つとも俺の能力にする」

「まぁ、それでも良いんですけど、なんなら五つにします?」

「じゃあ、五回引くとするか」


この時、雪奈は忘れていた。結構、強い引きを持つ洸夜だったと。

洸夜は、街のくじ引きで特賞を当てた事があった。そして、祭りでゲーム機を当てた事があった。

そのことを忘れていた。

そして、その事を思い出した時、嫌な予感がした。


「ん?何だこれ」

「・・・ちょっと貸して下さい」

「良いぞ、ホラ」


雪奈が見たクジは、あり得ないものが書かれていた。

そのクジには、『職業無限』『種族無限』『完全解析』『吸収』『解体』と書かれていた。


「これは・・・」

「如何したんだ?」

「いえ、何でも無いですよ。気にしないで下さい」

「説明頼む」

「・・・大変な事になりました」

「いや、如何したんだ?気が動転しているが?」

「説明ですね解りました。まず、完全解析はその名の通り、全てのものを解析できます。次に、吸収は物を吸収し、その能力を得る事ができます。解体その名の通り、倒した敵の素材を綺麗に残せます。これで終わりですね」


へぇ〜凄いなと思いながら、使い道を考える洸夜。しかし、まだ説明を受けていない物があると目で訴えかけた。


「では、向こうに送りますね」

「ちょっと待て、まだ聞いてないこともあるし、まだ願いも言ってないぞ」

「これだけは、私の口からも言いたくありません。しかし、聞きたいのであれば、押し倒すくらいの勇気を貰います」

「その勇気いらねぇ。額にキスを入れるってのは?」

「だ、だめです」

「それじゃあ、お願い二つ目言うぞ」

「それは、卑怯です!」

「まだ何も言ってねぇよ。二つ目、お前が異世界での俺のアドバイザー?的な者になれ。それなら教えてくれるか?」

「本当に卑怯です・・・なら、言わせて貰います。『職業無限』と『種族無限』の話ですね」

「そうだ、名の通りの意味だと思うが、それじゃあ神みたいな存在のお前が驚いた理由が説明がつかない」


そんな事を言い次の雪奈の言葉を待つ。

そして、重々しく雪奈は話した。


「この能力達は、混ざってはいけない能力なんです」

「混ざってはいけない?如何いうことだ」

「まず、私は神さまです。神様は、何にでもなれます」

「やっぱり神だったのか。で?」

「神様は何にでもなれると言っても、その他種族の力を自分自身に宿すことなんて出来ません」

「つまり、ゲームのアカウントみたいなもんか?」

「はい、ですがこの能力達は、それを可能にしてしまいます。この能力の事を私達は『無類』と呼んでいます」

「『無類』確か類が無い、と言う意味だったと思うが?」

「その通りです。しかし、類が無いと言う事は分別するものが無いと言うことです」

「化け物ってことか?」

「いいえ、それは名称です。しかし、化け物と言う種族が有るとします。でも貴方は何ですか?」

「人間か化け物ってことか?解らん」

「因みに、向こうの世界では、吸血鬼とかも存在します」

「吸血鬼・・・って事はファンタジーの世界って事か?」

「はい、ファンタジーです」

「そうか・・・」

「如何したんですか?玩具を見つけた子供の様な顔をして」

「何だか楽しそうだよな」


洸夜は無類うんぬんより、ファンタジーな世界に興味が出た。

雪奈は洸夜の切り替えの早さがさすがと思った。


「取り敢えず、三つ目の願いだが調合したり作ったりする時に頭の中に書庫を作って欲しいんだ」

「?取り敢えず、危ないので止めて下さい」

「ああ、そうかなら追加で完全記憶能力をくれ」

「オマケとしてですね。そろそろ彼方に送りたいと思います。では良い旅を」


そして再び洸夜の足元か光り輝く。その時に、洸夜は雪奈に向かって、呟いた。


「『無類』のこと何か解らないんだよな?」

「?はっきり言えば解りません」

「なら、この言葉を入れとけ」


そして眩しい光が神殿に灯す。


「『無類』は、同種族の仲間が居なくても、他種族の仲間が出来る。そして『無類』とは無限の可能性を秘めていると」


そのことばを最後に洸夜は消えていった。

そして雪奈は最後に呟いた。

『座標がズレてる』と

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