第14話 お引越しとプチ旅行③
旅はとても順調である。
怖いくらい順調である。
そこまで暇なら、やはりせっかくの異世界。採取魔法で、役に立つ植物、石を拾っていく。
他にも薬の材料となる虫がいるのだが、ちょっと虫は……ね、魔法袋もほら。虫だらけになっても困るし。
べっ、別に虫が怖いわけじゃ無いんだからね!
この時の設定魔法は役に立つ、
お手軽魔法である。
この辺りは、皮膚疾患に効果がある薬草がチラホラと群生している。そういう場所を見つけたら、取り潰さないように、ある程度余裕を持たせて採集活動をしている。
採集自体はすごく簡単で、30メートル四方に設定した空間を、地面スレスレで空間魔法を発動させ、刈りとる。刈り取った薬草は魔法袋にストックされる。
魔法袋のアイテム一覧を見ると、【薬草 ヘイムス 8.8kg】と表示された。
後程、薬作りをしようと思う。
大変だけど楽しい。飲み薬では無いから、多少製法が粗くてもまともなのは作れそうだ。
「ディー、今日はそこまでにして、あとは最寄りの村まで行かないか?
採集活動は良い事だが、日が暮れてしまうぞ」
アドフさんも俺が採集をしている間、ずっと剣の素振りというか型の自主練をしていた。
この世界の人々は剣を持っていてもサマになるよな。
日本で真剣なんて振り回していたら、厨二病患者として、白い目で見られてしまう。
自分の思い出には、剣術については無いが、ついうっかり酒の席に偶々今時に、「僕、実は魔法使いなんだよね」と言ってしまった事があるが、その時は、「坊や、魔法使いはな、異性との関係を一切持たない禁欲主義者が30年かけて取得出来るような称号なんだ。まだ、幼い坊やには早いと思うぜ」
などと言われた日には、この話はネタなのか、そうなのか?
と、頭を悩ませたものだ。
実際は、インターネットと呼ばれるネットワーク情報では、そのような情報が蔓延していた。事実かどうか別として。
僕に声をかけてきたアドフさんは、既に日課の型は終わっており、既に立つ準備は出来ていた。
僕も採集品の選定と収納は終わっていたので、賛同し、また馬車で街道を進んだ。
その間、街道に現れた生物は、
気をつけます。
あの大きな大剣でよく振り回せるなー。やっぱ筋力の違いだよね。
今度この世界用のステータス表示魔法作ってみようかな。
創ったら作ったで、筋力のなさに落ち込むだろうけど。
でも、やっぱりさ、人の強さって気になるよね。それに強さがわかるようになれば、客観的にも整理しやすいし、自分にとっても成長の過程を指標になる。
よし、落ち着いたころに創ろう。絶対作ろう!
一人こっそりと決意を胸に刻んだころ、アサルト・ボアの討伐が終わっていた。
役立たずはわたくしの事ですね。
うん。わかってた。でもその分アドフの実力はやはり凄いの一言だ。
一流、いや達人といってもいいのかな。剣技に関しては、随一なんじゃないかな。
努力と才能を極める人って、ほんの僅かだから、貴重な人材だ。
もし僕が、就職応援サイトの運営者だったら、絶対仕事のオファー付けちゃう。就活も楽々攻略組の仲間入りだね!!
……何を言ってるんだ自分は。自分が情けない。
この後も何体かの動物型モンスターに出くわしたが、すべてアドフと
皆が有能すぎて辛い。
ま、魔法だって便利なんだぞ!!
ただ、あまり使う機会がなかっただけなんだ。
って思っても、口には出さない。ただ、態度には出ていたが。
「ん、ディーどうしたんだ?少し休もうか」
「いや、いい」
「どうした?俺なにか悪いことしたか?
我慢しないで言ってくれ。直すよう努力する」
あぁ、この人はやっぱりこうなんだよな。
「ホントに何でもない」
ちょうど近くに寄ってきたアドフにギュッとしがみつき、胸?みぞおち辺りに顔を埋めた。
アドフは身長が高いから理想は胸の高さなのに、そうならない。でも今は自己嫌悪というか、魔法にばっかり頼りきっているせいで、身体的な努力を怠っている。その現実に気付かされたのだ。
気がついたからって、すぐにでも行動に移すことはまだしないが、いずれ、魔法と両立するんだと思って、自分自身の心に誓う。
「何でもないならいい。ただ無理はしないでほしい。ディーに特別な力があると分かっても、君はただの子供だ。子供を保護し、守ってやるのは大人の役割だ。俺はディーに頼ってほしいし、それに報いたい。ディーは凄い。なんせ俺や家族ををあっさりと救ったんだからな。君を大切にしないわけがない」
ちょっとささくれた気持ちに、優しい言葉と、頭を撫でる手の柔らかさは、ちょっと涙腺を緩んでしまう。さすがに声をあげては泣かないが、アドフの衣装が湿ってしまうのは許してもらおう。
少したって落ち着いたけど、まだ体を離していない。
ちょっと現実に戻ったからだ。
見た目は子供、
それに、ガーディは現在少年の容貌をしているせいか、精神が引きずられているため、結構子供っぽくなっているのは自覚はある。
でも、この事をいつ言おうか、考えているうちにタイミングを失ってしまった。
でもいつかは絶対に言おうと思う。
それでもきっと、彼は認めてくれるだろうから。
「ごめんね。ありがとう。ちょっと昔の事思い出しちゃったから。でももう大丈夫。昔を凌駕するほどの楽しい今があるから。それに、アドフがしばらく一緒に来てくれているのが嬉しいから、何も問題ないよ」
結局ごまかしてしまったが、気持ちは本心からだ。
なにも今は暗くなる必要はない。
今は一人ではないし。背伸びする必要もない。
だから、もう何も怖くない!
これから、次々と物語がやってくるのだから。
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