雨男の異世界譚

@sabaibarugem

第1話

 ガタゴトと揺れる。


 轟轟と降る雨が馬車の窓を叩き、舗装もされていない荒れた道を、ゆっくりと走る。まだ昼間だというのに、分厚い雲により陽の光は遮られ、まるで夜のようだ。


 乗り心地は最悪の一言。俺に言わせれば、どうして周囲の人間は、この最悪な乗り心地に何も言わないのか不思議なくらいだ。正直、俺を殺すつもりなのかと言いたい。


 いや、酔ってるわけじゃないんだよ。


 だって、俺まだ赤ん坊だからね。赤ん坊は、まだ三半規管がしっかりしてなくて、車酔いなどとは無縁の存在なのだ。そういう意味では、まだ赤ん坊でよかったと言える。


 だが、この振動はいただけない。体のあちこちを車体にぶつけて痛いのだ。赤ん坊らしからぬ鋼の精神で何とか泣くのだけは我慢しているけど、正直それも限界に近い。俺がいくら我慢しようとしても、本能には逆らえない。


 幼いうちは神経が過敏だから、大人にとっては少しの刺激でも、俺にとっては物凄い痛みに感じるのである。


 よって、泣く。もう我慢出来ない。


「ウッ・・・!うえええええええ・・・!」


「あーごめんねアイズ。もう少しで屋敷につくから我慢してねー。」


 この新しい生での母親が必死に俺をあやそうとしているが、すまないママン。我慢し続けた反動か、涙が止まらないんだ。ってか、こうしてる間にも体をアチコチにぶつけて痛みが加速してるし。


 ・・・あ、ここまでの話で分かってるとは思うが、一応自己紹介しておこうか。


 俺の名前はアイズ・アークレイン。フェイクルス王国の貴族、アークレイン子爵の長男にして、異世界からの転生者。


 ーーーところで、この世界に転生してから一年。


 一度も青空を見ていないんだけど、どういうことなの?



 


















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