第15話 始まりの村。だが入れるとは言っていない

どうにかこうにか、王都出発から4日後。村が見えてきた。


天気は良好。大地は草原に点々と木々が点在する。


そんな、いかにもな草原の向こうに、村はあった。


名前は「アクヴァーヴ村」 なんて発音しにくい村なんだ。


もうさ、《はじまりの村》でいいんじゃないかな。


アドフさんの情報では、ここは600~700人が住む村ということだ。


小さいながらも、最低限の施設はあるということで、旅人がよく利用している、旅人にはなくてはならない村である。


村が目前まで近づいたところで、いったん馬車を止める。

馬車を降りて、村の入り口、簡素ながらも塀で囲っているあたり、侵入者防止でもしているのだろう。もしかしたら、獣や山賊たちがいる地域なのかもしれない。


村といっても、入り口には見張りの当番であろう村人が、立っていた。

村人が『ようこそ、はじまりの村へ』なんて言ったら面白いかもしれないけど、それはあくまでゲームだ。


「悪いな兄ちゃんたち。今は余所者をこの村に入れるには行けないんだ。更に北を目指すなら、村の右側を迂回して行ってほしい。塀沿いに歩けば、迷わないはずだ」


「村で何かあったのか?」


歓迎はされない事も可能性としては十分だが、いきなり入村拒否されるとは思わなかった。


「こればっかりは言えないんだ。なにせ国に依頼を断られるわ、ギルドに依頼しても、ギルドマスターの許可が下りず、依頼として成立しない。村長は村の外に言っては行けないと言われている」


「そうか。すまなかった。俺たちは無理して村に入らなければいけない程逼迫ひっぱくしているわけでは無いからな」


これ以上は村民に話を聞こうにしても、口にしないのならば、無理に聴きだすべきではない。

今は引く事にした。いや、引くしか術がないのだが。


その後二人は言われた通り、村を塀沿いに歩き、大きな村ではないので、一時間もせずに村の反対側に向かう事ができた。


このまま一度村から離れる。近くでウロウロしてても、不審に思われるからだ。もちろん馬車は仕舞い、召喚獣のステは一度逆召還した。


「このまま次の街に向かうのか?」


「いや、調査をしてみます。流石にあんな事言われて、気にならないはずないじゃないですか!」


バッチリ調べちゃいますよ。と、腕を振り上げ、やる気満々なポーズを見せる。



「そうか」

程々にな。と肩を竦めた。


その日は結局村の近くで野宿する事になった。

野宿と言っても、軍事用のテントはあるし、キャンプセットもある。光熱費は魔法で代用だ。一応空間魔法を応用した、空調設備を備え付ける。イメージはスケルトンハウスにテントが入っている感じだ。


テントを設置し、火を起こす必要がないので、光を使う。必要なものは、60wのLEDランプ複数個だ。ランプに送る電圧を100Vボルトとすると、電流は600mAミリアンペアで設定し雷魔法の応用で流す。空間魔法で小さな四次元空間を作り、そこに600whワットアワー分の電力ランプの数だけ蓄電する。これで10時間近くは持つだろう。


ご飯は、ちょっと最近黒パンばかりで飽きてきた。

よって、今日は白米を炊きます。もちろん日本米。いつか量産できるようにしたい。

アイテムは、木の枝や木っ端などの燃えるもの。これに飯盒はんごうセットと白米2合を魔法袋から取り出し、早速取り掛かる。水も魔法で出せるし、火種も魔法で事足りる。

既に生活魔法として定着しているスキルである。

ちなみに魔法で作った水は、安全で美味しい。不思議だ。攻撃に使うのがもったいない。浄水器要らずだ。


そうしてできた出来立ての白米。

白米にはやっぱり味噌汁。残念ながら自分のイメージでは、美味しい味噌が作れなかったので、市販の味噌汁の素を使った。無念。

今日は野宿なので、おかずは一品、「チキンの照り焼き」である。この世界は発酵食品が少ないので、今の所自前の調味料を使用した。



アドフがいないと思ったら、野兎のようなものを狩ってきていた。

既に血抜きをしていて、見た感じ、グロい。

でも、うさぎ美味しいらしいから、今度食べようかと思う。

既に肉と皮に分かれたうさぎをポリ袋に入れ、魔法袋に収納する。


だんだんアドフも僕が魔法を使ったり、魔法道具マジックアイテムを使うのを気にしなくなってきていた。飯盒はんごうは違うよ。地球産だよ。



アドフも戻ってきたことだし、早速ご飯タイムに入った。ここで悲しいことに、アドフは味噌汁を美味しくないとのたまった。

ポクハショックヲカクシキレナイ。


「いや、きっと初めてだから飲みなれていないからだと思う。だからそんなに動揺するな」


きっとアニメだったら、上下に激しく振動するエフェクトが出ていたと思う。


た、たたた多分、インスタント味噌汁だからだよね。そうだよね……でも、自分が一番好きな商品だし、気持ちションボリとうなだれてしまう。

でも……いつか絶対うまいと言わせてやる!


そんなに新たな決意を胸に、食事を終えた。

今度は3合炊こうかな。米は気に入ってくれたし。自分も食べたいし。また稲作できる地域に住みたいなぁ。



食後、役割を決める。先ず僕が調査を行い、アドフが、この野営地の護衛と、村の外に村人が出入りしていないか、見張りを行う。


早速行動に移すことになる。先ず村の入り口付近に行き、そこから影属性魔法シャドウマジックを使用し、存在感や視覚・聴覚をシャットアウトする。【存在遮断】プレッセンスチェックを使用し、村の中心へ行き、そこから、村長の家を探す。大体大きな屋敷が定番なので、すぐに見つかる。

ここからは、皆大好き身体強化魔法で聴力を強化する。

中の会話が聞こえるようになる。


「……やはり、ギルドからの協力は不可能か。国は今それどころではなくあてにならない。やはり我々で解明するしか……」


「しかし、我が村民は誰も死者はいない。それどころか発症者がいない。それなのに、外部から人が訪れると必ず発症してしまう。これは何故か」


「我が村が呪われているかもしれない」


「しかし、誰が何故そのようなことを。そもそもそれができる奴はいるのか?」


「……もしかしたら、神職に精通するイベルア家が関与しているかもしれない」


「そうだとしたら、なぜ村の外の人を襲う?」


「今のところ原因は不確かだが、何か事情があるのだろう。明日話を聞く事にする」


「今できるのはそれしかないな。今日来た旅人は村には入れていないな?」


「はい。事情は殆ど話さずに、村の外を回って先に進んで行きました」


「ならば良いのだ。これ以上死者を出すわけにはいかない」


「今日は一旦解散だ。また次回もこの時間に」



なんとなく事情がわかった。


結局謎の病のせいで僕たちを村に入れることができなかった。


この話が真実ならば、僕たちはむやみに部外者として拒否されたのではなく、予防のために拒否をされた事に。つまり間接的に助けようとしているとも言える。


そうならば、原因を究明しようではないか!





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