第13話 お引越しとプチ旅行②

ノーザンホーク家の家族に挨拶を簡単に終え、

僕は旅という名の観光旅行に赴くことにした。


最初はアドフさんと横並びで歩いているのだが。


「アドフさん、少し前を歩いていただいても良いですか?」,



アドフさんのキョトンとした顔をしたが、意図を直ぐに理解してもらえた。


「あぁ。ところで、ガーディはこれからどこへ向かうのか?」


やっぱり、大人に前を歩いてもらうと安心する。

あと、心なしか頼もしくも思ってくる不思議だ。


「これからこの世界は夏季になるんですよね。なら、北へ行こうと思います。あと、僕のことはディーと呼んでください」


この国の北側は、森の向こうに、標高5000メートル級の山脈が聳えて立っている。


富士山以上エベレスト以下というような具合だ。


最低でも富士山以上なのだから、山脈越えはハードになりそうだ。


えっ?、地図があれば転移すればイイって?

ごもっともだけど、旅の醍醐味が死んでしまうから、やらないことにした。


それに一人ぼっち旅ではなく、アドフがいる。仲間がいる旅なら、きっと楽しいと思う。


「ならばディー、次の目的地はロソビアシエート帝国に向かうのか?」


流石できる男、さらっと愛称呼びができるとは!

恥ずかしがらないところに男らしさを感じるぜ!

でも、顔を赤らめて、『デ、ディー』なんて呼ばれたら可愛さ二割り増しでときめくかも……

いや、男にときめいても……需要あるのか?



ここは、王都の外。北門の近くの物見小屋の扉から外へ出ることができた。


街道は、王都の沿いに伸びているおかげで、綺麗に整備されている。


「この山の向こうが、そのソロなんとか帝国なんですか?」



横文字弱いんだよね。前は日本にいたから、日本語慣れしたから、カタカナ的読みは辛い。


「そうだな。俺も行ったことは無いが、雪に覆われたた大地が広がると聞く。

寒くて作物も育ちにくい土地だが、その代わり鉱石が多く取れるのと、帝国軍の保有兵力が随一と聞くな。

その国とクランシュタット王国が戦争に発展しないのはこの山脈が原因だな」


イマイチ遠いせいで、山々が横に伸びていて迂回しにくそうだなーとは思うけど、高さが本当に高いのかわからない。


「ねぇ、アドフさん。あの山脈に着くまで、どれ位時間かかりますか?」


「あーそうだな、大体十日位かかると思うぞ」


オウフ……そうであったか。拙者いかんせん土地勘が無いため、うっかり目測を誤りそうになったでつ。いやーこれはこれは、しかしこれはきっと新たなる物語の序章。ラノベやアニメ、ゲームでは良くある展開。しかしそれは正規のSF物のみの物語。SFといってもscienceとspaceは別ものゆえ、しかしジャンルは違えど、その文学性は非常に感銘を受ける作品で溢れており、更にはロボットに最新科学を加えた超革新的オーバーテクノロジーを加えた新ジャンルを生み出したかの作品は……更にはその魅力が生み出す経済性は商業主義のものからしてもキッチュさは感じず、更に洗練されていっており、遂には神の域に達するかのようで……

フォカヌポゥッッッこれでは拙者がオタクみたい。

じゃあお前は誰なんだって?

コポォ 拙者はオタクではござらんので。



「おぃ、大丈夫か?」


「へぁっっ?」


「結構歩いたし、少し休もうか?」


あぁ、僕が一瞬キモオタにトリップしてたから、変な顔してかのかな。アドフに余計な気を使わせてしまった。


でも、せっかくのタイミングだから、休んだあと、アレだそう。


きっと進みも楽になる。


「そうですね。少し休みたいです。気を使わせてすみません」


やっぱりただ歩くだけだと変なこと考えそうだ。

流石に思考は読まれないだろうが、気をつけよう。

バレたら嫌われそう。


「では、あそこにちょうど開けたスペースがある。木陰もあるし、あそこで休もうか」


確かにちょうど良いスペースがある。少し準備することもあるので、頷く。





目的の休憩スペースに着き、持っていたレジャーシートを広げて腰掛ける。


ビニールは凄い。最初にプラスチックを発明した人の事を僕はリスペクトしようと思う。


レジャーシートは、180×140cm四方のサイズなので、二人は余裕で座れる。


アドフも読んで、並んで休んだ。


空が青い。久々に空を見上げる。この世界も太陽は一つだ。二つあったらきっと熱と紫外線で死ねる。


十分程休息をとったあと、早速準備に取り掛かった。


っていっても、馬車使うだけなんだけど、馬車は二人乗りようで小型だ。

馬についてだが、馬は使い魔を使う。


種族は不明だが、黒毛の額に一角を持つ馬だ。見た目黒いユニコーンなので、最初に名前をつけるとき、「モノケロース」と名付けたかったのだが、本人が嫌がり、いろいろ候補を挙げた結果、


富の運搬者コレステロール


彼女は大変喜んだ。

そして自分のセンスを疑った。


彼女といった通り、雌馬だ。

そして、優しく、勇敢だ。例え前方に魔物の群れが千体いようとも、怯まず突き進んだ。そして、角の先端から炎の弾丸を放つ魔法を持っている。

彼女が居てくれるなら、これ程心強いものはない。


そんな彼女と再会したのは30年前だ。その時は、剣とは法の世界。そして魔族と魔王が存在する。そんな世界だった。


スライムはかわいかったが、ゴブリンがグロかった。


初めての出会いはもっと前だが、前回はたしか、皆が使い魔の召還授業の時、一人が召還した召還獣が暴走を起こした。


このとき現れてくれたのが彼女だ。

それは、彼女の使う特殊能力、『念話』だ。人間には滅多に使わないが、動物や魔物など言葉を持たない者に対して使用し、意図を汲み取ってくれる役割を担ってくれている。

その力により、まだ未熟な勇者君が正義の鉄槌破壊行動を未遂にすることができた。


そんな彼女だが、ガーディとは100年以上の付き合いだ。10年20年の差はあまり気にしない。それが、彼女とガーディの関係だ。


「じゃあ、ステ、よろしくね」


まるで任せろ!とでもいう風に、一度嘶いた。


「では、アドフさん。これでのんびり行きましょうか」


「あぁ、しかし俺も乗ってよいのか? この馬…なのか?、とても貴重なものに見えるのだが、なんだか乗るのが恐れ多い気がする」


アドフの感覚は間違っていない。確かに彼女は纏う雰囲気がほかの生き物と違う。とても凛々しく、知性に満ち溢れているのだ。それでも彼女はガーディに協力をしてくれている。


ガーディも彼女を決して無下にはしないし、嫌がることもしない。今回は彼女が快く了承してくれたからできていることである。


まぁ、彼女にガーディの良質な魔力が供給されるので、ある意味Win Winな関係である。


結局、アドフはコレステロールのく馬車に恐る恐る乗り込んだ。


そして二人は馬車の旅をしばらく堪能するのである。


アドフが乗り心地の良さに驚いたのは、また別の話である。



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