7 ゴーストと龍架
★★★
放課後、先生に呼ばれる。なんで俺までかはわからないが、行くことに反論はない。ヘルだけだと心配だし、何せよ魔李ちゃんと怒られるからね。嬉しいね。って俺本当キモイよな。
職員室で立たされる3人。先生はパソコンをいじりながら話をする。
「っで、君達は
【はい……】
先生、何か変な漢字が見えるのは気のせいでしょうか。走る死の道ってなんだよ。その道走ったら死ぬの?
先生に事情を説明したところ、こういう反応だ。まぁ当然。くだらない。
「っで、爆颶は女子トイレでヘルの護衛をしていたと」
「はい……」
いやちげーだろ。監視とかほざいてたの俊将だから。せんせーい、俊将くんが覗き見してましたー。
ほんと俺の名誉がどんどん傷ついていく。
「っで、優凪はなんでいるんだ?」
てめぇが呼んだんだろうが!と喉元でこらえる。
「いや、先生に呼ばれたからですよ?」
「……っで、反省するところは?」
おいスルーしたぞこの人。
「わ、わたしは廊下は走ったりしたこと……です……」
「俺は別にないな」
いやあるから!いろいろとあるから!
「ほう?いい根性してるな」
ぐるりとパソコンを操作するのをやめて、ヘルを向く。ちょ先生待って。
「そういえば、この前も『死ね』とか言ってたよなぁ?」
ままままままままままま待って!待って!待って!確かに言ったけれども!今だけは勘弁して!俺が元の体に戻れてからにしてくれ!とりあえず、すいませんでした!本当に申し訳ございませんでした!ほんとすいません!もう言いません!ほんと!マジホント!
なんて心の中で謝っていても先生に伝わるはずがなく。
「言ってないが?」
「爆颶ー、とぼけるなよ?あれなら親に言ってもいいんだぞ?」
おい尾澤先生ってこんなに器小さかったか?
「言えばー?俺はどうでもいいし。そんなんで怒ってるから結婚できないんだよ」
待てぇぇぇぇ!それだけは言うなぁぁぁ!
「……優凪。謝ることは?」
逃げたぁぁぁ!?おいまさかの弱点かよ!よしこれからそうしよう。
で、いきなり謝れと言われても。謝るところないですし。
先生はまたパソコンをいじりはじめた。ものすごいスピードで。ヤバイ怒ってるよ!ちょ何が何でも謝っておこう!
「……は、は、走ってる2人を止めれなくてすみませんでしたぁぁぁ!」
「よろしい!で、では3人とも帰っていいぞ!」
★★★
説教(?)が終わった後、都茂龍架の寺に行った。この町唯一の寺で、住民からの支持が強い。占いなどが当たりやすい為、雑誌や本やテレビなど信じず、ここの占いを信じる人が多い。都茂信者だな。ちなみに俺は占いとかまったく信じないから。
とにかく、ここと仲良くしとけばまぁ大丈夫ということだ。
陰陽師の子孫と言っても、都茂龍架の親は2人とも早死にしてしまったため、ここの寺に養子に来た身だ。どうやらここの人も陰陽師に関係があるらしいが、誰もその詳しい事を知らない。陰陽師的な能力はあるらしいが、龍架の方がはるかに強いらしい。聞いたところによると、龍架はあの安倍晴明の生まれ変わりじゃないかと恐れられたらしく、生まれた時に殺そうかどうか迷ったらしい。しかし、父親が反対をし、どうにかそれはまぬがれたという。龍架は安倍晴明と同じく強い能力を持っている。聞いた話ね。信じるか信じないかはあなた次第。これ言ってみたかった。
正体がバレた今、龍架に従わなければならない。しかしいつかは従えさせてやるぞゴラァ。
寺は山の奥にあり、行くのに30分もかかった。結構しんどいんだぞ。
階段の目の前に立つと、とてつもない迫力が寺から感じ出てきた。ゆっくりゆっくりと上っていき、寺が見えたと思って1番上に着くと、龍架が立って待っていた。なんか待たせちやってごめーん!みたいになることはない。
「来てくれたんですか」
「あ、いや正体バレてるからな」
そうですか、と龍架が中へ案内してくる。どうやら話は中でするらしい。
中へ入り、いろいろな部屋を通り過ぎ、1番奥の部屋に連れてかれた。
その部屋は太陽がまだでているというのにも関わらず暗く、ロウソクが4本立ててられていた。妙な感じがする。ていうか怖い。
座れと合図され、ゆっくり座る。ヘルはドスンと座った。……それなんか俺の体重が重いみたいな感じになるからやめてください。あなたカリにも女王でしょうが。
「それで早速、頼み事の件ですが」
頼み事、休み時間の時に「幽霊退治」とか言ってたよな。
「幽霊退治とか言ってたか?」
「はい」
「貴様1人でも十分に退治できる力はあるはずだが?」
ヘルにはわかっていた。この女がとてつもない力を持っているということを。
「普通の幽霊なら、の話ですけどね」
「普通?」
「えぇ。どうやら今回の幽霊、普通の幽霊ではないみたいで。私1人の力ではどうもできないのです」
その重い声ほんとやめてくれん?この部屋の雰囲気とリンクしてちょーこわいんだけれども。お願いこわい。
「ほう?しかし、なぜ私の力が?」
「ヘルさんはこの世界の人物ではない。つまり、違う世界から来た者。その方ならこの幽霊を退治、成仏できるのではないか、私はそう考えました」
「ほう。わかった、しかし、なぜ蓮雄まで?」
そうそう!なんで俺まで?俺なにもできないよ?ていうか俺まだ喋ってないんですけれども。
「あぁ。ついでです」
「そうか、ならいい」
……ですよねー。
「っで?その幽霊はどこにいるんだ?」
「実はこの世界に大量発生していて、つい先日1匹だけ捕まえることに成功したわけです」
そう言ってパチンと指を鳴らすと、ロープというかなんか紫色の光を放っているロープみたいなものでぐるぐる巻きに拘束されている人形の幽霊が現れた。
俺はびっくりしたが、ヘルはそうでもないようだ。
「これがやっと捕まえられた幽霊です。……成仏させようといくらやっても成仏しないのです」
ここで俺とヘルはようやく気づいた。こいつはただの幽霊ではなく、あの異世界No.9ニコラス王国のゴーストだということを。
俺とヘルは顔を見合わせる。
「ふむ。どうやらこちらの世界の者が間違えて送り込んできたのだろう。こいつは私が成仏させる。貴様は少し出て行ってもらえぬか?」
「そうですか助かります。わかりましたでは終わったらお呼びください」
そう言って龍架は部屋を出ていった。
さてさて拷問の始まりだ、と言わんばかりにヘルが立ち上がる。
「おい貴様。異世界No.9ニコラス王国の者だな?」
「……あぁ」
「なぜこの世界にいる」
「なぜか?誰が言うものか」
「ほう?何か企んどるか?」
「……」
ゴーストが無言で喋らなくなると、ヘルは剣を出現させゴーストの腕に刺す。ゴーストは声を上げる。
「答えろ。貴様はなぜここにいる」
「だ、誰がてめぇーなんかに!」
「魔王リヴェルトンか?」
「……」
「よしではもう1本〜」
と言いながら腕から剣を抜き、もう片方の腕に刺す。
「わ、わ、わかった!答えるから!答えるから抜いてくれぇ!」
「最初から言えバカ」
といいつつ剣を抜く。わぁすごい。すんげぇドSに出会っちまったな。こりゃ俺でも耐えれんわ。多分死んでるレベル。
「魔王リヴェルトンの命令で俺はこっちの世界に来ている。何を企んでるのかしらない!俺はこっちの世界の様子をベール司令官に伝えているだけだ!ほんとにそれ以外何も知らない!」
「わかった。もう一つ聞く。ベール司令官とは誰だ?」
「こちらの世界に送り込んだゴーストの指揮をとる御方だ」
「ほう。いい情報をありがとう」
ヘルが言うとゴーストは笑みを浮かべたがその瞬間、ゴーストは真っ二つに切られゴーストは消えていった。
これで退治は完了。しかし同時に恐るべきことがわかってしまった。
――魔王リヴェルトンがこの世界に手を出しに来ている。
つまり、魔王リヴェルトンはこちらの世界も侵略するつもりだろう。
「どうするヘル?」
「私の仕事はニコラス王国を救うことだ。しかし、異世界No.2地球は異世界連邦の中で重要とされてる異世界。その世界が滅びようというなら救うしかないな」
そう言って剣を消す。
俺は心の中で、でもやっぱり俺を救ってほしいんだけど、と思ってしまった。
2人は気づいていないが、龍架は部屋を出たといって呪符を使って中を見ていた。
ヘルは大声で龍架を呼ぶ。それと同時に待ち構えていたかのように入ってくる。
「成仏はできましたか?」
「あぁ。ところで貴様、まだ他にもいると言ったな?」
「はい」
「どこかに集まっている場所はあるか?あるなら案内してほいんだが」
「そうですねー」と言いながら呪符を取り出して額に当てる。そしてしばらくして離す。
「どうやら呪符でも確認できないようです」
「そうか」
「あのーできれば……」
「わかっている。これは私達の問題だからな」
「ありがとうございます」
そう言って3人は部屋を出る。俺は何もしてないし喋ってもないなーいる意味あったのかな?
龍架に案内されたのは寺の奥の森の中だった。なぜかは知らないが、ここにいたのを前みたという。なぜか俺は嫌な予感しかしず、キョロキョロ辺りを見回す。
今、龍架とヘル、俺で向き合っている感じだ。
「あいつをどこで捕まえたか聞いていなかったなぁ?」
「えぇ。それがここです」
「ほう?どうやって捕まえた?」
「もちろん呪符を使って、ですが」
まさかの質問攻め。
「いつ捕まえた?」
「昨日です」
「簡単だったか?」
「いえ、かなり手こずりました」
「ほう?怪我はしてないが?あいつはニコラス王国の暗殺者だ。かなりの手練れ。私も拘束されていたから成仏させれたが、貴様の力では大きい怪我はすると思うが?」
ヘルがニヤリと笑う。あ、とあの洞窟の記憶が蘇る。あの襲ってきた暗殺者。ということは、あれよりも強いということなのだろうか?それなら確かに龍架が怪我をしていてもおかしくはない。
成仏という言葉を強調していた。決して調教ではないよ?
「……」
龍架は黙ってしまった。
「黙るのか?」
「フ、フ、フフフフハハハハハ!」
突如笑い出す龍架。ついに本性を現したか。薄々俺も気づいていた。ヘルの勝ちだ。
龍架は腹を押さえて笑う。そんなにおもしろいか?
「さすがですねぇ。でも、これも想定済み!」
そう言って呪符を2枚取り出す。そして1枚地面に叩きつけると、地面に結界が現れる。
「もうここは私の結界内ですよ?」
辺りに結界がいくつもできて、ついには俺らを中心にドーム状に覆われた。空ひとつ見えない。
「やはりな。貴様、あいつらと手を組んだだろ?」
「あら?お気づきで」
とてもとても重い声で言う。もう声変えてよ。
「龍架?なんでそんな手を結んだんだ!?」
「都茂龍架は小中といじめられていた」
「え?」
「気になって調べたんだが、どうやらこいつはとてつもない『悪』が潜んでいる」
「いや調べる時間なかったろ。……まぁなんとなくわかる気がするな。この世界をぶっ壊したいとか、人間という無様な生き物に復讐してやる!みたいな厨二病だろ?俺も一時期あったぜ?」
【……】
おいてめぇらなんだよその目は。何この見下されてる感は。何久しぶりに喋ったと思ったら変なこと喋ったみたいな目でみるのは。やめて。心が痛くなる。痛い痛い。
「……それで龍架は魔王リヴェルトンと手を結んで、この世界を乗っ取ろうと?」
「まさか安倍晴明を超える最強の陰陽師さんがまさか『悪』の大魔王さんになっちゃうとはねぇ」
「恐ろしいなんてもんじゃない。こりゃバケモンだわ」
「まずいの相手にしちゃったか?」
「話は終わり。あなた達はここで死んでもらいます。とてつもなく邪魔ですので」
そう言って呪符を手にいっぱい取り出し、すべてを地面に投げる。すると、呪符がいろいろなゴーストに変化する。やばこいつ。あのゴーストを呪符の中に閉じ込めてやがって、それをいつも持ち歩いていたと。ほんとバケモンだわ。
まぁこうなる展開は読めてたけどさ、早くね?展開早くね?
死んでもらいますって言われても、ねぇ〜。まぁ俺は何もできないけど、こっちにはヘルがいるわけですし。
俺も剣とか使えたら役に立つし、こんなゴースト達相手になんねぇのになぁー、って多くね!?ちょ待て!ゴーストの数多すぎ!さすがのヘルでも1人はきついぜ!?
「チッ……多すぎるな……」
とこちらをチラッとみてくる。すいませんでしたね!役に立たなくて!そしてキモくて!
「貴様は下がっていろ。私が片付ける」
「さぁて!これであなた達もここで終わりです!」
って、いつの間にあの人飛んでるの?なんか空中に浮いてるんですけど。え?何?陰陽師って何でもできるの?え?チートなの?
剣を出現させたヘルは、いつもに増して真剣さが伝わってきた。そして龍架は、腹黒く笑っている。
「さぁて一気に片付けますかぁ」
そう言ってヘルが走り出すと共に、ゴーストもこちらに向かって走ってきた。走るって言い方だと足があるみたいになってるけど、実際はないからね?
紅く紅葉のようなその剣。
足が速かったゴーストとヘルが会う。こんにちわ〜とかの会うじゃないからね?
一瞬で真っ二つにし、その後ろ、横と次々に真っ二つにしていく。剣を振ったあとにもそこにはまだ剣があるかのように見える。つまり、それだけ速いということだ。真っ二つになっていくゴースト達が紅い線で結ばれているかのように赤い血しぶきが舞う。ゴーストなのに血がでるの?という疑問は捨てろ。
途中、ゴーストを蹴ったり飛ばしたりして、まとめて斬りかかる。と、そこまで斬りかかっていたのが逆転し、ゴースト達に周りを囲まれ、一斉に斬り掛かられる。さすがのヘルも対処しきれず、ところどころに傷を負うが、次々と殺していく。俺はその光景を見る事しかできなかった。
そして、見ていることができたのはそこまで、数体俺に向かって走ってくるゴーストがいた。俺はどうすることもできず、頭がこんがらがり動くことができない。ヘルがそれに気づいたが、その一瞬の隙に次々と切り刻まれていった、「ぐわっ!」と血を吹き、その場に座り込む。剣を立てて、なんとか座れていれるが剣がなかったら倒れていた。それほどまでの傷を一瞬のうちにつくってしまった。と、考えていたのは刹那、蓮雄の方を向くと、ゴーストが立ち尽くす蓮雄に斬りかかる寸前だった。やばいっ!
「れおぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!」
はっ!と蓮雄が気づいた時にはもう剣が目の前に迫っていた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
と泣き叫んだその瞬間、蓮雄の意識が飛ぶとともに、蓮雄が謎の赤い光に包まれた。ゴーストは光に飲み込まれる。全員が目をつぶり、開けるその瞬間、何やら倒れる音がした。見ると、蓮雄が片手に赤と灰色の剣を持っていた。その剣から感じるのは『殺気』。とてつもない『殺気』がその剣、いや蓮雄からも感じられた。
見て一瞬でわかった。
――こいつは蓮雄ではない。
と。蓮雄ではなく、蓮雄の中に眠る『殺気』がその体を動かし、そして真の力を発揮させた。
ゴースト達の、龍架の標的が一瞬で変わった。数秒固まったあと、すぐに蓮雄に向かって走り出す。蓮雄は立ち尽くすだけ。まるで獲物がくるのを待つかのように。
ゴースト達が次々と攻撃していくが、蓮雄は立ったままものすごい速さでゴースト達を切り殺していく。まるで獲物を捕食するかのように。
しばらく殺してつまらなかったのか、動き出して蓮雄自身から殺しにかかった。動きも剣の振りも人間、いやヘルの何倍も速く、一瞬でそこにいたゴーストは全滅した。
「な、な、なんなのあなた!爆颶蓮雄じゃないんですか!?」
「……」
何もしゃべらない。
ヘルは剣に体重をかけたまま、呆然としていた。ヘルにも何がなんだかわからない。
「くっ!こうなったら!」
と呪符を1枚取り出す。そして、自分の指を少し切り、血をの呪符に垂らす。すると、その呪符が突如緑に光る。龍架はそれを放り捨てる。
地面に着くと同時に光が大きくなる。ヘルは眩しい光に目をつぶる。そして、開けて目にしたのは、超巨大な緑色の
「シャー!」という鳴き声とともに蓮雄に襲いかかる。
蜘蛛は2本足で立ち上がり、6本の足で蓮雄を斬りかかる。
6本をうまく使って攻撃してくるのに対し、蓮雄は剣1本ですべてかわしていた。
ヘルも龍架も目を疑うしかなかった。何も出来ないあのクズ蓮雄が、あのただの人間の蓮雄が巨大な蜘蛛と同等、いやそれ以上に戦っているのだから。
蓮雄はゆっくりと前に進んでいった。そして蜘蛛は後ろに下がっていく。
金属同士の当たる音が鼓膜を震わす。
蓮雄が端に追い込んだ直後、ジャンプして足を6本切り捨て、そのまま胴体を真っ二つにした。
血の雨が降るとともに、蓮雄はそのまま倒れ込む。
これは一体なんなのだろうか?
ヘルと龍架はただぼうと倒れている蓮雄を見ることしかできなかった。
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