第5話 崩壊させる者
・は場所
:語り
・霧島ショッピングタウン
雨が降っていて、タウンの建物のほとんどはつぶれていてたくさんの人が倒れている。
外にある駐車場。救急車のサイレンが響く。叶は雨に打たれながら、ひざまついて泣いている。マキナは何も言わずにそれをずっと見ている。二人の近くには大量の出血で赤くなった少女が倒れていた。少女のポケットからオレンジ色の
詩音:それはあまりにも突然の出来事だった……
詩音:突如、現れた彩無により大勢の人が犠牲になった。軽傷患者300名。重症患者500名。死者600名。彩無は色を奪うことはなかったが、大勢の命を奪った。
数時間前。
時刻は午前8時。本屋でバイトとして、働くことになった叶。更衣室で着替え、店内に入ると店長がいた。
店長「宮城さん、今日からよろしく頼むよー! ……って、なんか顔色悪いけど大丈夫? 」
叶の目の下にはクマが出来ており、顔色も少し悪かった。
叶「だ、大丈夫ですよー。はははははは~。はりきっていきまっしょーい! 」
店長「いやいや、若干深夜テンションだけどほんとに大丈夫? 」
叶「大丈夫ですよ~」
叶:わたしのコンディションがよろしくないのには訳がある。昨晩はあまり寝れなかったのだ。わたしが自ら夜をふかしたわけではなく、この前のように課題をしていたわけでもない。わたしの家に居候している神の使者のせいだ。
・叶の自室
昨晩の出来事
時刻は午前1時。叶は目が覚めた。マキナはまだトラクエを続けている。
叶「マキナ~、あんたご飯食べてからずっとゲームしてるんだからそろそろやめなさいよね~」
マキナ「今、ボスと戦っている! ここで引き下がることなどできない」
叶「そっか。それは仕方ないわね……」
再び、眠る叶。
時刻は午前2時半。叶は目が覚めた。マキナはまだトラクエを続けている。
叶「マキナ~そろそろ……」
マキナ「今、主人公の重大な秘密が明かされた。ここでやめるわけにはいかない」
叶「そっか。それは仕方ないわね……」
再び眠る叶。
時刻は午前4時。叶は目が覚めた。マキナはまだトラクエを続けている。
叶「マキナ……」
マキナ「今、経験値がめちゃくちゃもらえるはぐれ水銀ジェルと戦っている。今は終われない」
叶「そっか。それは仕方ないわね……」
叶は目を閉じて、寝ようとした。
叶「……って、なるかあああああああああああああッ! 」
叶は飛び起きた。
マキナ「かなえ、今は夜中だ。あまりうるさくしてはいけない」
叶「それはこっちのセリフよ! いつまでゲームしてのよ! 」
マキナ「わかった。この戦闘が終わったら、やめるから……それでいいだろ? 」
叶は黙って、ゲームの電源コードが刺さっているコンセントに近づく。
マキナ「かなえ? 」
叶「聞く耳もたんッ! 」
叶は電源コードを引っこ抜いた。テレビの画面が真っ暗になった。
マキナ「おいッ! な、なんてことをしてくれるんだ! 」
叶「うるさい、この廃人ゲーマーが! 夜中に大音量でプレイしやがって! さっきからわたしが何回、注意したと思ってるんだ! あんた、全然やめる気配ないじゃない! おのれはセーブを知らんのか! 」
マキナ「だから今、終わろうとしてたじゃないか! 」
叶「終わろうとするのが遅いのよ! いい? わたし明日……いや、今日バイトなの! 初出勤なの! だから、ゆっくり寝たかったの! 」
マキナ「そんなの言ってくれれば終わってたよ! 」
叶「ご飯のとき言いました~! 聞いてないあんたが悪いのよ! 」
マキナ「あのときはゲームんことしか頭になかったんだよ! 」
ドンと勢いよく、扉を開けて浩二が叶の部屋に入ってきた。
浩二「うるさいぞ! 二人とも今、何時だと思ってるんだ! 」
・霧島ショッピングタウン
現在に至る
叶:それからはお説教で眠れませんでした。
時刻は午前11時半。叶と桃は研修中の札を付けてそれぞれの持ち場で働いていて、叶は教材のコーナーで店長と本の整理をしていた。
そこに宗助がやってきた。
宗助「店長、おはようございます」
店長「おお、不動か。おはよう。そうだ。宮城さーん、ちょっと来てよ」
店長は少し遠くにいた叶に声をかけた。叶は『はーい』と返事し、店長のところに行った。
店長「(叶に向かって)紹介するよ。喜助と同期の不動だ」
叶「宮城叶といいます。よろしくお願いします」
宗助「よろしく」
店長「宮城さん、あとのことは不動に聞いてくれ」
叶「はい、わかりました」
黙々と作業を続ける叶と宗助。
叶(なんか気まずいなぁ……。話しかけた方がいいよね)
叶「わたしは大学二回生で、19歳なんですけど不動さんは何歳なんですか? 」
宗助「お前と同じだけど……」
叶「そ、そうなんだ~」
叶(お前? 初対面の人に? 前にもこんなことがあった気がするけど、まぁいいや)
叶「休みの日は何してるんですか? 」
宗助「何もしてない」
叶「彼女はいますか? 」
宗助「いない」
叶「おすすめの映画とか……」
宗助「ない」
宗助は叶のことなどまったく見ずに、質問に答えた。
叶「はぁ……そうですか」
叶(ちょっとは会話を続かせる努力してよ……)
叶「兄弟とかいますか? 」
宗助の作業をしている手が止まった。
宗助「妹が1人……」
叶「妹か~いいな~。わたし、一人っ子だから羨ましいです」
宗助「あいつはさ、俺のたった一人の家族なんだよ」
叶「たった一人? 」
宗助「俺の家は両親が事故で亡くなったからさ。俺と妹の二人だけなんだよ。俺はあいつのためなら何だってする。あいつの欲しいものはなんだって手に入れる。兄貴だからな」
叶「そうだったんですね……。ごめんなさい。こういう話ってあんまりしたくないですよね」
宗助「いいよ、気にしてないから。そろそろお昼だ。休憩入っていいぞー」
叶「はい」
叶はその場を離れようと歩き出すが途中で止まり、宗助に言う。
叶「不動さん、わたしも妹みたいな子がいるから気持ち……ちょっとわかります。不動さんほどではないですけど、わたしもその子のために何かしてあげたいと思います」
宗助「ならそうすればいい」
叶「はい」
叶はその場を後にした。
宗助「何を犠牲にしてもな……」
宗助は小さくつぶやいた。
叶は本屋から出て、ショッピングタウン内をうろついていた。
叶(不動さん、怖い人かと思ったけどいい人っぽい。仲良くやっていけたらいいんだけど……)
叶は喫茶店に入った。
店員「いらっしゃいませ~。ただいま、込み合っていますのでそちらの席でお待ちください」
叶「はい、わかりました」
叶が店員が示した方を見ると、いくつか席が並んでいてそこには橙果の姿があった。叶と橙果は目が合う。
叶&橙果「あ」
しばらくして、同じ席に座ることになった二人。店員さんがコーヒーとオレンジジュースを持ってきた。
叶&橙果「ありがとうございます」
店員「ごゆっくりどうぞ~」
店員は飲み物をテーブルに置くと戻っていった。
叶「橙果ちゃんはどうしてここに? 」
橙果「はい、少し買い物にと思いまして。かなえさんは? 」
叶「わたしはタウンの本屋で今日からバイトなんだー。で、今は休憩中」
橙果「いいなぁ~アルバイト。わたしは中学生だからバイトできないし」
叶「あと何年かしたら出来るよ。あ、そうだ。橙果ちゃんは霧島詩音って子知らない? 」
橙果「詩音ちゃんですか? 知ってますよ。同じ学校に通ってます」
叶「……ってことは、魔法少女だってことは知ってる? 」
橙果「え、ええっ!? そうなんですか!? 知らなかったです」
橙果は大声を出して、驚いた。そして、店内にいる人の視線を一気に集めた。
叶「声が大きいよ」
橙果「すいません。びっくりしちゃって……」
叶「で、詩音ちゃんってどんな子なの? 一度しか会ったことないからよくわからなくて……」
橙果「うーん……早い話がなんでもできる子ですね」
叶「なんでもできる子? 」
橙果「はい、なんでもできる子です。家はお金持ちですし、頭もいい、スポーツとかもすぐにコツを掴んじゃうような子ですよ」
叶「うっ、なんて恵まれた子なの……。そんな子が魔法少女やってるなら私たちの出番いらないんじゃ……」
橙果「たしかにそうですよねー」
叶「でしょ? 神さまに選ばれたからって理由だけで急に魔法少女やらされるし、それで怖い思いもするし、橙果ちゃんくらいの年齢ならいいけどわたしは19歳だし、あの衣装はきついよ……」
橙果「あははははは……」
橙果は苦笑いした。
橙果「でも、わたしは魔法少女になれて嬉しいですよ」
叶「なんで? 」
橙果「わたし、なにやってもだめだめだったから魔法少女みたいなあんまり出来る人が少ないものを出来るってのが嬉しいんです。それに、人の役に立つことじゃないですか。だから、なおさら嬉しいんですよ」
叶「そっか、橙果ちゃんはそう思ってたのか……。うん、偉いッ! 偉いよ橙果ちゃん! 」
橙「えへへへ、でも怖いのもたしかですけど……」
橙果は恥ずかしそうに笑っている。
叶「こうゆう主人公っぽい子が最終的に強くなるんだよなぁ……」
叶は小さくつぶやいた。
橙果「叶さん、なにか言いました? 」
叶「え、いや、何でもないよー! わたしも頑張らないとな~! 」
橙果「はい、一緒に頑張りましょう! 」
霧島ショッピングタウンにある研究所。大きなモニターがある部屋。画面にはマップと一つの赤い点が映っている。
その部屋には喜助と詩音がいた。
喜助「こいつ気配消してるけど人を襲ったり、暴れたりもしない。いったい何が目的なんだ? 」
詩音「よくわかんないんっすよね~。ウチのレーダーのおかげで反応は出てますけど」
喜助「はやめに叩いた方がいいんじゃないか? そろそろ戦わねぇと体がなまっちまうよ」
詩音「そうですよね~。てかも、体がなまるのは喜助さんがトレーニングをサボるからですよ」
喜助「俺は実戦で光る男であり、本番に強い男だぜ? 訓練? トレーニング? そんなもんはいらねぇよ」
詩音「前者と後者は何がちがうんですか? 宗助さんを見習って頑張ってくださいよ」
喜助「へいへーい」
扉が開き、宗助が部屋に入ってきた。
詩音「(宗助に向かって)おっ、来ましたか」
宗助「今回の奴はどのくらいの力量かわかるか? 」
詩音「んー、わからないですね。まったく」
宗助「ということは? 」
詩音「幻獣種……その可能性は十分ですね」
喜助「彩無の中でも強力な四体だっけか? 」
詩音「ええ、他の彩無とはわけが違います。どうしますか宗助さん? 」
宗助「そんなの決まってるだろ」
宗助は邪悪な笑みを浮かべた。
宗助「ぶち殺す」
喜助「やっぱそうなるわな~」
詩音「それでは仕掛けましょうか……」
詩音と喜助が見ていたマップの場所それは市街地の高層ビルの屋上だった。黒いマントで覆われた男が1人立っている。男は不気味な笑みを浮かべた。
叶と橙果は昼食を終え、喫茶店を出ていた。
橙果「おごっていただいてありがとうございました」
叶「いいよいいよ。この前は手伝ってくれたしね。そのお礼ということで」
橙果「お礼だなんて、わたしがしたいくらいですよ! 初戦闘のわたしからしたら、かなえさんがいてくれてすごく助かったんですから」
叶「まぁ、これからも一緒に戦うことあると思うし、そのときはよろしくね! 」
叶は手を差し伸べた。
橙果「はい、こちらこそ! 」
叶と橙果は握手を交わした。
橙果「そうだ! かなえさん連絡先交換しましょう」
橙果はポケットからケータイを取り出した。
叶「いいよ」
叶もポケットからケータイを取り出した。
・市街地
高層ビルの屋上に黒ずくめの男がいた。男の前に二人の前に仮面をつけた二人の男が現れる。一人は銀の仮面をつけた男。髪色は黒で右耳に銀色の翼のピアスを付けている。もう一人のは銀の仮面をつけた男。髪色は金、左耳に金色の翼のピアスを付けている。二人とも白いマントをまとい、青いラインが入った白い服を着ている。
金仮面「お前、幻獣種なのか? 」
男「その通り。いかにもわたしは幻獣種でございます」
金仮面「じゃあさ、
男「残念ながら
金仮面「(銀仮面に向かって)違うってよ。残念だったな」
銀仮面「そうか。まぁいいさ。
男「余裕ですね。倒せるといいですね。わたしのこと」
金仮面「お前こそ余裕ぶっこいってんじゃねぇか。今に後悔するぜ~」
男「そうですか。それは楽しみだ」
男の顔めがけてナイフが飛び、男は回避した。ナイフを投げたのは銀仮面だった。
銀仮面「くだらない話はもういいだろ? 始めるぞ」
銀仮面は男に迫る。
金仮面「お、おい。ったくしょうがねぇなぁ! 」
金仮面は金槌を取り出した。
銀仮面「
銀仮面の右手に片手剣が現れ、それで切りかかる。しかし、男はそれを避けて距離を取った。銀仮面は何度も何度も剣を振るが、男には当たらない。
男(カードの魔法じゃない。だとすると本物の魔法使いか)
金仮面「こいつでッ! 」
金仮面はくぎをいくつか空中にばらまき、金槌で打った。打たれたくぎはランスになり、男めがけて飛んで行った。
男は三つのランスを避ける。しかし、まだランスは飛んでくる。男の手首から血液が飛び散り、それが赤い鎌になった。おとこはそれでランスを薙ぎ払った。
金仮面「さすが幻獣種。簡単には倒せそうにねぇな」
男「では次はこちらから……
男の持っている赤い鎌が刃に炎をまとった。男が鎌を振ると炎の斬撃が二人をめがけて放たれ、爆発が起きた。
・霧島ショッピングタウン
本屋で叶は本を並べていた。
叶(不動さん、早退したらしいけど大丈夫かなぁ……)
地震が起きて、少し建物が揺れる。本棚が倒れ、人々はしゃがんで頭を守った。揺れが収まり、警報がなった。
叶「何がおきてんのよ……」
店内がどよめている。店長が叶の元にやってきた。
店長「宮城さん、大丈夫? 」
叶「わたしは大丈夫ですけど……何が起こったんですか? 」
店長「僕にもよくわからないんだよ。とにかく警報が鳴ってるからお客さんを誘導させつつ外に出よう」
研究所。大きなモニターのある部屋。詩音が1人でいた。
詩音「今の揺れはいったい? 」
二人の仮面と黒ずくめの男が戦っている映像からマップの画面に切り替わり、赤い点が現れる。
詩音「この反応……。まさか!? 」
タウンのスポーツ施設。ここに何かが落ちてきた。落ちた場所は煙が立ち込めている。人々はざわついていた。
男性A「なんだ? 隕石か? 」
男性Aが何かが落ちてきた場所に近づくと何かに首をはねられた。落ちた首を何かが踏みつぶした。
女性A「きゃあああああああああああああああ」
それを見た人々は逃げていく。男性を踏みつぶした何かは斧をブーメランのように投げた。投げられた斧が次々と逃げる人々の首をはねる。煙の中から出てきたのは牛のような顔をした男だった。
牛男「貴様らは戦士ではない。我が探すのは戦士だ。弱きものは死ね。現世に何も残せずして死ね」
牛男は歩き出す。
・叶の自室
マキナが1人でゲームをしている。
マキナ「よしっ、もう少しでラスボスだ! 」
マキナは何かに気づいた。
マキナ「彩無が来たか! 場所は……この場所はかなえの!? 」
・霧島ショッピングタウン
叶は警備員と共に客を誘導して、外に出ていた。人々はショッピングタウンの出口を目指して歩いている。
叶が列の後ろの方を見ると、ビルの一つが倒れ、崩れた。一つまた一つと遠くのビルが崩れていき、崩れていくビルが近く鳴るにつれて銃声が聞こえてくる。
人々は急いで出口の方へ走った。叶は人にもまれて列の横に出てしまった。
叶「な、なんなのよ……何が起きてるっていうのよ! 」
マキナ(かなえ! かなえ、無事か? )
叶の頭の中にマキナの声が響く。
叶「えっ、マキナの声が聞こえるんだけど……なんで? 」
マキナ(細かいことはいい! それより今、ここに……)
列の後ろのほうから悲鳴が聞こえてくる。悲鳴や何かが走っている音でマキナの声がよく聞こえなかった。大勢の人々が何かに突進されて宙に舞っている。突進してきた何かが止まって、叶の方を見た。
牛男「見つけたぞ、赤の魔法少女」
マキナ(今、お前がいるところに彩無が出た! それも今まで戦った相手よりも強い彩無だ)
叶「そう……みたいね。今、わたしの目の前にいるわ」
・市街地
高層ビルの屋上。二人の仮面と男はまだ戦っている。
喜助「いっけー! 」
喜助は宙にくぎをばらまき、金槌でそれを打つことでランスにして、男に向かって飛ばした。
男は飛んでくる無数のランスをかわし、喜助に近づく。
男「ワンパターンですね」
男は微笑んで喜助にまわし蹴りを決める。わき腹をけられた喜助は一瞬、ひるむが蹴った足を掴んだ。
金仮面「残念……だったなッ! 」
つかんだ足を金槌で思いっきり叩こうとした。
男「
男の足から血があふれ出して足を包んで、鉄の足になった。金仮面は金槌で足を叩いたがビクともしない。
銀仮面「その足を離せ! 」
金仮面「えっ? 」
男は回転して、逆の足で金仮面の顔面を蹴った。
金仮面「くっ……」
金仮面はふらついて手を放した。男は鎌で切りかかろうとしたが、銀仮面が割り込んできた。
詩音(喜助さん、宗助さん)
二人の仮面の頭に詩音の声が聞こえた。
金仮面「なんだよ、詩音ちゃん。こっちいま取り込み中なんだけど。いてててて……」
金仮面は頭を押さえている。
詩音(まずいことになりました。別の彩無がこっちに攻めてきました。どちらか帰ってきてもらえませんか? )
金仮面「はぁ~? そんなの無理だって。詩音ちゃんが戦えばいいだろ」
詩音(それが出来ればやってますよ。宗助さんに
銀仮面は詩音の話に聞く耳持たず、戦っている。
男「始まりましたか」
銀仮面は片手剣で切りかかるが赤い鎌で防がれ、つばぜり合いになる。
銀仮面「全部、お前が仕組んだことか? 」
男「さぁ、どうでしょうね~。どうであれ、二人ともここから逃がすつもりはありませんが」
男は銀仮面の背後に瞬間移動し、銀仮面を蹴り飛ばす。
・霧島ショッピングタウン
目が合う牛男と叶。地面には牛男にはねられた人たちが倒れている。それ以外の人はタウンから非難した。この場にいるのは叶と牛男だけ。
マキナ(僕は今そっちに向かってる。なんとか耐えてくれ)
叶「耐えろって、そんな無茶な……」
牛男「何を一人で喋っている? 」
叶「な、なんでもないわよ! それよりも、わたしを探してたってどうゆうこと? 」
牛男「ある者にお前を殺せ……いや、痛めつけろと頼まれてな」
叶「ある者って誰よ? 」
牛男「それは答えられないな」
叶は出口の方へ走り出した。その様子を見た牛男はドンと地面を踏む。少し地面が揺れ、叶は倒れた。
叶「くっ……」
倒れた叶に牛男はゆっくりと迫った。叶は牛男を見上げた。
牛男「なぜ逃げる? 戦わないのか? 魔法少女よ」
叶は黙り込む。牛男は手に斧を生み出して、つかんだ。
牛男「命まで奪うつもりはない。痛みは一瞬だ」
牛男は斧を振り上げた。どこからか
橙果「無事ですか? かなえさん」
橙果は
叶「橙果ちゃん! 」
橙果「彩無の反応があったから来ました! もしかして、マキナさんがいないから
叶「そうなんだよ。でも、今こっちに向かってる! 」
橙果「ってことは、わたしの仕事はそれまでの時間稼ぎってことですね! 行ってくださいかなえさん! 」
爆発の煙が消え、無傷の牛男が出てくる。
叶「マキナによると、あいつかなり強い彩無らしいから無理だけはしないでね! わたしも出来るだけすぐに戻ってくるから! 」
叶は出口の方へ走っていった。
牛男「(橙果に向かって)少女よ、いい目をしているな。戦士の目。強い意志の表れだ」
橙果「ありがとうございます。でも、あなたを倒します! 」
牛男「そうか。なら、名乗らせてもらおう。我の名は
橙果は杖を構える。
橙果「やれるものならッ! 」
橙果は闘牛に向かっていく。
・市街地
高層ビルの屋上。黒ずくめの男から放たれる無数の炎の斬撃をかわす二人の仮面。
金仮面「くそっ! 野郎、時間稼ぎに徹しやがったな! 」
男「あなた方がよけてばかりだから、時間稼ぎになるのですよ」
銀仮面「たしかにその通りだ。なら、全力で行かせてもらうッ! 」
銀仮面は
銀仮面「(金仮面に向かって)頼む! 」
金仮面「あいよ! 」
金仮面が金槌で屋上を叩くと魔法陣が現れ、広がっていく。男の立っているところまで魔法陣が広がった。
男「なに!? 」
男は動けなくなった。
銀仮面が片手剣を振った瞬間、二人の仮面の前方に大きな氷の塊出現し、屋上の半分くらいが覆われた。
男は体に炎をまとい、氷を砕いて脱出して宙に浮いた。
男「魔法少女でもないのになぜ彩無の魔法を? さてはあなたたち……」
男の前に銀仮面が現れる。
銀仮面「終わりだ」
銀仮面は片手剣で男の胴体を真っ二つに切り裂いた。
男「ぐはあああああああああああああああああ」
金仮面「容赦ねぇな~」
男「まったくですよ」
落下していく男はそうつぶやいて笑った。
銀仮面「なに!? 」
男「残念でしたね。もう少し時間稼ぎをさせていただきます」
真っ二つにされた男の体が爆発し、大量の血が噴き出す。その血が建物を覆う赤い結界となった。
氷の上に着地する銀仮面。
銀仮面「クソッ、やられた! 」
銀仮面は片手剣を屋上に叩きつけた。金仮面が結界に触れると電撃が走った。
金仮面「痛って、どうすんだよこれ……」
・霧島ショッピングタウン
叶は駐車場を走っていた。さっきまで晴れていた空は曇ってきた。
マキナ「かなえー! 」
空からマキナの声がして、叶は空を見上げると杖になったマキナが落ちてきた。それを叶はつかんだ。
マキナ「よかった、無事だったか」
叶「わたしは大丈夫だけど、橙果ちゃんが戦ってるからはやく行かないと! 」
闘牛「その必要はないッ! 」
駐車場に停めている車を片手で薙ぎ払いながら闘牛が走ってきた。そして、叶の前で止まった。
叶「なんであんたがここに!? 橙果ちゃん……橙果ちゃんは? 」
闘牛は手に持っていた赤い何かを叶の前に放り投げた。
叶「えっ……」
叶はその赤い何かを見た。それは人間だった。ボロボロになった服、まるで頭から赤いペンキを被ったように大量の出血で赤くなった体。その顔はあきらかに橙果だった。
雨が降った。雨が橙果に当たり、アスファルトに血が広がった。
叶「ウソでしょ……。こんなのって、こんなのって……」
叶はひざまついた。
マキナ「おい、しっかりしろ! かなえ、かなえ! 」
叶は喫茶店にいたときの橙果の笑顔を思い出す。今、目の前にいる橙果の顔をを見た。叶はマキナを手放した。
叶:わたしはわかっていた。わかっていたはずなのに二度の戦闘で上手くいったから、どこかでなんとかなるだろうと思っていた。
叶:今、目の前にある光景は自分にも起こり得る光景なのだと理解した。あんな姿になりたくない。そう思った瞬間からわたしは目の前にいる彩無に、橙果ちゃんに、これからわたしを待ち受けるものに恐怖した。魔法少女の使命である彩無の封印。そんなことなど頭から抜けていた。
叶「いや……いやあああああああああああああああああ」
(つづく)
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