15 Q.ここはなんだ!? A.ゲーセンですが何か?
★★★
――さぁて、少し記憶を封印しようか。
扉に入るバグ・レオンを見て、男はそう決断した。
★★★
扉に入ると下に長く続く階段があった。チェッ……エスカレーターとかエレベーターとかねぇのかよ……。というか扉開けたらすぐ魔王の部屋にしろよ。
蓮雄が3、4段降りたところで立ち止まる。[どうした?]とヘルの声とともに、
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
脳内に大きな痛みを感じる。蓮雄は頭を抱えながらその場に座り込んだ。
[大丈夫か!?]と何回もヘルが言っているが、蓮雄の耳に入るわけがない。
誰かに脳みそを生で握り締められている感じがする。だんだんと脳内の何かが消えていく感じがする。そんなことを考えている暇はなく、痛みが必要以上に襲ってくる。
と、途端に痛みが和らいでいく。それと同時に脳内の何かが消えた――が、蓮雄はそんなのは気づかない。
呼吸が荒れていて、だんだんと取り戻していく。ヘルが背中をさすってくる。それのおかげもあるのか、すぐによくなった。
[貴様大丈夫か?]
「あ、あぁ……大丈夫だ……」
[そうか?そうには見えないが……]
「なら、最初から聞くなよ」
[なんだと!?貴様のことをわざわざ心配してやったのになんだその態度は!腹を切れぇ!]
「なんで腹まで切らないといかんのだよ!切腹する理由が見当たらねぇ!?」
[ただ、死んで欲しいだけだ……]
「なんでそんなシリアスに言ってんだぁぁ!?内容最悪だぞてめぇ!?」
そんな会話をしていると、扉の方から何やら聞こえてきた。
「き、貴様ら……俺がこんなことで……死ぬと思ったか……!?」
[ベール……!]
そこは扉の前で串刺しまみれになっているはずのベール司令官だった。
そこに立っていたベール司令官は、全身穴まみれで向こう側が見える。そこから血が滴り落ちている。なんというグロ映像だろうか。というより、ベール司令官の生命力がとてつもない。普通の人なら即死しているのに、ベール司令官は剣を構えて立っている。
「き、貴様らを……リヴェルトン様のところにいかせるわけにはいかねぇーんだよ……!」
その言葉を発した瞬間、ベール司令官が扉からジャンプしてこちらに剣を振ってくる。ヘルが剣を出現させ、それを食い止める。ベール司令官の体中から血が飛んでくる。それが、ヘルにかかり、ヘルも血まみれになる。
[蓮雄!さっさといけ!]
「で、でも――」
[私は
「うん、胸と股にモザイクかかってるやつが言ってもかっこよくないけどな」
[……早く行け!]
こいつスルーしやがった。
蓮雄はスッと立ち上がると、無言のまま階段を降りていった。あれ?前もこんなシーンなかったっけ?くどくない?くどいよね?くどい!
「バグ・レオンンンンンン!待てぇぇぇ!」
[貴様の相手は、このニューヘル女王が相手だ。感謝しろ]
剣で後退させて、ヘルはドヤ顔で言った。え?どこがドヤッ!とするところなの?馬鹿なの?アホなの?ちぬの(赤ちゃんに話しかけるように)?この()いらなくね?
階段をどんどん降りていく。だが、一向に先が見えない。ちょっと待って……?と、下を見てみる。
エスカレーターになってんじゃぁぁぁぁぁぁぁんんんん!?
エスカレーターを逆走している感じになっているのだが、そのあまりに速すぎて、下に降りているのに全然進まないのだ。
と、蓮雄が思いっきりジャンプして下に降りようとする。が、ドカン!と前から巨大なトンカチが蓮雄を叩いた。なんだその仕掛けはぁぁぁぁぁ!?
後ろに飛ばされエスカレーターに落ち、そのまま上がっていく。やべぇぇぇぇ!と思った瞬間、エスカレーターの向きが変わった。どんどん下に降りている。おおお!と思い、下を見ると、
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
『熟女クラブ〜熟女と熱い夜を過ごしませんか?〜』という看板が上にぶら下がっていて、その下にベッドの上に寝転がってセクシーポーズをしているババァがいた。年齢は60、70ぐらいだろう。待ち構えていた。
ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!なんだあれぇぇぇぇぇぇぇ!?普通針とか殺すやつだろぉぉぉぉぉぉ!?確かに精神的に殺されるけどぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?
ヤバイ!全然上がれねぇぇぇえ!ちょ!マジ熟女無理!無理だからぁぁぁぁ!
と、叫んでいると上から何やら流れてきた。台の上に何やら紙が乗っている。その台を綺麗によけつつ、その紙をとる。見ると、
『熟女もう1人追加コース』
と書かれたものが。いらねぇぇぇぇぇぇ!俺はその紙を捨てた。すると、
[ピンポーン。注文入りましたー!]
とババァの声が。そして、上の天井が開き、そこからババァがベッドの上に召喚された。いや待てぇぇぇぇぇぇぇ!誰が注文したぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
必死に走る。やべぇ、全然進まねぇ!それどころか落ちてってるぅぅぅぅぅぅぅ!?
と、またも上から台が流れてきた。なんだここ、回転寿司かゴルァ!ありがたく、台に『お助けチケット』と書いてあった。またも台を綺麗によけ、紙をとる。見ると、
『お助けチケット〜これであなたも開放されます〜 田中のじいさん追加コース』
と書かれたものが。死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!何がお助けだゴルァ!と、紙を捨てる。すると、
[ピンポーン。注文入りましたー!]
とジジィの声が。そして、上の天井が開き、そこからジジィがベッドの上に召喚された。だから注文してねぇーって言ってんだろぉぉぉぉぉ!今、ベッドの上はババァ2体とジジィ1体だ。ジジィがセクシーポーズをとっている。……………………オェ。
ちょっと待てぇぇぇ!何がどうなってんだよ!おかしいだろこれ!と、またも台が流れてきた。もう見ねぇぞ!もうとらねぇーからな!と、流れた台をよけて、紙を取らなかった。ふん!これで注文はできねぇ!
[ピンポーン。注文入りましたー!]
だからなんでぇぇぇぇぇぇぇぇ!?しまった!中身みてねぇ!何が、何が召喚されるんだ!?と、天井が開き、そこからネコが降りてきた。そしてベッドに寝転がる。せめて人間にしろぉぉぉぉぉぉぉぉ!なんだ!?俺がネコとランデブーかおい!ざけんなよ!
くっそ!捨てても無視しても注文入りやがる!もうこれ以上増やさない、と蓮雄はとってそのまま持っておくことにした。と、またも台が流れてきた。今度はとる。そして見ると、
『絶品の美女コース』
!?蓮雄が覚醒した。ふん!と紙を捨てる。すると、
[ピンポーン。注文入りましたー!]
来たぁぁぁぁぁぁぁぁ!これならベッドの上に落ちても――もはや生物じゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?見ると、ピンクの眼鏡が置いてあった。せめて生物にしてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!眼鏡ってなんだよ!どこが美女だよコノヤロー!眼鏡女子用だけど関係ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!もうふざけんなよ!もうやだよ!ざけんなよ!
[ピンポーン。注文入りましたー!]
え?何!?紙も流れてきてないんだけど!?と、天井から姿を現したのは、ボディビルダーだ。パン1で筋肉ポーズをしている。そしてベッドへ。
もう地獄だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!『熟女クラブ』でもなんでもねぇよ!『地獄の底までイってあぁん♡』だよ!地獄だよ!想像しただけで死ぬわ!ボディビルダーとかもうやりてぇーだけだろ!体力ねーんだよこっちは!こんなところで走ってたらそのうちほんとに死ぬわ!あーもう死ぬわ!あんなところにいくようなら死んだ方がマシだわ!地獄絵図だわ!
蓮雄が地獄に叩き落されようとしている時、ヘルとベール司令官は真剣に戦っていた。真剣だからね?あのクソ蓮雄とは違うからな?そこ勘違いしたら殺すかんな?覚悟しろよゴルァ。
そこまで広くない階段で剣と剣が混じり合う。ボロボロのベール司令官は、もうやけくそに剣を振っている。行動や軌道が予測できず、防御に集中して、攻撃ができない。だが、ベール司令官ももうそろそろだろう。いくら生命力があるといっても、長くは持ちはしない。ヘルはひたすら攻撃を受け止めた。
そして、ベール司令官の足が限界をこえ、その場に倒れ込む。辺りはベール司令官が巻き散らかして赤く染まっている。
[貴様も終わりだな]
「な、何が……終わりだ……貴様らも終わりだ……!」
ヘルはベール司令官の首を斬った。今度こそ息の根を止めて。
なんとか地獄を抜けれた蓮雄は(なんで抜けれたかは知らない方がいいと思うよキリッ)、壁に手を当てながら階段を降りていた。さっきので体力が……。それよりも、時間がヤバイ。あと1時間程度しかない。急がないと。
と、後ろから何か足音が聞こえてくる。その正体はすぐにわかった。
[おい貴様……なんでそんなにヘトヘトなんだ?]
「さ、さぁな……」
あの地獄を言えるわけもなく。ていうか今更だけど、俺体女だったから熟女相手とかいっても女同士だし。まぁさらにキモくなるけれども。
「そ、それよりヘル。随分と早かったな」
[は?何を言っている。結構時間は経っていたぞ?]
あぁそうか。あの地獄のせいで体内時計が狂ってたのか。
「それにしても、長くね!?」
[いや、そうでもない、ぞっ!]
とヘルが俺を鷲掴みにして階段を颯爽と降りていく。速ぇぇぇぇぇぇぇ!?
あっという間に魔王リヴェルトンの部屋の前までたどり着いた。その豪華な扉に見入っていると、ゴゴゴ!と漫画みたいな効果音をたてながらゆっくりと開き始める、というかなんか文字出てきてない?あれ?俺の見間違い?
だんだんと見えてくる中は真っ暗闇。その中に1つロウソクみたいなものが立ててあるだけ。とても気味が悪い。
完全に開くと同時に、部屋がパッ!と明るくなる。すると、
『熟女・熟男クラブ〜さぁ一緒にレッツプレイ〜』
という看板とともに、大きなベッドの上に、さきほどの階段でいたやつらが5倍の人数が寝転がってセクシーポーズをしていた。おい眼鏡混ざってんだろうが!というより、
「もうしつけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
看板を蹴り飛ばした。
「もうしつけーよ!おいてめぇーらR18指定すんぞゴルァ!読者様に謝れよ!読者大帝に謝れよ!読者神に謝れよ!」
[お、おおおおおおおおおおおおおいいいいいいい落ち着け、ととととととととととりあえず、オオオオオオ★ホ探せ]
バコーンと蹴り飛ばす。
「てめぇーが落ち着け!何下ネタ言ってんだよ!何イこうとしてんだよ!いい加減R18指定すんぞゴルァ!というかお前ら!いつまでセクシーポーズとってんだよ!気持ち悪いんだよ!そこのボディビルダー!筋肉すごいのはわかったから局部強調すんな!そしてそこのジジィババァ!もう歳なんだからやめとけって!本当の天国行っちゃうぞゴルァ!っで、そこの眼鏡ども!てめぇーらは一体なんなんだよ!眼鏡がランデブーってどうやるんだよ!」
ガチャガチャ。合体。
「やらなくいいんだよ!てかやるな!ただたんにくっついただけじゃねーか!眼鏡がランデブーしても子供うまれねーだろ!」
レンズからポトリ。
メガーメガー!
「なんか眼鏡産まれたぁぁぁぁぁぁ!?なんでだよ!?眼鏡もランデブーしたら産まれんのかよ!?てかメガーメガーってなんだよ!ぴかーぴかーの真似だろ!」
こいつらうぜぇ!てか、
「ここ魔王の部屋じゃねーのかよ!おい!ここがもし魔王の部屋だったら、俺魔王の趣味疑うぞ!?」
「――もちろん私の部屋だ」
とどこからか不気味な声が。またまたイタズラと思いヘルを見る。が、いない。どこにもいない。そして、
「ここだ貴様」
と上から聞こえてきて、上を向く。すると、ヘルを手に握りしめた魔王リヴェルトンが浮いていた。そして降りてくる。それと同時にヘルが握りつぶされる。ヘルは消えた。
そして指をパチンとならすと、ベッドの上でセクシーポーズをしていたやつらが一瞬で消えた。
……ありがとう。
「初めまして、バグ・レオン……」
「てめぇが魔王リヴェルトンか」
「ほうほう、かの『伝説の勇者』殿に名前を覚えられていたとは……私も有名になりましたねぇ?」
「あぁ悪い意味でな……それと」
いつの間にか蓮雄はリヴェルトンに迫って、剣を首に突きつけていた。
「俺のことを『伝説』とか言うな……殺すぞ……」
リヴェルトンは遅れて後ろへ下がる。
蓮雄の目は本気だった。
「そうですねぇ?確か別名は『悪魔の勇者』……とか?」
「それは今関係のないことだ。口を閉じることだな」
「ゴミはよくそう吠えます。ゴミは」
「そうかい?ならてめぇーもゴミ以下、というわけだな」
「だからなんだと言うのだ?下克上という言葉があることを?」
「さぁ俺には知らねぇな。いつもいつも下克上をしてるもんだからな!」
蓮雄がリヴェルトンに迫る。リヴェルトンはその大きなマントをヒラリと蓮雄を包み込むようにする。蓮雄の剣はそれを貫いた。そして蓮雄が向き変えると、目の前にはリヴェルトンの手の平が。
「これがバグ・レオンですか?もうとっくに死んでますけど?」
「く……!」
蓮雄はその手を払うように後退した。そして、剣を構えてまた飛び込む。が、いつの間にか直っていたマントをまたヒラリとすると、蓮雄は吸い込まれるようにマントに入っていき、マントを貫く。そして、振り返ると同時に、リヴェルトンの足が蓮雄の顔のすぐ横にあり、蓮雄は吹き飛ばされた。
「弱い……」とリヴェルトンがつぶやくと、蓮雄が体勢を立て直してまた飛び込んでくる。次はマントは使わなかった。
リヴェルトンが蓮雄に手を向ける。すると、リヴェルトンの横に魔法陣が出来て、そこから無数の波動弾が飛んできた。蓮雄は飛び込むのに夢中で、攻撃に当たってしまった。煙が相当大きくなるまでリヴェルトンは放ち続けた。さすがのバグ・レオンも重傷だろう、と思った時、煙から高く飛び出してきた蓮雄がいた。なぬ?まだ重傷でもないとは。
リヴェルトンは飛んでくる蓮雄に向けて、また波動弾を放つ。煙の中から蓮雄が落ちていくのが見えた。が、地面に落ちると同時に、手で地面を押してバク転をしながらこちらに向かってきた。馬鹿だなこいつ。
リヴェルトンはタイミングよくバッティング的に蹴った。
「かのバグ・レオンもこんなものか……相手にもならんわ……」
煙が消えると、そこには壁にもたれかかって血を流している蓮雄の姿が。意識があるのかどうかもわからない。
リヴェルトンが「これで終わりだ」と波動弾を撃ちまくる。何発撃ったかわからんが、結構撃ったと思う。撃つのをやめて魔法陣を消す。フッ!とマントをキュッ!とやると、後ろに振り返る。振り返ると目先に剣先が突きつけられていた。もう少しで刺さるところだ。
「こんなあっけない戦いがあると思ってんのかバカヤロー」
そこにはバグ・レオンの姿が。
「話の流れ的に考えてみろ。俺がてめぇーを殺すのはみんなわかってんだから。大人しく死んどけ」
「ば、馬鹿な……!あんなに攻撃を受けたのに……!」
「あんなに、だと?全然だね。俺は『狼』だ。満腹では獲物は追えぬ。俺は今、満腹な腹の中身を捨ててもらうのに手伝ってもらっただけだよ」
「そうかい!じゃあ本気で殺らせてもらうよ!」
神よみておけ!俺がこいつを殺してやる!リヴェルトンが心の中で叫ぶと、蓮雄を蹴りながら後ろへ下がる。だが、蓮雄はそれをスイッチに使い、勢いよくリヴェルトンに飛びかかる。
蓮雄の剣とリヴェルトンの剣が交わる。カキン!カキン!と部屋に響き渡る。両者一歩も譲らなかった。
蓮雄は先程よりスピードが速く、威力も上がっていた。
リヴェルトンの本気とほぼ互角だ。
だが、リヴェルトンの足にガレキが当たる。意識がそっちに向いた瞬間に、蓮雄は待ち構えていたかのように剣を振る。リヴェルトンは後ろへ避けようとするも、体にかすり傷をいれられる。かすり傷と言っても、そんなに優しいものではなく、結構ザックリと。
ポタポタと血が流れる。
「言ってなかったか?俺は戦場に入った時にはもう、その戦場は俺の獲物の狩り場だって」
「フフ……聞いたことねぇよ」
リヴェルトンは早くも息を荒らしていた。
蓮雄がリヴェルトンに飛び込む。その途中でリヴェルトンに剣を投げつけた。リヴェルトンは剣をカキン!と払う。だが、これも予想内。蓮雄はそのまま飛び込み、リヴェルトンをそのまま壁に当てつける。「グワっ!」とリヴェルトンが血を吐く。
蓮雄があてつけたところには、コンクリートでできた尖った棒ができていた。
「ま、まさか貴様……壁に打たれたとき作ったのか……!」
「あぁ。俺はこういう戦術が好きでねぇ?デパートの時もこの方法で殺したゴーストもいるよ」
「そ、そうか……だ、だがそのゴーストと違うのは……」
「な……!」
蓮雄の胸に剣が突き刺さっていた。そこからジワジワと血が溢れ出ている。
「ただたんに剣を払ったと思うなよ……」
まさかこいつ!俺が投げた剣を打ち返したのか……!俺の動きを予想してやがっただと……!
蓮雄は一旦リヴェルトンから離れ、その胸に刺さった剣を抜く。
「ふん、これでおあいこだ……」
リヴェルトンがブチュブチュ!と音をたてながらそのコンクリートから体を抜く。
蓮雄が剣を構え、リヴェルトンも剣を構える。
先に動いたのは蓮雄だ。剣を構えたのと同時にリヴェルトンに向かって走り出す。だが、左右にブレブレに揺れたまま。
軌道がまったく読めない。ブレブレに動きながら走ってくる蓮雄に、リヴェルトンは困惑していた。だが、いずれにせよ振ってくる。リヴェルトンはがっしり剣を構える。
ブレブレに動きながら向かってく蓮雄は、リヴェルトンの目の前に来ると、剣を振らずにジャンプした。
リヴェルトンは剣を振っていた。だが、そこには蓮雄の姿はない。
上から振った剣はリヴェルトンに当たった――はずだった。
当たる直前、リヴェルトンの背中に魔法陣ができ、そこから突風が吹いてきた。そのあまりにも強い突風に蓮雄は宙を舞い、大きく地面に叩きつけられた。
「危ない危ない。もう少しで斬られるところだった」
「てめぇ……」
蓮雄はゆっくり立ち上がっていく。
「貴様がこの世界にいれられるのはあと10分。さぁてどうする?」
「10……分……!?」
「もう遅いんだよ。貴様はまた仲間を救えない。また敵を倒せない。残念だったな」
「てめぇぇぇぇ!!」
蓮雄がリヴェルトンに飛び込む。が、リヴェルトンは蓮雄の攻撃を完璧に受け止めている。そして、腹に1発蹴られ、蓮雄は大きく飛ばされた。なんだこいつ……蹴りの威力がガノ★ドロフ並だぜ……。
蓮雄がガクガク立ち上がると、リヴェルトンは何やら独り言を言っていた。内容は全く聞こえなかった。
しばらくして、どうやら終わったらしく、こちらを向く。
「どうやらタイムオーバーらしい。私はここで退散だ」
「逃げるのか!?」
「いいや。不完全な貴様と戦っても面白くない」
「ふざけやがって……!」
「女王達ならこの後ろのドアの中にいるよ。早くしないと時間がなくなっちゃうよ。じゃあな『狼』……!」
そう言ってリヴェルトンがマントをヒラリとやると、リヴェルトンの姿が消えた。取り残された蓮雄。何がなんだかわからなかったが、とりあえずドアの中に入る。
『ゲームセンター』
と書かれた看板があり。数々のゲーム機が並んでいる。そしてそのゲーム機で遊ぶ2人の人間が。
「おぉ貴様やっときたか」
「こなくてよかったのに……」
俺は振り返り、ドアを閉めた。さぁ帰ろう。
「いや待って!お願いします!」
とドアの中から声がしたけど気のせいだよ。ね?誰も聞いてないよねぇ?
ごんゴンゴン!
「これ中から開けられないんだよ!開けろ!」
「うるせぇ!」
扉をぶっ壊してヘル(体は俺)を蹴り飛ばす。
「おいなんだよここは!」
「ゲーセンですが?」
と都茂龍架の声が。
「見ればわかるわ!なんで牢獄がゲーセンなんだよ!?」
「なんかゲーセンだった。ちょー楽しかった」
「おいぃぃぃぃぃ!人が命かけて助けに来たのになんだよこのオチはぁぁぁぁ!?牢獄で酷い目にあってるかと思えばゲームしてただとぉぉぉぉ!?なめてんのかおい!てかなんで敵同士仲良くゲームやってんだよ!」
「いや、喋る相手も、ゲームの対戦相手もいなかったもんでな……ここ、無料だぞ?」
「マジか!?俺もやるわ!――ってなるかボケェイ!おい俺はボロボロなのになんでてめぇらはピンピンしてんだよ!てか今までのかっこいい戦闘シーンの時間を返せ!」
【え?あれかっこいいか?気持ち悪いにしか思えないんだけど】
「なんでハモってんだおいぃぃぃぃぃ!もういい加減にしろよ!?」
「うるせーな。こちとら好きでゲーセンやってるわけじゃねーんだよ」
「って言いながらパチンコやってたら説得力皆無だからな!?」
「はーい……」
「おいふざけやがって………ってん?」
と、遠くの方にある看板を目にする。
『偽体を操ってゲーム』
と書かれた看板が。
……おいもしかしてこれ……。
ピキピキ。
「お前さっきまでゲーム感覚でやってたのか!?」
「うるせぇ!」
「なんで俺が黙らねーといけねーんだよ!……ったくもう……これなら俺、こいつら助けに来なくてもよかったじゃん……俺が来た――」
そこで時間は終わった。
中途半端ぁぁぁぁぁぁぁぁ!
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