第7話 決戦
・は場所
:は語り
・工場地帯
叶を抱きかかえている銀仮面。黒い影のようなものに体の自由を奪われている
黒ずくめ「い、今の一瞬……何が起こったと言うんだ……」
黒ずくめは傷を押さえながらゆっくりと立ち上がった。
銀仮面は叶を落とした。
叶「(銀仮面に向かって)ちょっとあんた! 」
銀仮面「ふんっ……」
叶「ふんってなによ! ふんって! 」
詩音「(黒ずくめに向かって)名前は存じ上げませんが場所を移しませんか? ここはお取込みのようなので」
黒ずくめ「いいでしょう。宮城叶の前にまずはあなた方三人を……(目つきが変わる)始末するとしましょうか」
黒ずくめの男は黒いオーラをまとい、飛んで行った。
詩音「ではでは、お二人とも行くとしましょうか。あ、そうそう。(叶を見て)この前はすいませんでした諸事情で駆けつけることが出来ませんでした」
叶「そんなこと全然気にしてないよ」
詩音「そうですか。なら一つお願いしていいですか? 」
叶「お願い? 」
詩音「はい、お願いです。タウンの施設を壊されたことで私の家には大きな損失が生まれました。(拳を叶の方に突き出して)だから、私の分もボコボコにしてください」
叶「うん」
叶も拳を突き出し詩音の拳に軽くぶつけた。詩音は
銀仮面「(叶をにらんで)おれはお前を認めない」
叶「はい? 」
金仮面が銀仮面を引っ張る。
金仮面「おい、いくぞ」
銀仮面「ああ、わかってる」
二人の仮面も飛んで行った。
叶「あいつ、なんなのよ」
マキナ「叶に突っかかっていたが彼は知り合いか? 」
叶「うんうん、知らない。知らないけどあの二人の声、どっかで聞いた気がするんだよねぇ……」
闘牛「はっ! 」
黒い影の拘束をなんとか解いた闘牛。
闘牛「ずいぶんと余裕のようだな宮城叶。この短期間、何が貴様を変えた? 」
叶「さあね」
叶は杖を構える。
闘牛「ふふふ、ふははは……それは殺し合いの中で理解するとしよう。(斧を生み出して掴む)では、行くぞ! 」
闘牛は叶に迫る。叶は
叶「あっ! 」
叶が杖の方に向かおうとすると、闘牛が立ち塞がる。叶は後ろに逃げるが後ろにコンテナがあり追い込まれる。
闘牛「(斧を投げ捨て)モおおおおおおおおおおおッ! 」
叶「うっ……」
叶はあまりのうるささに耳をふさいだ。闘牛の角が伸びさらに鋭いものになった。
闘牛「モおおおおおおおおおおおおおおおおおッ! 」
闘牛は角を叶の方に向け突進した。闘牛が進んだところには足跡が生まれた。
叶「う、うあああああああああああああッ! ……なんてね(叶はニヤリと笑う)」
叶は上に飛び、回避した。闘牛の角はコンテナに刺さった。
闘牛「なっ!? 」
叶は闘牛の首に勢いよく着席した。
叶「(股間を押さえて)いっ……たぁ……ま、マキナ! 」
マキナ(杖)は回転しながら飛んで行った。叶はそれを掴んだ。そして、
闘牛がコンテナからなんとか角を抜いて通常の姿勢に戻った。叶は角に脚をかけてぶら下がった。スカートがひるがえりパンツが丸見えになる。
叶「ちょっ……!? 」
闘牛「こいつ……離れろ! 」
闘牛は叶の足を外そうとしたり、首を横に振って振り落とそうとした。
叶「離れるもんですかッ! 」
マキナ「かなえ、こんな状況でいうのもなんだが……パンツ丸見えだぞ」
叶「自分でもわかってるわよ! でも、ハイリスクハイリターン。背中ががら空き! 」
叶が
叶「ウソ! 」
闘牛は叶の足を掴み、放り投げた。叶はなんとか着地した。
叶「硬すぎるでしょ……」
闘牛は両手に斧を生み出す。
マキナ「かなえ、あの硬さでは生半可な攻撃はじゃ通用しないぞ! 」
叶「(カードを三枚取り出して)ならこれでッ! 」
取り出したカードは
叶「
叶が杖を闘牛の方に向けると、火球が闘牛めがけて飛んでいき直撃。大爆発が起き、あたりは火の海と化した。
叶「(マキナに向かって)やった……よね? 」
マキナ「そう思いたいな……」
炎の中で何かが光った。
マキナ「かなえ! 」
叶が杖を構えると二つの斧が回転しながら飛んできた。叶は斧を回避した。二つの斧はコンテナに刺さった。炎の中から何かが歩いてくる。炎の中から闘牛が姿を現した。その体には少しやけどはあるもののそれ以外の傷はなかった。
マキナ「この戦い厳しいものなるぞ。かなえ」
叶「そんなこと、ここに来って決めたときから予想してたよ……にしても、ほんとに硬いわねぇ……(闘牛に向かって)今世紀最大のタフガイだよあんた」
闘牛「まだあきらめていないようだな」
叶「当然」
闘牛が叶に迫る。叶は杖を構えた。
・緑地公園
黒ずくめと詩音、仮面の二人が降り立った。黒ずくめは赤い大鎌を生み出し、つかんだ。
黒ずくめ「手短に済ませたいのですが……」
詩音「奇遇ですね。わたしもです」
黒ずくめ「そうですか……ではッ! 」
黒ずくめが三人に迫る。三人は構える。黒ずくめが大鎌を振ると赤い斬撃が三人にめがけて飛んでいく。詩音が前に出て、一枚カードを杖の先端にある星にかざす。
詩音「
黒ずくめ「おかしいですね。あなたの彩無撃退数は1のはず……なのに、戦闘慣れしているうえに確かな実力がある……いったいどうしてなんでしょうか」
詩音「どうしてでしょうね~」
銀仮面が黒ずくめの背後から片手剣で切りかかろうとすると黒ずくめの背中から三本目の腕が生え、それを止めた。
銀仮面「くそっ! 」
黒ずくめは回転し、銀仮面と詩音を突き飛ばした。黒ずめはランスを放とうとしている金仮面に斬撃を放った。
金仮面「ぐはっ! 」
斬撃が金仮面に直撃し、金仮面は倒れた。
詩音「(金仮面に向かって)間抜け……」
小さくつぶやいた。
金仮面「ちょっとそれ……ひどくないか……? 」
黒ずくめ「まずは一人撃破ですね」
黒ずくめは赤黒いオーラをまとう。
詩音「(銀仮面に)来ますよ」
銀仮面「わかってる」
黒ずくめは無数の赤い剣を生み出し、詩音と銀仮面に向かって放つ。
詩音は
黒ずくめ「まだまだ行きますよ」
赤い剣の数は増える。
銀仮面「くっ! 」
銀仮面の片方の剣が飛ばされ、赤い剣が直撃する。詩音は銀仮面を連れて逃げた。
銀仮面「すまない……」
詩音「いいっすよ。それより大丈夫ですか? 」
銀仮面「大丈夫だ……大したことは……うっ……」
銀仮面は傷口を押える。
詩音「十分。いや、五分で片付けます」
銀仮面「いくらなんでもそれは無理だろ」
詩音「いやいや、いざってときのとっておきがありますからね~」
詩音は
詩音「宗助さんは今日はもう戦わないでください」
銀仮面「なぜだ! おれはまだ、うっ……」
詩音「まだ傷が完全に治っていないのもありますが、精霊の効果もありますし、今は無理する場面じゃないっすよ」
銀仮面「しかし……」
詩音「そんなんじゃ、いざって時に戦えませんよ? あなたは何のために、誰のために戦っているんですか? 」
銀仮面の頭に過去の記憶がよぎる。自分と手をつないでいる赤髪の少女。バイク。少女と呼んだ古い本。
銀仮面「そう……だよな」
詩音「わかったら、ここで休んでてくださいよ。あいつはわたしが蹴散らしてきますから」
詩音は一枚のカードをドローした。
銀仮面「ああ」
黒ずくめ「(金仮面に)あなたを置いて逃げるなんて二人ともひどいですね」
金仮面「まったくだ」
金仮面はゆっくりと立ち上がる。
黒ずくめ「あなた一人で戦うつもりですか? 」
金仮面「そう……なっちまうよな……」
黒ずくめ「そうですか。では、遠慮なくッ! 」
黒ずくめが大鎌で金仮面に切りかかろうとしたとき、何者かが黒ずくめのうでを切断した。黒ずくめは金仮面から距離を取ると背中をナイフで貫かれた。
黒ずくめ「ぐはっ……」
口から血を吐き、何者かから蹴られ黒ずくめはこけた。ふりかえると詩音が立っていた。その姿は魔法少女状態ではなく、スカートは毛皮になり上半身はスポーツブラのような服。首には何かの骨で作られた首飾り。頬には赤い三本の線が入っている。頭もなにかの頭蓋骨で作られた兜を付けている。
黒ずくめ「雰囲気が変わりましたね」
詩音「そんなにじろじろ見ないで欲しいです。あ、もしかして中学生がこんな格好してるのに欲情しちゃいましたか? 」
金仮面「いいぞー詩音ちゃん! 俺的にその格好はポイント高いぜ! 」
詩音「お前は黙ってろ」
金仮面「ぐはっ」
詩音が投げたナイフが金仮面の頭に刺さり、金仮面はまた倒れる。
黒ずくめは立ち上がる。
黒ずくめ「そんな力があったとは知りませんでしたよ」
詩音「
・工場地帯
闘牛に殴られ、コンテナにぶつかる叶。服装はボロボロ。
叶「ほんと……なんて体してんのよあいつ。こっちの攻撃が全然通らないじゃない! 」
マキナ「今までもこんな状況を覆してきただろ? 大丈夫、かなえなら出来る」
叶「あのさあ、前から思ってたんだけど対抗策を私に一任するのやめてくれない? マキナも考えてよ」
マキナ「その言い方だとまるで僕が考えてないみたいじゃないか! 僕だってちゃんと考えてる! 」
叶「へーそうなんだ~。じゃあ言ってみなさいよ私がびっくりするようなアイデアをさ! 」
マキナ「か、考えたうえでかなえの打開案が……す、素晴らしいから……言いずらいというか……か、かなえがハードルを上げてるんだ! 仕方ないだろ! 」
叶「それでわたしに任されてもなぁ……」
叶とマキナがしゃべっているうちに闘牛は角を突き出して突進してきた。叶はなんとか回避した。コンテナがを壊していくつものコンテナを突き抜けて行った。闘牛は跳躍し、叶たちのいるところに戻ってきた。
闘牛「やはりあの少女同様、諦めないか」
叶「あきらめないのが魔法少女の美学なもんで」
闘牛「しかし、その最期は残酷なものだ。それは貴様も十分理解しているのだろ? 」
叶「(拳を強く握って闘牛をにらむ)残酷? そんなのまだわかんないでしょうがあああああああああッ! 」
叶は
叶「はあああああああああああああああッ! 」
闘牛は何も抵抗せずにただ攻撃を受け続ける。
叶「でやああああああああああああッ! 」
何度か切りつけたあと叶は闘牛から離れた。
叶「はぁ……はぁはぁ…はぁ……」
叶は息を切らして闘牛の方を見た。しかし、闘牛は無傷。叶の意識はもうろうとしている。
叶「これは……ほんとにまずい……かな……」
闘牛は斧を生み出した。
闘牛「これが貴様の結末だ。宮城叶ッ! おのれの運命を恨むのだな! 」
闘牛は叶めがけて斧を投げた。
マキナ「かなえ、僕を見ろ! 」
叶「え? 」
叶が杖をみると
叶(どこかの部位に確実にダメージを与えている!? )
叶は闘牛の体を見る。
叶(どこだ……どこだ……どこだ…)
斧が叶の目の前に迫る。
・緑地公園
詩音はダガーで何度も黒ずくめを切り付ける。黒ずくめは詩音のスピードについて行けない。黒ずくめは血だらけだ。
黒ずくめ「くっ、ぐは……がはっ……」
黒ずくめは詩音から距離を取った。
詩音「どうしました? こんなものですか? あなたの実力は」
金仮面(詩音ちゃんの服装が変わってきてから戦況が一気に変わった。強すぎるだろ。あんなのあるなら最初から使えよ)
黒ずくめ「はぁはぁ……はぁ……はあああああああああああッ! 」
黒ずくめは詩音に迫る。
詩音「はぁ……やれやれ……」
詩音はカードを一枚、地面に落とした。カードは消えた。黒ずくの接近に対して、詩音はバックステップ。黒ずくめが詩音が元いた場所を通過しようとしたとき、地面に魔法陣が現れる。至る所から木のツルが伸びてきて黒ずくめを拘束する。
黒ずくめ「くっ……」
黒ずくめは抵抗するがツルはちぎれない。
詩音「できれば大人しくしていてほしいですね」
黒ずくめ「
黒ずくめの体から炎が出てきてツルを焼き払う。黒ずくめは空を飛んで空中に出た。
黒ずくめ「はぁ……はぁ……舐めてましたよ魔法少女を。ここまで強いとは思いませんでした」
詩音「え? すいません、遠くてよく聞こえないっす」
黒ずくめ「今度こそ……最大火力で……」
黒ずくめは黒い大きな球体を生み出す。
金仮面「あれはさすがに無理だろ! 逃げようぜ詩音ちゃん! 」
詩音「わたしの戦歴は9999勝0敗。まぁ、ほとんどが仮想空間での彩無とのシュミレーションなんですけど……記念すべき一万勝目が目の前にあるんですよ? 逃げるという選択肢はありません」
詩音はダガーを捨てる。弓と矢が現れそれを手に取る。
詩音「
詩音は緑色のオーラをまとい弓を引く。
黒ずくめ「今日があなたにとって初めての敗北……そして、命日だッ! 」
黒ずくめが放った黒い球体が詩音に迫る。詩音は矢を放つ。
黒ずくめ「(笑いながら)たかが弓矢で何が出来るというのですか? 」
詩音「そう言うセリフって……」
弓矢がゆっくりとドリルのように回転しだす。
詩音「死亡フラグになりますよ? 」
黒ずくめ「ん? 」
弓矢の回転は速くなり、緑色の風をまとって大きなドリルとなった。そして、一瞬で球体と黒ずくめを貫いた。
詩音「
空中で大爆発が起こる。
金仮面(おっかねぇ……)
詩音の
金仮面「詩音ちゃん! 」
金仮面は詩音の元に駆けつけた。
詩音「やっぱり、体にかかる負担が尋常じゃないですね……喜助さん、おぶってもらっていいですか? 」
金仮面におんぶしてもらった詩音。二人は銀仮面がいるはずの場所に来た。
金仮面「おーい、おーい! 終わったぞー! ……ほんとにここなのかよ詩音ちゃん? 」
詩音「おかしいですね……」
金仮面「お、なんかあるぜ」
金仮面は木に短剣で刺された紙を見つけた。手紙の内容は『やはり、じっとしてられない。俺にできることをする』
金仮面「あらら……」
詩音「はぁ……ほんと馬鹿っすねぇ……」
・工業地帯
叶に向けて投げられた斧は銀仮面が片手剣で切り払った。
闘牛「新手か」
叶「あんた……!? 」
銀仮面「無様だな、魔法少女もどき」
叶「もどき!? もどきって何よ! 」
銀仮面「俺はお前を魔法少女として認めていない」
叶「は? 」
銀仮面「本来ならこんなことしたくはないのだが、これくらいしか今の俺に出来ることはないからな……」
叶「なんの話? 」
銀仮面「共闘だ! 共闘してあいつを倒すぞ」
叶「はい? 」
(つづく)
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