銀河の果てに

西風 遊歩

一人と二人

満天の夜空。

港の桟橋から湾全体が見え、若き青年は、流れる星々の川の先端に指をさす。

「僕はあそこを目標にしている。」

背後にいる男女二人の青年が、彼と知り合ったのは数日前であったが、

今は、この夢話を信じている。


 ズザザッと土煙が流れ、コロセウムに立つ若き青年。

 彼の名は西田太郎、日本人。

 相対する多国籍企業フリードグループの代表デューク=フリード。

 二人とも全身を戦闘用プロテクターで装備している。

 戦闘用プロテクターは、強化服(パワードスーツ)呼ばれ、核や化学兵器の使用や製造開発や実験などを襲撃阻止、解体の場合最善の方法を遠隔地から有識者の指示またはシンクロ操作による繊細な作業機能も備えている。

 太郎の強化服は汚れ傷付き外れかけてるに対して、汚れ一つない新品同様の強化服のデューク。

 「どういうつもりだ。」

 デュークは不満げに話しかけた。

 「まず、子供が相手だってところですか?それとも強化服の整備不足?」

 「両方ともだ。」

 太郎はイギリス国籍の企業ダンディー財団のロバート=フォーク=ダンディーJrの2つ名を使う。ダンディー財団は多国籍企業フリードグループとライバル会社の間柄なのだ。

 

 ダンディー財団は強化服の第一人者で数年前に第三次世界大戦へ紐づく事件をいち早く感知し、一体の強化服をお披露目し解決に導いたのだ。

 それにより、これからは実験を繰り返し費用のかかる兵器よりも、誰もが使える強化服へ一転する方向に世界が変わり始めた。

 国連は強化服を公認し、世界壊滅につながる兵器を一掃すること、ダンディー財団の独占を避けるため、多国籍企業フリードグループを設立し各国の兵器力を均等化を目指すため強化服の格闘の場を設けたのだ。

 

 太郎がゆっくりと首を振り、構える。

 「僕がここにいることで納得できませんか。」

 デュークは大会のシードで3回戦目で決勝戦に立っているが、この大会はある意味ではダンディ製品を潰す意味があった。

 「メンテナンス作業がなってないではないか。」

 「わけあって、スタッフたちは日本へ先に行かせた。」


 一筋の閃光が大気圏に飛ぶ一機の宇宙船を消し去った。


 「先代のパワードスーツを使うことができないんです。」

 「あれか!」

 彼の義父ロバート1世の無重力空間での延命治療が終わったことをデュークは知っていたのだ。

 「僕のスーツでも、負けるわけにはいかない。」

 「私をなめてんじゃねーぞ、小僧!」

 パワードスーツにエネルギーが流れ、一発で仕留めようとタックルで急接近する。

 両手を広げ捉える影が混じり合う。

 後方へと飛ばされるはずが、前方へジャンプし、地面に叩き即けられたのはデュークの方であった。

 太郎は着地し、振り返り体制を整える。

 頭にきて立ち上がったデュークは、ダッシュをかけて猛攻撃するが、右に左に捕らわれては倒され綺麗なスーツは瞬く間に汚れていく。

 急にデュークは止まり、呼吸を整えた。

 「合気道か。」

 小笑し、相手を見据える。気が変わったのだ。



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銀河の果てに 西風 遊歩 @yufo_seifu

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