第24話 変出者出現 変態は駆逐せよ!

死角といえど、比較的近い位置に佇むこの狐目青年は、興味深そうな目で、ガーディを見やる。


「俺さぁ、昨日見たんだけど、すごいよね。空に向かってなんか竜巻みたいなのぶっ放してたの」

あれ、どうやったの?


細い目をさらに細めて、何もわかりませんよ。といった風に近寄ってくる。

アドフがガーディの前に立ち、彼を庇うように立ち塞がる。


「貴様、いったいどこから出てきたっ!!」


アドフの怒号もまるで意に介さないように目を細めこちらに近寄ってくる。


「やだなぁ、そんなにピリピリしないでよ。別に取って食おうって訳じゃないんだから。ただ君は特別な力の持ち主なのかなって、ちょっと気になったんだ。ねぇ、きみって神子なの?」


巫女?神子?つまり神に仕える、もしくは神からの信託を仕り、人間の民に伝える役割のあるあの神子様の事?そもそもこの世界には神子っていう存在がいるの?


≪あぁ、いるぞ。各国には神殿があり、そこに神官や神子たちが日々神に祈りを捧げている≫


(!!ッ、アドフさん念話できるの?)


≪あぁ、不思議とガーディの焦ったような心の声がダダ漏れだったのか、不思議と聞こえてきたぞ。俺も頭の中で語る感じで返したら、うまく届いたようだな。これは便利だ≫


(早速チート能力を使いこなしているアドフさんに驚きだけど、ありがとう。この世界に神子という存在が確認できただけで何とか返答できそうです)


≪それはよかった。しかし、焦るディーはやっぱり可愛いな。昨日はやっぱり勿体無かったな≫


念話内容はアレだが、彼が楽しそうなので何よりだ。さて、今目の前にいる警戒人物を何とかしないといけないかな。


「さて、なんの話でしょうか。僕にはさっぱりですけど、貴方は僕に何を求めているのですか?」


やっぱり定番。ここは知らないふり作戦だ。あの時人に見られていたの全く気がつかなかった。最低でも気配探知しておくんだったなぁ。


「あははっ!超警戒されてるー。いやー今ね、王宮内がかなり混乱しているんだよ。何でかわかるかな。噂だと、自称魔術師か奇術師が王宮内でに入り込んで、王族や重臣達に手を掛けたとして、指名手配されてるんだよ。っていっても、顔もわからないから服装と背丈だけの情報なんだけど」


それだけじゃわからないよねー、と何とも掴みにくい口調で話す怪しい変人を無視して考える。

そういえば、国王陛下を始め複数の人に呪いをかけたなぁ。でも、別に殺したり傷つけたりはしていない。寧ろアドフに酷いことを平気で出来る人達だ。あの時はスケープドールで対応したけど。


「それで、君は僕をどうする気?」


このキツネ目は指名手配犯と言っていた。つまり捕らえるか殺すかする筈だろう。


「いやー。君ってちょっと面白そうだからついていこうかなーって思ってさ。何せ国王陛下のアレを使えなくした大罪人だし」

まぁ、方法がちょっと笑っちゃうけどねー。


こいつアレだ、胡散臭いのでもなく、変人でもなく、ただ単に問題に首を突っ込むタイプの変態だ。こいつは近くに置いておくとトラブルを引き起こす病原菌だ。こいつからは逃げないと絶対面倒くさい状況に発展する。


《アドフさんこいつバッドフラグ持ってるから関わりたくない》


《バッドフラグ? まぁ、俺も彼奴がいい奴とは思えない。ディーの判断に任せる》


念話を使ってお互いの意思を確認する。結果関わらないと決めた。


「すみません。僕たちには貴方と一緒にいるメリットが感じられないので遠慮します」


「いやー、遠慮しなくてもいいんだよ。俺ってこう見えて強いし、役に立つよ」


強くても別に今戦力が必要なわけではないし。この周囲にいるモンスター達も、どちらかといえば地球の野生動物に毛が生えたようなモノが大半だ。魔法界の魔物の比ではない。


「すみません。今戦力は必要ではないので、遠慮します。それでは」


言葉を区切り、【時間制御】タイムクロックを発動させた。自分とアドフ以外の時が止まる。


「今回は【転移】ばないのか?」


「うん、なんかこういうのは、じぶんの足で遠ざかるのを確認したいんだよね」


下手に【転移】んだら付いてきそうな気がするからやりたくなかったんだよね。


「あぁ、確かにクランシュタットが今どんな状況か詳しく知っていそうだが、ちょっと骨が折れる相手になりそうだな」


そうなのだ。言ってみればメンドくさい相手なのだ。この条件は、ハーレムチート小説でもBL小説でも鉄板なのだ。BLではさらにあの性格のパターンは、裏切りパターンか飄々としてるのに変な過去ありで『病んで』いるのだ。そんな人物を傍に置きたくない。胃に穴が空くのだ。それにせっかく……。


「俺としては、ディーの決断には賛成だ。それにディーを独り占めできるしな」


サラッと人がときめく事をのたまうアドフさんにドキドキするが、確かにそうなのだ。例え呪いの所為だとしても、好意を持っている相手と一緒にいられるのは幸せなことだ。

その事に気がついたガーディはアドフの手を握り、前を向いて進む事を決めた。



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