第4話 はじめましての前

 僕は大急ぎで家に戻った。

あのどこの神よりも優しい気がするおじいさんから貰った魔導書を読むために。

家につき、

部屋に入って、

明かりを灯し、

椅子に座って、

紙袋を取り出し、

いざ読まん。

 

 紙袋をのぞく。

そこには淡い光を発する一冊の書物。

これが本物の魔導書アルカナか・・・。ゴクリと唾をのむ。


 手を伸ばす、本に触れる。

両手で握るように持ち、まじまじと見る。

表紙には何か書いてある。タイトルだろうか?文字が読めない。



そして本を開く。


開いた瞬間、僕の意識は本の中に入っていく。


そこは真っ白な空間だった。

あるのは自分の身。そして’’壺’’があった。その壺は真っ黒で、炎のような模様がついていた。

僕はその壺を知っていたような気がした。

正確に言えば、見たことはないが聞かされていた。


あれは・・・まるで・・・祖父が言っていた壺ではないか?


僕はその壺に触れようとした。彼我の距離は数メートル、足を踏み出して行く。


しかし、あと少しだというところで



 周囲はいきなり暗闇で覆われた。

目の前に現れたのは、ぼんやりと赤く光る魔法陣。


「なんなんだ・・・これは、一体?」


そう声を発した後、声が聞こえてくるのに気づく。


「汝、何故我ラヲ欲スルカ 真意ヲ述ベヨ」


まるで、機械音声のような感情がない声。僕は少し怖くなった。でも心の中はすごくドキドキしていて、この状況を楽しんでいる。

そのためだろうか、僕はこの問いに対して自分の思ったことを素直に述べていた。


「面白そうだから」

「オモシロイ? 我ラヲ有スル者ドモ皆厄多シ。汝、覚悟ハ有シテイルカ?」

「もちろんだよ。僕は面白ければそれでいい人間なんだ」

「・・・・・・良シトシヨウ」


 僕の周りからは音が消えた。周囲は暗闇のまま。

そして、目の前にある赤い魔法陣は、明るさを増してゆく。


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