第15話 お嬢様猫を預かる
元夫の上司が1ヶ月日本に帰国するということで、菜穂は飼い猫を預かることになった。
菜穂は猫が好きだったから、とても嬉しかった。実家に9年も猫が通ってきてて、飼い猫の世話には慣れていたし。冬には倉庫に段ボールを用意して寝かせていた。キャットフードも親が買ってきていたし、父親がいない日は、うちのこたつに入って寝ていた。
しかし、その預り猫はかなりのくせ者だったのだ。
まず、普段は飼い主がいないからか、その猫は家の中を自由気ままに歩いていたらしい。だけど私が監視していたから、相当ジャマでストレスがたまっていたらしいのだ。シャーッ!と威嚇して怒ってくる怖くて大きな8キロのアフリカ猫。
でも、菜穂が監視していたのにも理由はあった。大屋さんも猫を飼っていたから、猫を預かることに対して、快く承知してくれたかに見えたけれど、まず、部屋にいれるのを嫌がっていた。
理由のひとつは、大家の孫が猫アレルギーだということだった。将来的には外国人に家を貸さずに、孫に家をあげようと思っている部分もあったみたいで、「孫のアレルギーがひどくなるから、廊下には入れても良いけど、部屋の中には入れるな」とお達しがあったのだ。さらに大家の猫とケンカしないかも心配していた。
その猫は本当にくせ者だった。野性度の強い気性の荒い猫で、人間でいうと、高機能自閉症の障害でもあったのではないだろうか。
大屋さんに「シャーッ!!」と威嚇して機嫌を損ねる。
しかも大変なことに、立派な家具でつめとぎをしようとするのだ!それを阻止するために、イスにタオルをかけたり、最終的にはイスに猫が触れないように、別の部屋に鍵をかけて閉まったりした。つめとぎができなくなってまた「シャーッ!!」と怒る。
おトイレのしつけはされていたから、もらすことは少なかったけど、食べ物を何回もゲーゲーはいた。他人の家がストレスだったのかな。
1か月後にやっと慣れた頃、飼い主が迎えに来たら、その猫はなんと飼い主さんのことを忘れていた!
「ニャーニャー(どこに連れていくのー!)」と不安そうに連れていかれた。あなたの家に帰るんだってば。
猫のせいで菜穂の方が問題のある人扱いされる。障害を持つ子供の親の大変さを少し経験したのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます