第12話 お引越しとプチ旅行①

「さて、状況を整理しましょうか。

まずはアドフィルゲインさん含め、ノーザンホーク家の皆さん。この度はご愁傷様です。


あなた方は、この国に身をつけられているようですね。」


ねぇ、今、どんな気持ち、ねぇ、ねぇ。


と言いたいところだが、そこまで性格は黒くなったつもりはない。


ストレスは先程の王宮で発散してきたから。


結局何をしたかって?


……ナニ じゃないよ。


ただ、国王陛下には、毎日しっかり9時間以上寝ないと起きていられない呪いとアレが役に立たなくなる呪いだよ。

アレと言えばアレね。


大臣達も同じく、毎日しっかり9時間睡眠だ。


良い子はよく寝ましょう!


皇子はちょっとオイタが過ぎたから、ちょっと強い呪い【封印】を使いました。名前の通り、全ての行為が封印によって妨害行為を受ける。事実上の才能なし。

無能の出来上がりm9(^Д^)プギャー



さて、ノーザンホーク家の方々は、思ったよりも冷静だ。

その意味は、この国の事はもう未練は無いのか。はたまた、ガーディを信用してるのか……。


いや、ガーディは信頼されてはしないだろう。

普通、摩訶不思議な事象を起こす子供など、気味が悪いだけだろう。


「この家とこの空間は安全ですが、ドアの向こうは、危険地帯と思っても良いくらいです。

大人の方々は、働いていますよね。

やっぱり、まだこの国で働くんですか?」


僕は子供っぽく、しかし現実を突きつけながら問いかける。


すると、ノーザンホーク父……もといクラウスさんは僕に歩み寄る。


「確かに今は息子関連の騒動で、俺も危険かもしれない。しかし、職に勤めている以上、勤めを果たす義務があるし、もし留まれる状況になくても、最後は挨拶をする義務はあるはずだ。これでも騎士であり、爵位も賜っている。それ位の義理は果たしたい」



クラウスさん。発想が男前だ。心もイケメン、見た目は男前……。遺伝子は凄いな。アドフは受け継いでいる。


でも、世間はこういった人々の方が幸せになれない事が多いんだよな。


「わかりました。

ですが、この敷地から出る際は必ずこれをお持ちください。

僕特製の、お守りVer.3です。

効果は持ち主の絶対防御。

圧殺、刺殺、斬殺、絞殺、毒殺、呪殺、鈍殺、封殺etc…….、あらゆる殺意、が良いから身を守る事ができます。自分の身体に強力な鉄壁が覆っていると思って頂ければ結構です。

ですので、よっぽどの奇跡が起きない限り、皆さんが傷ついたり、死ぬ事はありません」



皆さんの反応が薄い。


もっと驚いても良いのですよ。

これじゃあ、ドヤァできない。ショボン……



「では、これを身につけていれば、街に出ても私たち家族は危険が無いのですね」


クラウス父の回復が早い。

流石といったところか、なにより状況の整理が早いのは良い事だ。どの世界でも、判断力がモノを言う。判断力の速さと正確さで、自分の命運を分ける事になるのだ。


「えぇ、その通りです。ですので、王都内で用事がある場合でも、安心して街を歩く事ができます」


「それならずっと、この国にいても良いのではないのか?」


おぉ、アドフさんの意見、ごもっともです。


しかしそのような意見が出る事は想定済みだ。


「確かにこの国に身を置き続ける事も一つの方法だと思います。ですので、実際に街に出て、自分たちに対し、どのような変化が起きていたかを、自分たち眼でしっかりと確認するべきであると思います。もし、あなた方家族が生活し難いと判断されれば、僕はそのバックアップしていく考えです」


とりあえず、僕の言いたい事は伝えたつもりだ。


しかし、ガーディはこの世界ではまだ3日、4日程度しか滞在していない。

この世界に渦巻く、世界事情、お国事情に関しては圧倒的に情報不足なのだ。


だから、ガーディ自身も一定の事を行うには、手探りの部分も多くある。


なので、より必要な情報を集めるのには、実際に足を運んで、実状を見る必要がある。


ガーディ自身も、実は不安が多くある。それは一人での旅の事だ。

今まで長い時を過ごしてきた彼だが、やはりいつまでも一人ぼっちというわけにもいかないし、この世界の人にお世話になる事も多くある。だから人脈作りと協力者を見つけたい。


今回はまだ未確定だか、アドフという存在もある。彼ならば、きっとお願いを無碍にはしないと信じている。


だからこそ、その家族をバックアップするのだ。

なにより彼、アドフが家族を大事にする人だから。


ガーディは家族を大切にする人を好ましく思っている。家族を大切にする人は、その人柄も暖かい人が多いと、これまでの人生において、見て、感じてきたからだ。


だから、ノーザンホーク家の人達が、自分の味方であるうちは、積極的に関わらせていただこうと思った。



「あのさぁ、俺は別にどちらでも良いんだけど、できれば家の本拠地はこの空間が、良いんだよね。


なにより静かだし。街の雰囲気も嫌いじゃなかったけど、なんか、山とか森とか草原って、ここまで落ち着くんだなって。はじめて気がついた。

俺は別に国の職務に就いていないし、あんまり今の国に未練ないんだよね。むしろ、家の外の草原の一部で畑作したいと思ってるくらいだ俺はこの空間で生活したい」


次男君御年25歳、彼はニート……だったかわからないが、この空間が気に入ったらしい。


創った本人であるガーディにとっては嬉しい事だ。


ちなみに次男の名前は

バスティフ・ノーザンホークという。


パスティフが意見を言ってもらえたおかげで、他の家族からも意見が出た。


『家の場所はここで良い。しかしこの空間の構造原理を説明してほしい』


『買い物は街のほうが便利だから、扉を街に好きな時に繋げるようにしてほしい』


『扉の転移先の本来の扉は、通行後に影響はないのか』


『移動を扉から扉への移動以外に、移動手段はないのか』


『そもそもこの空間って安全か』


『生き物はいるのか』


『植物は育つのか』


などなど疑問が挙げられた。

まともな質問で、感心したが、少し面白味が欲しかったのは内緒の話だ。


どうせなら、バナナはおやつに入りますか程度でも良いから、言ってくれないかな。

バナナってこの世界にあったっけ?


「結構この空間については不安なことが多いのですね。

では、一つずつ答えます。

『この空間は、空間魔法の技術を取り入れた、アルムドゥスキアと隣り合わせになるように創った、世界です。理論的には、三次元で構成されていますが、ドアを使い、アルムドゥスキアに移動する際、空間を移動するので、その瞬間のみです四次元システムを使います。そのシステムを、使うことで、世界観の時間軸の誤差を同時に調整します。空間移動と時間軸の調整の同時使用ですが、この場合でも五次元には至らず、あくまで四次元のシステムで起動させています』」



「…………すまん。よくわからん」


ごもっともです。すみません。


結局、ここは安全で、ガーディの存在がなくなったとしても、存在し機能し続けることは、わかってくれた。


動植物も地球の物も取り入れているが、決して空間を超えることはないので、パンデミックは起きないことも伝えた。


現状、空間移動はら扉間のみと説明した。


世界を渡るたび思うのだが、新しい世界の人々に説明をするのはやはりシンドイ。


説明が終わった時は、全員脱力状態だ。

幼い三人の子は全く理解できていなかったが、それでも、ここが安心して暮らせる場所だとわかってもらえただけでも嬉しい。



「では、僕は一度出かけてきますので、その間生活してみてください。

新しい土地が肌に合うかわかりませんから。

用事が終われば、一度様子を見に行きますので、ご自由に御過ごしください。

くれぐれも、御守り三つは肌身離さずようにお願いします」


やることはやったし、さぁ、玄関の扉を開けようと手を掛けた。


「なぁ、しばらくは会えないのか?」


アドフからの、行っちゃうの?

というまるで、仔犬が飼い主の外出を引き留めるような雰囲気を出してきた。


アドフって、仔犬系男子なの?

狼系とか肉食系じゃないの?


「うーん、用事が済んだら、一応顔を出す予定だけど、いつ戻るか確約は出来かねちゃうかな」


「そうか。……俺も一緒に連れてってくれないか」


「……」


「俺じゃ、役に立たないかもしれないけど、君にまだお礼を伝えてないし、また会えるとわかっていても、しばらくは会えないのは、心配……いや、俺が寂しいだけだ。君の邪魔はしない。連れて行ってほしい」



「僕、結構ワガママだけどいい?」


「大丈夫だ」


「ご飯作ってくれる?」


「問題ない」


「……じゃあ、護衛兼癒し担当としてなら、一緒にきて」


「……あぁ、ありがとう」


うっ、つい振り向いちゃったけど、タイミング良くアドフのベストスマイルを見てしまった。


惚れるな自分。

例えアドフが、西洋系のハリウッド俳優並みのイケメンだからって、惚れたら負けだ。


いや、負けというより、別れが辛くなるだけなんだけど、自分の寿命の事もあるし。

次の異世界の旅を躊躇しちゃうかもしれなくなるし。


ってか、男に惚れるって。長生きの弊害か?


こんなこと考えている時点で、すでに手遅れかもしれない。


そう思い、小さくため息をはいた。



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