第9話 大家さん一家

私の住んでいた家は二世帯住宅のような形で、下に大家さん一家が住んでいた。大家さん夫婦、娘がいつもいて、時々親戚や孫が来ていた。孫は両親が離婚して、獣医の母ではなく、男親に引き取られていたから、祖母である大家の家によく来ていた。

とてもかわいくて、屈託なく話しかけてくるけれど、もう5歳だったから、早口のフランス語とアラビア語で話しかけられても、なかなか理解が難しかった。

大家さんに、「私は子供が嫌いだ」と思われたかもしれない。本当はもっと仲良くなりたかったから、せめて英語が通じる国だったらなぁと思った。

大家さんの家の庭は、レモンやオレンジが植えてあった。時々そのとれたてのレモンやオレンジ、それからびわもくれることがあった。「レモンはしぼって、あたたかいお湯とハチミツを入れると美味しいのよ」と言っていた。レモネード。飲み方は日本と同じねと思った。

家の塀は高くて、泥棒よけに割れたガラスの破片がくっつけてあった。

治安は良い方と言われていたけれど、貧富の差は日本よりあったから、強盗対策はそこそこしていたのだろう。

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