第10話 初めてのメイド
日本にいたらそうそう経験できない経験をした。メイドを使うという経験だ。
そこの国では、富裕層は貧困層に仕事を与えるのが普通で、大家さん一家もメイドを雇っていた。
私たちの部屋も借り物で、日本の家と違って水を使って大理石の床を磨くので、全部自分で掃除するのが大変だったから、メイドを週に1回入れることになった。
正直外国であまりやることがない私は、それが結構苦痛だった。
掃除の時間は一応決まっているけど時間通りに来ないことも多くて、終わる時間もバラバラだった。
この国の太陽の日差しは強くて、夏場は洗濯物が2時間で乾く。洗濯くらい自分でやりたかったが、仕事を取られる感じがあった。
それからものをいろんなところに移動されてしまって、日本から持ってきたものが行方不明になることもあった。アラビア語と簡単なフランス語しか通じないから、片言のフランス語で「コムサ(ここに置いたままにして)!」と言うのが精一杯だった。
ひどい時は、私の持ってきたスカーフを、そのメイドが巻いていた。あまりお風呂に入る習慣の無いメイドの人の髪に勝手に巻かれたスカーフ。返してもらったけど、もう使う気がしなくて、モヤモヤした気持ちを抱えながら捨てた。
勝手に人のものを使うっていうその根性が残念だって思った。私は心が狭かったろうか?
彼氏とヘルメットもかぶらないでバイクでツーリングして事故って意識を失ったり、田舎の高校生のヤンキーみたいだった。
トイレが壊れて水が漏れていた時も、「トイレのやり方知ってる?便器の中に用を足すのであって、外に漏らすんじゃないのよ」という感じのことをジェスチャーで言われた。
どこまで程度の低い国の人間と思ってるんだろう。
人は、自分が育って経験した範囲でしかものを考えられないという事例の典型だと思った。
日本に一時帰国したとき、1度も掃除を頼んでないのに、事前説明もなく1ヶ月分の掃除賃をまるまる請求されたり、メイドの人の生活のことを考えれば普通なんだろうけど、ちょっと嫌な気持ちになることもあった。
私はメイド使いには向いてないんだろう。
家を空けて勝手に掃除してもらうなんて、絶対に嫌だったし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます