第23話 愛する者に祝福を
コンコンと、ノックの後、扉が開けられた。律儀にノックをするのはアドフしかいない。特に気にせずに迎え入れる。
「おかえr……」
彼は今、上半身裸だ。下の階に従業員はいなかったのか?いや、確かに見惚れる程の肉体美だけどさ、何処ぞの裸体の彫刻も裸足で逃げ出す程だけどさ……。
羞恥心はないのだろうか……。
固まるガーディを他所に、アドフはタオルを肩にかけ、近くのローテーブルの脇にどかっと座り込んだ。座り込んだまま腕を組んで目を閉じる。ガーディの方はなんとなく腕を組んでいるため、盛り上がっている胸を見る。
(これが『雄っぱい』ってやつか)
日本のとある女性が歓喜の声を上げるモノである。一部の男も含むが…。
「なぁディー、聞いても良いか?」
「な、なんでしょう…」
思いのほかアッサリと尋問突入ルートなのかと、ちょっと切なくなった。
「先程まで鍛錬として、剣の素振りをしていたのだが……剣が火を吹いた」
いや、剣に炎が纏ったのか?
アドフはどう説明しようか迷っているようだが、僕は決意した。
スゥーと息を吸い
「っすいませんっしたー!!!!!」
えぇ、しましたよ。土下座。頭を地につけましたとも。幸い足元は木の床だが
アドフはキョトンとこちらを見ている。うん少し可愛い気がする。気のせいかな?
結局全てを説明した。
昨夜無断で魔法を行使した事。半分成功、半分成功、失敗により、魔法を扱えるようになった代償に、呪いが付与された事。呪いの効果を打ち消す方法が現時点ではない事。呪いの効果をアドフィルゲイン、ガーディ共に影響を受けている事。命には別状はないが、今後、不便を強いてしまう事。何より、独断で行った事を謝った。
「誠に申し訳ありませんでした」
そう締めくくった謝罪は、相手であるアドフに届いたのだろうか?正直我ながら馬鹿だよなー。見限られて当然の事をしでかしている。
「成る程、そういう事か。ディー、他に隠している事はないな?」
「はい…」
アドフは一度目を閉じて考えた後
「そうか。なら責任を取って貰わねばならないな」
「責任…?」
ゆっくりとガーディのそばに歩み寄る。
「そうだ。俺は君なしではいられない身体になったんだぞ。困ったな。これでは君を諦める事は出来なさそうだ」
ガーディの頬をスルッと指先で撫で、耳元で囁く。アドフは困ったと言いながらもそれを全く態度にはみせず、寧ろ役得だというようにガーディに触れる。
「俺をずっと側に置いてほしい。ディーがいなければこの世界は塵に等しい。例えこの感情が君の言う呪いの力だとしても、これはこれで悪くない。俺はこれからも君の剣となり、盾となり、ずっと味方でいよう」
そっと唇に触れるキスを送る。その口づけはまるでこれからも忠義を尽くす相手に送る、忠誠の証のように優しく、そして厳かだ。そんなアドフの行動に飲まれながらも、これが彼の意思なのだと知ったガーディは、自身の持つ一つの魔法を使い応える。
「アドフさん。貴方の心受け止めました。白の契約に基づき、
この魔術は、白の契約または黒の契約を交わした者同士に使用できる特別な魔法だ。効果は発動者の任意の条件を基に効果を決められる。今回の効果は、心身の強化と能力共有、そして自由だ。特に自由は、重要な意味を持ち、アドフが決して契約者であるガーディに囚われず、自分の意思で常に行動、判断ができるように、彼らしく有る事ができるように。そんな意味を込めた祝福。彼に必要なのは力であり自由だ。その効果は、その気になれば世界の理からも縛られずに意思を貫けるようになる。それが【自由】た。
ガーディの掌がアドフの額に触れると其処から幾何学模様が現れ、光が体内へ入り込む。この魔法は契約を結んだ者であれば、同意の意思がある限り難しいものではない。そして簡単に終わったということは、同意を得ることができた証だ。
魔法による光が消え、再度静まった空間に、ククッと笑う声が聞こえた。
「君はすぐに魔法を使うのだな」
今まで、頬や頭を撫でる手が、背中に回り、小柄な少年を抱き寄せる。少年(300歳)なのだが……。
「魔法が僕の唯一の特技ですから」
それに
「魔法を教えるって言いましたから、約束は、必ず守りますよ」
「あぁ、そうだったな」
クツクツ笑いながら、片腕でガーディの体を支え、片手で頭を撫でる。主観的にも客観的にも甘やかしているのが目に見えてわかる。ただ、何故かいまは、その先に進もうという気持ちにはお互いならなかった。心の奥底では勿論繋がりたいと思っているが、それ以上に相手を思いやってやりたい。身体ではなくまずは心を満たしてやりたい。その上で先の進展がある。先日のあれは早急すぎたと反省すべき点である。
「今日はどうするか?」
もう日は沈む時間だし、適当に夕飯は済ませてしまおう。予定では明日・明後日位には、村の検証も一段落つくだろう。その時は一度アドフの家に転移魔術で戻り、近況報告してから、再び旅に出ることに決めた。
この日はお互い肌を寄せ合い、抱き合って眠った。暖かくて深く眠れたように思う。
翌朝、朝食を食堂で取っていると、予定より若干早いが、村の異常事態の収束の確認が取れたらしい。明日のでも、各ギルドや王国に報告を出し、依頼の取り下げを行う事になった。ガーディらも、事件が解決したら、もうこの村には滞在する必要はなくなる。なので、予定通り一度アドフの家に向かう事になった。
村長から再度お礼と、少しの報奨金を戴き、村を後にする。村の中ではさすがに転移魔術系統は使えない。人が一瞬で消えたら大パニックだからだ。今は村を外れた街道の脇、丁度いい人目に付きにくい木陰を見つけ、そこから
「ねぇ、そこのお二人さん。いや奇術師の少年君」
ガーディは思わず振り返った。
そこには、胡散臭そうな、商人風の痩せ型の狐目の青年が立っていた。
*参考設定
名前:アドフィルゲイン・ノーザンホーク
種族:ヒューマ
職業:旅人、騎士
HP:5680×3
MP:100000000000∞
物攻:1050×3
物防:1010×3
魔攻:12000000×3
魔防:6000000×3
速度:1365×3
幸運:380×7
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