第3話 ほうき通学
・は場所
語りと地の文で見分けがつきにくいところには語りに:を入れています。
・宮城家 叶自室 翌朝
机で寝落ちしていた叶が目を覚ます。
叶「もう朝か……」
叶はベットの方を見ると、白いパジャマが綺麗にたとまれて、おいてあった。叶は昨晩の出来事を思い出す。
叶(そういえば、わたし……魔法少女になったんだ……)
叶は自分の頬をつねった。
叶(痛い……。夢じゃないんだ……)
ここから叶の語り
どうも、おはようございます。
なんとか
・宮城家 玄関 昨晩
叶:たしか11時くらいだったと思う……。マキナを背負って家に着いたのは。
マキナを背負っている叶。マキナも叶もびしょ濡れだ。
叶「ただいま~」
『おかえり~』と言いながら青い着物を着た中年の男性が玄関に来る。彼の名前は
浩二「おいおい、ずいぶん遅かったじゃないか~! ……って、びしょびしょじゃないか! 雨でも降ったか? 」
叶「えっと……まぁ、いろいろあったんだ。ごめんね、帰り遅くて」
浩二「その背中の子がマキナちゃんか? はじめまして! かなえの父で~す! これからよろしく~! 」
マキナの返事はない。
浩二「あれ? これ初対面で嫌われちゃった感じ? おじさん、ショックだな~」
叶「気にしないで。今は寝てるだけだから」
浩二「そうかそうか。そんなびしょびしょだと二人とも風邪ひくぞ。風呂入っちまえよ」
そういって浩二は戻ろうとした。
叶「うん。あっ、そうだ。マキナの荷物とか届いてたりする? 」
浩二は足を止め、振り返る。
浩二「そういやなんか届いてたな」
叶(よかった。手ぶらで来たわけじゃないんだ……)
叶「だったら、下着とパジャマ取ってきてくれない? 」
浩二「わかった」
・お風呂
叶は片手でマキナの体を抑えながら、マキナの頭を洗っている。マキナは眠っている。叶は頭を洗う手を止めた。
叶「なんで、わたしがこんなことしなくちゃいけないのよ。マキナ、頼むから起きてよ! 」
まったく反応がない。叶はため息をついて、マキナを立たせ、湯船につからせた。そして、自分の体と頭を洗った。洗い終わって、湯船の方を見るとマキナの姿がない。
叶「え……? 」
叶は湯船の中を覗き込んだ。マキナは湯船に沈んでいた。
叶「やばい! 」
叶は急いで、マキナを湯船から出した。マキナの肩を持ち体を揺らす。
叶「マキナ! 大丈夫? 」
マキナ「ぐー……すかー……ぐー……すかー……」
マキナはいびきをかきながら寝ている。
叶「心配して損した……」
浩二「着替え、ここに置いとくぞ~」
風呂の外から浩二の声がした。
叶「うん! ありがとう! 」
・洗面所
叶は風呂からあがり、部屋着に着替えた。叶はタオルで、マキナの体を拭き、浩二が持ってきた下着とパジャマを着させた。
マキナは眠っている。マキナのパジャマは白でところどころに、かわいらしいクマの絵が入ったものだ。
叶「よっこいしょ! 」
叶はマキナをお姫様抱っこした。
叶(今後、
叶は洗面所から離れて、リビングを通って自室に向かった。
・リビング
リビングに行くと浩二がいた。
浩二「父さんもう寝るから、腹減ったら冷蔵庫てきとーに漁ってくれ」
そういって父は自室に向かった。
叶「はーい」
・叶の自室
叶は自室に入ると、マキナをベットに寝かせた。叶はベットに座って、マキナの顔を見た。
叶「神の使者とか言ってたけど、やっぱり普通の女の子にしか見えないなぁ……」
叶は人差し指でマキナの頬を突っついた。マキナは寝返りをうった。
叶「ふふっ……」
叶は少し微笑んだ後に立ち上がった。そして、別の部屋から布団を持ってきて敷いた。
叶はスマートフォンを見た。桃から三時間前にNINEに新着メッセージが入っていることに気づいた。
叶(えっ、桃から!? しかも、まだ戦ってたときに……)
叶は慌てて、メッセージを開いた。
「お店の近くで火事だって! 買い出しで出てたんだけど通行止めでお店に戻れません(*´Д`) 帰りまーす(笑) 課題ガンバ! 」という内容だった。
叶「よかったぁ……。無事だったんだ……」
叶は電気を消して布団に入った。そして、目をつむった。ふと、叶の頭に桃が送ってきた内容がよぎった。
叶「そうだ、課題だ! おもいっきり忘れてた! 」
叶は飛び起きた。
・叶の自室
午前三時(テロップ)
叶は黙々とレポートを書き進めていく。
マキナは眠っていて、夢を見ている。
何もかもが灰色の世界、廃れた街、灰色の空、路地にはたくさんの死体が放置されている。そんな場所にマキナはいた。
マキナ「ここは……どこだ……? 」
少女が助けを求めて、泣き叫ぶ。しかし、その声は聞こえない……。
少女の方へ向かおうとしたマキナを七人の魔法少女が囲んだ。彼女たちの顔はよく見えなくて、口だけが見える。マキナに向かって何かを訴えている。
しかし、聞こえない……。
マキナ「おい、何が言いたいんだ? 聞こえないよ……」
それでも彼女たちは訴える。
マキナ「聞こえない……。聞こえない……。聞こえないって! 」
彼女たちは黙った。そして、消えた。
マキナは少女の方へ向かった。少女はしゃがみこんで、泣いている。
マキナ「どうした? 大丈夫か? 」
マキナは手を差し伸べたが、その手は払われた。少女はゆっくりと顔を上げた。その顔に皮膚はなく、人体模型のように血管がむき出しで、目には眼球がなく、底なしの闇があった。マキナは驚いて、その場にしりもちをついた。
「……せいだ……」
少女は何も発していないのにマキナの頭には声が響いた。
「……お前のせいだ……」
「……お前のせいで、亡くなった……」
声の主は少女だけではない。そもそも、少女が発しているのかわからない。
「お前がいなければ……」
「あんたのせいよ……」
「みんな、みんな……亡くなった……」
「君のせいだ……」
様々な声がマキナの頭に響く。
マキナ「なんなんだよ……ぼくが何をしたっていうんだよ……」
それを聞いて少女がしゃべりだす。
少女「お前はやがて自分の罪に気づくだろう。この世界がこんな風になったのはお前のせいだ。すべてを思い出したとき、お前は過ちを繰り返すのか……? それとも……」
少女は立ち上がり、この場から立ち去ろうとした
マキナ「ぼくの罪ってなんだよ! おい、ちゃんと説明しろよ! おい! 」
マキナは何かに気づいて、上を見上げた。上から伸びてきた黒い手がマキナの顔をつかんだ。
以上、マキナの夢
マキナ「うわぁああああああ! 」
マキナは飛び起きた。
マキナ「夢か……」
叶はベットに座っていた。
叶「どうしたの? すごいうなされてたけど……悪い夢でも見た? 」
マキナは叶から目をそらした。
マキナ「……別に……」
叶「そっか……ならいいや……」
マキナは周りをキョロキョロと見回した。
マキナ「ここはかなえの部屋か? 」
叶「そうだよ。ここはわたしの部屋。ちなみに今は夜中」
マキナ「意外ときれいだな……。かなえの部屋……」
叶「意外とは何よ! 意外とは! 」
マキナ「もしかして、ここまでぼくを運んでくれたのか? 」
叶「そうよ。マキナ背負って、家まで帰ってきてお風呂にも入れたし、服も着替えさせた」
マキナは自分の来ている服を見た。
叶「意外と可愛いパジャマ着てるんだね、マキナって」
マキナ「うるさい! 意外とは何だ! 意外とは! 」
叶「まぁまぁ、そう怒りなさんな」
しばらく時間が経った。
叶は机でレポートを進めていて、マキナはベットで叶のアルバムを見ている。
叶「あんた、もう寝たら? 」
叶はレポートを書きながらマキナにそう言った。
マキナ「寝ようと思っても、寝れないんだ。あれだ。昼寝した日の夜はなかなか眠れないみたいな」
叶「何しても起きないあたり、あれは昼寝というより死んでるみたいな感じだったよ」
マキナはアルバムを見ていて、何かに気づいた。
マキナ「かなえの家は父子家庭なのか? 」
叶「違うよ。お母さん、考古学者で年がら年中世界を飛び回ってるから家にいることがあんまりないんだよね」
マキナ「写真もかなえとかなえの父親の映ったものしかない」
叶「そうだよ。忙しいのもあるんだけど、お母さん写真嫌いだったから……。マキナの家族はどんな感じなの? 」
マキナ「ぼくの家族? 家族というのが一つ屋根の下、ともに暮らしてきた存在という定義ならぼくには家族はない」
叶「神さまは家族じゃないの? 」
マキナ「家族じゃない。ぼくに何かを教えてくれる先生のような存在だ」
叶「ふーん、そうなんだ。だったら……」
叶は振り返って、マキナの方へ持っていたボールペンを向けた。
叶「あんたは今日から、わたしたちの家族の一人だ。位置的にはわたしの妹」
マキナ「そうなるのか? 」
叶「うん。なっちゃうなっちゃう! 」
叶はまた机の方向いた。
叶「だから……何かあったらいいなさいよね」
マキナ「うん……。わかった」
叶は少し微笑んだ。
叶「いい加減もう寝なよ」
マキナ「そんなこと言われてもだなぁ……」
叶「羊でも数えてればそのうち寝れるわよ。……たぶん」
マキナ「ほんとか!? 」
マキナは布団を被り、目をつむった。
マキナ「羊が一匹……羊が二匹……羊が三匹……」
叶は振り返ってマキナの方を見た。
叶「ごめん、ウソウソ。そんなんじゃ眠れないよ。……って、あれ……? 」
マキナはぐっすりと眠っていた。叶はマキナに近づく。
叶「効果抜群かよ……」
叶はマキナを起こさないように小さくそうつぶやいた。
叶「おやすみマキナ」
・宮城家 叶の自室 朝
叶:ってなわけで、今に至る。課題はなんとか終わった。よく頑張ったわたし。えらいぞわたし。
叶「今、何時だろ? 」
叶は目をこすって、スマートフォンで時刻を確認する。時刻は8時。
叶「やばい! 寝すぎた! 」
叶:一難去ってまた一難ってやつですね。ほんと勘弁してください……
・リビング
マキナと浩二はテレビを見ながら朝ご飯を食べている。ズカズカと足音を立てて、叶が来た。
叶「ちょっと! なんで起こしてくれないの?」
浩二「だって、気持ちよさそうに寝てたからなぁ……それを起こすのは酷な気がして……」
叶「最悪……。ほんと最悪……」
叶は急いで自室に戻り、学校に行く準備を済まして再びリビングに現れる。
叶「マキナ、わたしが帰ってくるまでは家から出ないでね! 」
マキナ「わかった……」
叶「帰ったら、マキナの荷物整理手伝うから。それじゃあ、行ってきまーす! 」
叶は玄関にむかおうとすると
「現在、藤巻駅は昨晩の火災の影響で利用できません。通勤の際は注意してください」とテレビから聞こえた。
叶はテレビを見た。
叶「えっ……なんで? 」
浩二「なんか放火らしいぞー。電車が通る分には問題はないが、乗り降りは出来ないらしい……」
叶「そんなの遅刻確定じゃん……」
叶はうつむいてゆっくりと玄関の方に向かった。
マキナ「いってらっしゃい……」
叶は玄関で靴を履いた。
叶「最悪だ……。魔法少女になってから、ろくなことがない……」
叶はドアを開けた。
叶(ん、魔法少女? そうだ、魔法少女だ! )
叶は再びリビングに走った。
マキナ「ごちそうさまでした」
浩二「マキナちゃん、おいしかったか? 」
マキナ「味噌汁なるものはなかなか美味だった」
叶がリビングに来た。
浩二「お前、まだ行ってなかったのか? 」
叶はマキナの腕をつかんだ。
マキナ「なにを……」
叶「いいから来て! 」
叶はマキナを連れて家を出た。
・マンションの廊下
マキナ「なぜ、ぼくを家から出す? かなえが帰ってくるまでは家を出ては……」
マキナの話の途中で叶が両手でマキナの肩をつかんで顔を見た。
叶のは引きつった笑顔でマキナを見つめる。
叶「マキナ~いや、マキナちゃ~ん」
マキナ「なんか目が怖ッ……」
叶はマキナの話の途中でマキナの肩を持った手に力をいれた。
叶「魔法で乗り物とか出せないかな~? 」
叶はマキナに顔を近づける。
マキナ「顔近い、顔近い」
叶「あ、ごめんごめん」
叶はマキナから手を放した。
マキナ「ないこともないが……」
叶「あるんだやっぱり! よしっ、さっそく
マキナ「しかし……」
叶はマキナをにらんだ。
叶「今日の夕飯はわたしが作ることになってるんだけど……この意味わかるわよね? 」
マキナはため息をついた。
マキナ「わかったよ……」
マキナは杖になった。叶は杖を手に取り、デッキから
「あら叶ちゃん、おはよう」
叶は後ろから声がして振り返った。ゴミでパンパンになったゴミ袋を持ったおばさんが立っている。叶は杖とカードを後ろに隠した。
叶「お、おはようございます! 」
おばさん「今日はずいぶん遅いわね~」
叶「あはは……ちょっと、寝坊しちゃって……。あ、ごめんなさい道ふさいじゃって」
叶は廊下の端によった。
おばさん「いいわよ。それより、学校遅れないようにね」
叶「はい」
おあばさんは叶の横を通り過ぎて、非常階段で降りて行った。
叶「危なかったぁ……」
叶はキョロキョロとあたりを見わたした。
叶「それじゃあ、気を取り直して……」
叶はカードを杖の先端にある目にかざした。
目が輝き、カードは消えた。
叶「
叶がそう叫んだ瞬間、叶の体は赤い光に包まれた。叶の髪は赤くなり、魔法少女になった。
叶「で、なんてカード? 」
マキナ「やめておいた方が……」
叶「いいから、はやく教えて! 」
しばらくマキナは黙った。
マキナ「
叶は
カードを杖の目にかざすと目が輝き、白いほうきのようなものが現れた。それにはスラスターがついていて、宙に浮いている。
叶「これが……
マキナ「とりあえず乗れ……使い方はそれから……」
叶は腰にある杖用のいれものに杖を入れ、
叶「こうでいいの? 」
叶「ちょっ! 勝手に動いてるんだけど!? 」
叶「うわ、うわああああああああッ! ちょっと、ちょっと! どうなってんのよこれ! 」
マキナ「こうなる気がしてたんだよ……。僕は……」
叶「勝手に動かないで! 止まって! 止まってってばっ! 」
叶「今度はどこ行くのよおおおおおおおおおおッ! 」
落下していく先はマンションの駐車場。車が三台止めてある。
叶「ぶつかるううううううううううッ! 」
車にぶつかりそうなところで、
・大路地
多くの自動車やバイクが走っていて、叶はその上を
叶「やっと大人しくなったけど……視線がきつい……」
マキナ「かなえ、前見たほうがいいぞ……」
叶は前を見た瞬間、顔だけ標識にぶつかった。そして、片手で顔を抑えた。
叶「いっ……たぁ……」
叶「ちょっ、また!? 勘弁してよおおおおおおおおおおッ! 」
・川
叶「こら! いうこと聞け! 大学の方に行け! 」
叶が
叶「ぐぶっ……ぶぶぶぶぶうっぶぶぶぶ……」
マキナ「あまり、こいつの機嫌をそこねないほうが
いいぞ……」
叶は黙ってうつむいている。
叶「もういや……。魔法少女なんて……魔法少女なんてやめてやるッ! 」
叶の叫び声は響いた。
・大学 食堂 昼
一つの机に桃が座っていて、反対側には叶とマキナが座っている。マキナは眠っている。
桃「課題、提出できてよかったね」
叶はうつむいている。
叶「うん、よかった……。ちょーよかった……」
桃「いや、全然よかった感ないよ? かなえちゃん」
叶「えへへ……。そうかな? 」
マキナはハッと目を覚まし、キョロキョロとあたりを見回した。
マキナ「ん? ここはどこだ? 」
叶「お目覚めですか眠り姫。ここは大学の食堂ですよ」
くたびれた顔でそう言った。
マキナ「そうか。かなえ、ぼくはお昼ご飯にケパブを希望する」
叶「そんなもんないわよ。……っていうかなんでケパブ? 」
マキナ「パパ殿が今朝、テレビのケパブ特集を見て言っていたんだ。若いころ、ママ殿とデートのたびにケパブを食べていたと……。だから、食べてみたくなった」
マキナ「そっか……。今度、連れて行ってあげるから今日は別のもので我慢して」
桃「さっきからかなり気になってたんだけど、その子は誰? 」
叶「えっ、あ、えっと……この子は」
マキナ「ぼくの名前はデウス・マキナ。神の……」
叶はマキナの足を踏んだ。
マキナ「痛ッ! 」
叶「あはははは……この子は親戚の子で、しばらく預かることになったんだ。そうだよねマキナ? 」
マキナ「何を言っている? ぼくは神の……」
とマキナが言いかけたところで叶はマキナの足を踏んだ。叶はマキナの顔をにらんだ。
桃「神の? 」
叶「か、紙の名産地で有名なところから来たんだよ! 」
桃「そ、そうなんだ……。神の名産地ってどこだったかな~? 」
・大学 廊下 昼
叶たち三人は昼食を食べ終え、食堂を出た。
叶「今日は用事があって早く帰るから一緒に帰れないんだ」
叶は桃にそう告げた。
桃「わかった。あ、かなえちゃん次のバイト決まった? 」
叶「まだ決めてないけど……」
桃「店長が店が治るまでのバイト先を一つ紹介してくれてて、かなえちゃんと行っておいでって。詳しくは、また連絡するね」
叶「うん、ありがとう」
叶はマキナを連れて次の講義の場所へ向かった。
・叶の家 リビング 夕方
叶とマキナは次々と三つの段ボール箱の中から、マキナの私物を取り出して叶の自室に持って行った。マキナが叶の部屋からリビングに荷物を取りに帰ってきた。
マキナ「ぼくは神の使いであることを言うべきではないのか? 」
叶「言うべきではないわね。わたしは言ってほしくはない」
マキナ「なぜだ? 」
叶「変な子だと思われるからよ! あと、わたしが魔法少女だってことも言わないでよ? いい? 」
マキナ「心得た……」
叶(ほんとにわかってるの~? 友達にわたしが魔法少女だって暴露しないでよ~? )
叶は段ボール箱の中からDVDを取り出した。
叶「なにこれ? マキナ、これなにかわかる? 」
マキナ「それは神さまからのメッセージだ。見ておいた方がいい」
叶「ふ~ん……」
叶はDVDをレコーダーにセットして再生した。DVDの映像には天界にいる神さまが映った。
叶「マキナ、これが神さま? 」
叶はテレビの画面に指をさしてそう言った。
マキナ「そうだ。ぼくらがいる世界の神さまだ」
タオは咳ばらいをした。
タオ「えっと、きみは宮城叶くんだね? はじめまして、この世界の神をやっております。名をタオと言います。タオちゃんって呼んでね~! よろしく~! 」
タオ「今日は魔法少女について具体的に説明したいと思う」
タオ「
タオ「
タオ「この世界で封印が解け、奴らは現れた」
タオ「例外はあるけど基本、
タオ「魔法少女を決めるのはわたしではない」
タオの手に光の粒子が集まり、それは一枚のカードとなった。
タオ「このカードが魔法少女を決めるんだ」
そのカードは
タオ「ぶっちゃけ、どうゆう基準でこいつが選んでるのかはわからないんだけどね……。神さまもお手上げってわけよ」
タオ「ではでは、そろそろお開きと行きましょう! かなえくん、マキナのことは頼んだよ! 」
タオ「あと、このDVDは終了と同時に爆発するようになってるから! てへぺろ~! 」
叶「はぁ!? なにその極秘依頼仕様ッ! 迷惑なんですけどッ! 」
マキナ「とことん仕様にこだわる人なんだよ。いや、人じゃなくて神か……」
DVDが終了した。それと同時にDVDは爆発し、その影響でレコーダーが粉々になった。
叶「……そのレコーダー高かったのに……最悪だ……」
マキナ「神さまが言ってないことがある」
叶「……なに……? 」
マキナ「叶が選ばれたことについて言っておかなければならないことがある。魔法少女ってのは小6~中3までが対象のはずなんだ。なんでかわかるか? 」
叶「わかんないわよ、そんなこと」
マキナ「対象の年齢を過ぎると、力が衰えてくるんだよ……。魔法少女としての力がな」
叶「それが衰えると、どうなるのよ? 」
マキナ「魔法の効果が弱くなる……」
叶「じゃあ……。なんでわたしをあのカードは選んだのよ」
マキナ「わからない。だが、これだけは言っておく……。叶はそもそも補欠の魔法少女だったんだ」
叶「補欠? 」
マキナ「本当は、叶ではなく別の少女が選ばれるはずだったんだ。だけど、それが出来なくなってしなったから叶が選ばれた」
叶「補欠ってわたし以外にもいたんじゃないの? 」
マキナ「ああ、いたさ……。だけど、カードが選んだのは叶だった。なぜカードが賞味期限の切れたオバサンなんかを選んだのか……。ぼくにはわからない。熟女好きだったのかな……」
叶「今、サラッとひどいこと言ったよねぇ? さりげなく私に喧嘩売ったよねぇ? 」
マキナ「叶だけでは戦うのは難しい。そう考えたぼくは神さまに頼んで、下界に来たというわけだ……。叶と一緒に戦うために」
叶「いいこと言って、さっきの失言なかったことにしてるよね? 無駄だからね? わたし絶対許さないからね? 」
浩二「ただいま~! 二人とも喜べ! 今日の晩飯は焼肉だぞ~ってなにこれ? 」
リビングにに入ってきた浩二は壊れたDVDレコーダーを見た。
叶「あっ……。これは……ちょっと理由がありまして……」
マキナ「叶が壊したんだ……」
叶「ちょっと、マキナ! 」
浩二は笑顔で叶を見た。
叶:このあとめちゃくちゃ怒られました。
・翌日 朝 叶の自室
叶が布団で寝ている。
マキナ「おい、かなえ! おきろ! 」
マキナは叶の体を揺らした。叶は目を覚ました。
叶「なに……? もう少し寝させて……」
叶は寝返りをうって、二度寝しようとした。
マキナ「
叶はマキナの方を向いた。
叶「……えっ……? 」
・大路地
時刻は6時、叶とマキナは大路地に着いた。しかし、いつも通りの風景だ。
叶「
叶とマキナは周りを見回した。
マキナ「あそこだ! 」
叶が指さした方は、道路を隔てて、向こう側の歩道だった。そこには会社に向かう女性を何度もしつこく話しかけている男の姿があった。
髪型は坊主、上半身は裸、下はジーンズをはいている。靴は下駄を履いている。肌の色は灰色だ。
叶「
マキナ「どうだっていい! かなえ、
叶「う、うん! 」
マキナは杖に変わった。叶がマキナをつかんだ瞬間、叶の腰にカードデッキが現れる。叶はデッキから
叶「トランッ……」
叶は前の戦闘で変身した時のことを思い出した。大通りには昼間ほどではないが人がいる。叶は目に入ったコンビニに向かった。
マキナ「どうしたんだ!? 」
叶「あのままだと、道端で全裸を披露すすることになんのよ!
・コンビニ
叶はコンビニに入った。
店員「いらっしゃいませ~」
叶「お手洗い借ります! 」
店員「どうぞ! 」
叶がトイレに駆け込んでドアを閉めた瞬間、トイレが赤く光った。店員はトイレの方を見た。
店員「なにかしら? 」
トイレの扉が開き、
叶「お手洗いありがとうございました! 」
店員「い、いえ~」
叶はコンビニを出た。
店員「あんなお客さん来たかしら? 」
・大路地
叶は再び大通りに出た。向こう側の歩道に
叶「おりゃああああああああああッ! 」
叶は車道を飛び越え向こう側の歩道に着地した。そして、ニッコリと笑って杖に視線を向けた。
叶「いや~意外と出来るもんね。オバサンでも」
マキナ「まだ怒ってるのか? 」
叶「当然」
叶は杖を
叶「覚悟しなさい! 魔法少女……」
叶「ちょ、ちょっと! 最後まで聞きなさいよ! 」
叶は
叶「こら! まちなさいよおおおおおおお! 」
叶が
少女「やるんだ……。わたしも……。自分を変えるんだ……」
小さくそうつぶやいた。
(つづく)
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