カナホシより銀河鉄道にて
うすしお
プロローグ
僕の名前は横山弓弦。身長170cm、体重60kgといたって平凡。更に言えば彼女なし、オタク、おまけに童貞。どこぞのラーメン屋みたいに三拍子の揃った現在高校3年生だ。ちなみに自分ではオタクだと自負しているが、世間一般的にはまだオタクと呼ばれるほどオタクではないのかもしれない。理由は、アニメにハマったのがつい最近のことで、それまでの僕はオタクを散々馬鹿にし、蔑んできたような輩だから。今思うとあの時の自分をぶん殴りたい。
アニメにハマったきっかけは昔からの幼馴染の影響だ。そいつの名前は竹田風太。幼稚園から今現在通っている高校までずっと一緒だ。長身ですらっとした体型。幼馴染の立場としてこういう事を言うのは気持ち悪いというか気恥ずかしくあるが、イケメンだ。しかしその外見からは想像がつかないほどにオタク。少なくとも僕が今までで出会った人の中ではダントツに。そんな風太のアニメ好きに影響された結果、今の僕がいる。半年前の僕には到底想像もできないだろうし、半年前の僕が今の僕を見れば間違いなく理解に苦しむだろう。「何やってんだよ!!目を覚ませ!!」と言いながら殴りかかってくるかもしれないな。上等だ、かかってきやがれ。
そしてもう一人、風太と同じく幼稚園の時から今まで一緒にいる幼馴染がいる。名前は花村香奈。小柄な彼女は、黒髪ショートカットがよく似合う。これまた言いづらいが、結構可愛いのだ。まぁ存在が近すぎて恋愛対象にはならないのだけど。彼女は、自称オタクの僕と正真正銘のオタクである風太を馬鹿にはするが、蔑んだりはしない。謙虚、というのとは少しちがう気がするが、限りなくそれに近い。彼女は決して人を見下したりしない。かと言って自分のことを卑下することもない。「人類みな平等」を信じてやまないようなそんな人だ。ちなみに香奈のLINEの一言やTwitterのプロフィールの欄には、「人類みな平等」と書き込まれている。ここまでくるともはや尊敬に値する。
僕らが生まれ育った所はド田舎。それも超がつくほどに。コンビニが辛うじて1軒、あとは近所のおばあちゃんがやっている小さな商店があるくらい。一応電車は通っているが、2時間に一本しかやってこない。もちろん、小中学校の全校生徒は10人もいない。ただ空気と自然の景色がとてもきれいなのは長所というか、自慢である。学校は小中と一緒の校舎を使っていて、高校はない。そのため、僕は都会の高校に独り暮らしをしながら通っている。風太と香奈も同じく独り暮らし。みんな一緒の高校だ。都会はものすごく便利だ。コンビニなんていくらでもあるし、電車は数分単位で来るし、ばったり有名人に遭遇しちゃった~なんてことも珍しくない。しかし、田舎のように新鮮な空気を吸えるところは少ない。田舎出身ということもあって、空気の汚さには敏感だ。そう考えると、田舎も都会も、良い点と悪い点での釣り合は取れている気がする。田舎と都会の違いなんてのはきっと微々たるものなんだろう、とか思ってしまうのはきっと僕が生粋の田舎者だからだ。
これから話すのは、そんなド田舎で僕と風太と香奈が体験した、ちょっと不思議な一夏の物語だ。
カナホシより銀河鉄道にて うすしお @haruhisa_usushio
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