第16話 問題解決と行きましょう

一度転移テレポートして、アドフのもとに向かう。


事情を簡単に説明すると、すぐに理解してくれた。

アドフとの会話は、無駄な言い回しがなくシンプルだが。非常に要件をわかりやすく伝えてくれるし、こちらの会話も、ざっくりとした説明でも、肝心な意図を汲んでくれる。僕は案外頭が良い人好きなのかな。一時期おバカキャラを愛でていた時期はあったけど、やっぱり大人の人の雰囲気はすきかなー。

えっ?僕は、そこは言わない約束だよ?ねっ!


とりあえず、この拠点からでも、探索魔法をかけることはできるので、早速準備に取り掛かる。


必要なものは紙とペン。今回使用する紙は、画用紙である。

日本は画用紙が100円で売っている大変便利な国だ。

画用紙のサイズはA3サイズで準備にができる。もちろん、複雑かつ広範囲なら、もっと大きな画用紙か模造紙が必要になる。

今回は村とその周辺に限るので、あまり大きくなくて大丈夫だ。


画用紙はスケッチブック状になっているので、いつでもどこでも書くことができる。早速取り掛かろう。


一つ10分程かけて、二つ魔法陣を作成した。

探知効果は精神系探知と病原性探知だ。病原性探知はあらゆる病気を感知するので、ドクターショッピング

不要である。


早速村と村周辺3kmの範囲で発動させた。

発動から探知は完了まで、あまり時間がかからないが、解析に時間がかかりがちなので、現在解析待ちである。


なんとなくアドフと会話をしてら過ごしてたら、解析は終わっていた。

探知結果がでていた。


病原性探知【UNKNOWN】ミューテーションウイルス

と出ていた。《類似型系統88%一致遺伝子変異型 人獣感染症》の疑い。


精神系探知【not__検 found出 無 し


大方、感染症型の病気だと考えられる。

感染症ならば、簡単に治せるけど、原因がわからないと、再発する危険がある。


っと言っても既に「人獣」と出ている。つまりこの辺りにしかいない生き物を探せば良い。もしくは村の周辺を通る生物だ。


さて、どの生物か、探索魔法をを使用し、大体のあたりをつける。


少しすると、十数種類の動物が検索ヒットしたが、数を確認する。

一番多いのは、クランシュタット牛イサルスオックスこの地域でよく放牧されているが、この村では、改良種が育てられている。

つまり、その改良種の可能性が、一つ挙げられる。他にも、渡り鳥も散見され、確定とは言い難いが、一番可能性が高いだろう。

他の生き物については、アテが外れた場合に検討・調査をしようと思う。


今現在、時計の短針は、12を指している。日本では子の刻ともいう。この時間ならば、村人も起きることもないし、家畜達も、完全に寝てはいないかもしれないが、活動は落ち着いているだろう。


この世界は全ての家畜が舎に入るわけではないらしい。建築力の限界か、予算の問題であろう。放牧されっぱなしのクランシュタット牛イサルスオックスの改良種、ボヴァンハリアを調査する。といっても、彼らから、唾液だえき、血液、毛、爪、糞尿を少量採取されてもらい、シャーレに移す。

これを一度、30度程の生理食塩水で混和する。十分混和できたら、寒天培養を行う。寒天培養もいろいろあるが、これは、ウイルスではなく、細菌検査用だ。何か別の素因があればと思い行っているので、さして重要ではない。

ウイルス検査は、培養ではなく抗体検査だ。なので、今回の目的は抗原の型を調べに来た。抗原の型がわかれば、ある程度抗体の型を予想でき、探索魔法派生の調査魔法を使って調べることができる。調査魔法は、広範囲で発動でき、調査項目をヒト、物問わず調べることができるので、生体検査も文献調査もお手の物だ。開発して良かった魔法の一つである。調査魔法は魔法陣での発動になるので、紙に書いた基礎魔法陣に、条件を書き出し、発動させた。

調査項目は〈抗体型〉〈抗体研究文献〉〈イサルスオックス〉〈ボヴァンハリア〉〈細菌文献〉である。

調査制限時間を一時間に設定し、魔法陣の発動成功の確認をする。

その間に培養検査は、保温庫を魔法袋から取り出し、35度設定にして、培養容器を入れ、72倍速時間促進魔法タイムアローマジックを掛けて、様子を確認する。


どの調査も一時間の待ち時間があるので、その間浄化魔法を使用し、身体、衣服共に綺麗にする。

一度アドフに連絡を入れるが、「俺にはサッパリだ」と言われた。

よくわからなくても、病気の一種なのは理解してくれたらしい。

何しろこの世界は、風邪が一つの呪いだと言われているくらいなのだ。なので。医者は解呪師と呼ばれている。一応医者である解呪師は風邪が病気の一種であり呪いではないことを知っているが、一般人の常識としては広がっていない。


アドフと記憶に残らないような取り留めのない会話をして、また魔法陣のある場所に戻ってきた。

一時間経ったのだろう、調査魔法の調査完了の知らせが戻ってきた。この調査魔法の良いところは、調査結果が、冊子状になるか、知識情報としてこのまま頭に取り入れることができる。


今回は冊子状にすることに決めた。自分自身も、態々《わざわざ》読まなければならない苦痛はあるが、他者に説明する場合、情報が紙ベースにあった方が何かと都合が良いのだ。


中身を確認する前に、培養した容器をチェック、鑑定魔法をかける。鑑定魔法は調査魔法と同様だ。広域には使えないが、手元にあるものや近場にあるものならば、調査魔法とよりも素早く結果を出す事ができる。魔法陣を態々準備する必要なく使うことができるので、調査魔法の劣化版だが、使い勝手は良い。


早速、培養の結果が出た。

鑑定には、アルムドゥスキア名(地球名)が書かれている。正確には、全く同じではないのだが、役割や構造、正確、反応、代謝サイクル、有病性を鑑みて、最も近いものが記載されている。

自分の故郷でこの魔法を発表したら、きっと特許は取れるだろう。


培養結果だが、やはりこれといって病原性の高い細菌は見つからなかった。免疫不全者なら可能性は残るが、村民以外の皆がそうである可能性は低いといえる。今回は細菌感染の可能性はほぼなしとみても良いだろう。


本命の調査魔法はどうなったか。

こちらは分厚い。紙が破れないように少し厚めに作成されているが、やはり厚い。実に400ページはある。一冊の本である。


早速開くと、目次からはじまり、村の地図が記載され、次に感染症の総論から入り、各論に移行している。各論のメインは今回の原因になったウイルスを、特に深く掘り下げている。


しばらく読み進めていくと、原因と思われるウイルスに行き着く。


項目欄には、アルムドゥスキア名(地球名)が書かれる。

欄には、エルヴァンスィティリアウイルス(ポックスウイルス?)

と記載されている。その下には、遺伝子構造、生体分布、増殖能力、発症時の症状、抗原構造、抗体構造(参考掲載)、感染経路、致死性、障害性、感染性などの情報が掲載される。


「ポックスウイルスはかつて天然痘と呼ばれていたが、地球では、研究施設以外では、自然発生はしないはず……」



確かに二重らせん構造ではあるが、感染経路、増殖能力、発症症状、抗原型、致死性が全く違う。


ポックスウイルス感染では、皮膚症状が出ることがほとんどだが、この村で起こっていることの情報も、この冊子もとい報告書には記載はない。むしろ感染経路がウイルスとは別格だ。


一言で言おう。感染の序盤の増殖方法は、マラリアと一緒だ。つまり〈血液中の赤血球RBC内で増殖する〉この、マラリア不衛生という、ウイルスではなく原虫と同じ増殖経路を持つ。この時の増殖必要時間は10分だ。10分で2倍になる。つまり、一時間で64倍に増殖する。そしてある程度の数まで増えると、今度は脳細胞に寄生を始める。ここでの増殖はさらに速度が速く、

3分毎に倍に増殖する。簡単計算で、一時間で100万倍だ。この速度では、一晩で脳症を引き起こす。つまり原因はウイルス性脳症となる。


よって、やる事は決まった。明日必ず村長に会う。そして調査結果を見せてドヤァする。

そして、今夜の内に原因ウイルスを、非人獣感染型(非感染性)ウイルスに遺伝子を書き換える。

この魔法は世界級魔法。

もちろん、口語詠唱は不可だ。

魔法陣を使用する。

魔法陣のサイズはA1サイズだ。書くにも一時間以上はかかる代物だ。それだけでなく大量の魔力と詠唱が必要だ。詠唱はこっぱずかしいが、アドフ位なら我慢できる。やっぱり恥ずかしいけど。


深夜、丑三つ時早速完成した魔法陣と共に詠唱を唱える。

『我は異界より存在せしめる永遠の魔術師。今を生きるモノなり。その大地、天空、地底、常闇を常光その光をもたらすこの世界に

一つの干渉を許していただきたい。ここは女神も男神その概念からも異なる世界よ。私の力を糧とし、生命の遺伝子チカラを改変する。私は咎を受け入れよう。今世界に眠るエネルギーを我に託し、その恩恵を承らん。今世界の引き金トリガーよ我の声と共に鳴り響け』

【世界級魔法系第4章 特別能力スキルマジック 変異転生変遷幾何学頂芽具現】


あぁ、恥ずかしい……。

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