4
☆☆☆
今から6年前。津我龍将は2回人を殺した。
1回目は、大切な友達。親友とも言っていいかもしれない。
彼はいじめられていた。それはあまりにも酷く、残酷なものであった。俺は傍観者だった。つまり、いじめていたのと何の変りもない。ただ俺は彼と遊んでいたしよく喋った。そう。親友のように。……だからと言って傍観者だったのでいじめていたことには変わりはないが。
当時同じ部屋だったある日。彼は俺を部屋に呼んだ。
――15時に部屋に来てくれ、と。
部屋に行くと、彼は首を吊って死んでいた。
俺はショックのあまり動けなかった。結局、ルームメイトが先生を呼んでくれたからよかったのだが。
……そこから俺へのいじめ(遊び)が始まった。
2回目は、犯罪者を。
親友が自殺をして1か月しか経っていない日のことだった。学校帰り、コンビニの前で俺は拳銃を持った男に連れられて、コンビニ強盗の人質となった。強盗の人数は3人。全員が拳銃を持って武装していた
そして、俺はいつの間にか男を殺していた。手には拳銃を持っていて体全体が血まみれになっていた。多分、3人とも殺してしまったのだろう。いや、目の前に広がる光景が俺が3人を殺したという証拠だ。
血まみれになって倒れる男3人。俺のことを軽蔑しまるで人殺しを見るかのような目で見てくる客や店員達。
その光景が何よりも証拠。
当時3年生だった為、「小学3年生が強盗を3人殺した」と一気に街中に広まってしまった。まぁネットには色々書き込まれたわ書き込まれたわ。コンビニの店員や客の命を守ったはずなのに、3人の命を奪った、と非難される一方だった。
学校でも人殺しと非難する生徒は多くない。でも、それを命を救った英雄とか賛同する生徒も少なくはない。
ルームメイトはそもそも気にしてはいないだろう。周治だってそうだろう。……まぁだからなんだって話だが。
俺は自分から人を近づけないようにした。自分に関わると何か悪いことが起きる。……もう親友(友達)が命を絶つ姿を見たくはない……あんな思いはもう2度としたくない……だから友達なんて言葉だけのものはいらない。
少しズレるが、『友達』って何なんだろうか?
……俺には全くわからない。
友達って……なんなんだろう……。
そんなものこの世の中存在するのだろうか……。
みんな『友達』『友達』言っているが見た感じ、誰も友達いないと思うのは俺だけだろうか?
……何が友達だ……ただのお遊戯仲間でしかないくせに……。
――『友達』とかくだらないことを言っている者達よ、猿を見習え――
☆☆☆
どうすんだよこれ……。
今、俺の目の前には妹が座っている。どうやら、かなり仲良くなったらしく一緒に食べよう、ということになったらしい。ありがた迷惑である。……ほら見てみろよあの妹のルームメイトの見る目。これバレてんじゃないか?
と、チラリと自分の体を見てみると、パンツがはみ出していた。あ、そういうことですね……はいわかります。
一瞬でスカートを直した俺はもう一度妹のルームメイトを見てみた。…………誰か俺を助けてくださいお願いします。
「そういえば、優奈ちゃん達は何組なの?」
美人ランキングナンバー1の『マジ空気読めよ』が空気を読んでしゃべり出す。
優奈とは多分和歌のルームメイトなのだろう。……ごめんいろいろと考えすぎて聞いていなかった。多分、君が優奈ちゃんかな?なんかリーダーっぽいし。
と見た瞬間、全然違うところにいた女子が喋り出す。
「私は和歌ちゃんと同じで5組です」
あ、そっちですねすみません。あなたリーダーというか、みんなに合わせてま〜す!ていう感じがしたから。1番最後に喋ろうとして話が変わっちゃう奴〜みたいなパターンの奴だと思ってた。ごめんね。
やっぱり女子中学生は年上に敬語を使うもんなんだな。すごい偉いわ。……まぁ俺今まで敬語使われたことないけど……そもそも年下とあんま喋んなかったし。
「私は2組です」
と全員が順にクラスを言って、最後の1人。
モジモジして下を向いている。恥ずかしがり屋なのだろうか?……いや、この子は俺と同じだ(1部分だけ)。いじめられっ子に違いない。
「……わ、私は――」
「先輩方は何組なんですか?」
こいつ……!
最後の女子の声を遮って話題転換するいじめっ子(仮)。
俺らの誰もが不思議に思ったのだろう、喋り出すのに少し時間がかかった。
「……私達全員1組なんだ」
………………はぁ!?え!?
こいつらも1組だったの!?全く知らなかった。まぁ部屋は同クラスの者としかならないからわかるはずなのだが、今日は少し冷静さを失うことが多すぎて忘れていた。てか1組ランキング多すぎだろ。他の女子がワァオ!ってなるぞ。男子暴走すんぞコノヤロー。
明日確認してみようと決意する。
「へぇ〜!そうなんですか!仲良しですね〜」
いや言ってること意味不明だから。日本語喋れまちゅか?
「そういう優奈ちゃん達も仲良さそうだよね」
あの〜ランキング1位の『空気読めない』さん?ここで言いますか?さっきの状況見てましたか?死にますか?やっぱ空気読めないな……。
案の定、テーブルが変な雰囲気に包まれる。
ほら見ろコノヤロー。
「……え、えぇ。とても仲いいですよ」
「そうなんだ〜」
「……あはは……2人はもう仲良しだね……」
と、ここでランキング3位の『ボケ役』さん。相変わらずの大人しさ。可愛さ。美しさ。心のオアシス――
「
こういう無理矢理ボケさえ除けばの話ですけど何か?
てか
何?こいうキャラのことなんて言うの?ツンデレなわけないし、ただのボケ役というわけでもないし……おい新キャラか?まさかの新キャラ登場か?……なわけないな。どっかのアニメでこういうキャラでてきそう。てか、大人しい=ラブコメ必須だから。俺的には必須だと思うから。まぁ俺にはそんなものいらないけどな!
俺は今、どんなに馬鹿にされようとツッコまれようとボケられようとしても喋ることは絶対許されない。何故か?……状況考えてくださいお願いします。
「龍……簀ノ子ちゃんとは違って……」
何故2回言ったし!?
静かになるテーブル。
と、ここでくるかランキング1位『空気読めない』!?
「……ピー」
規制音です……無視しよう。
「ピー」
規制かけてるから反応しないようにね。
「ピーピーピーピーピーピー」
「うるせぇな。少しは黙れんのか」
お!さすがヤンキー!この変態女を黙らせるとは!ナイスグッジョブ!
それより誰かこの変態女をどこかへ連れてってくれませんかね?ていうか変態女ってキャラいらないっす。マジいらないっす。訴えられるっす。周りから変な目で見られるっす。勘弁してくださいっす。よろしくっす。……何言ってんだ俺は。
「ご、ごめんなさい……」
「おう」
ま、真面目に謝りやがった……だと……!?
なんかまたしても変な空気に包まれる。またしても無言状態になるテーブル。これなら元からこんなグループにしなければよかったのに。てかそもそも俺がなぜ女子部屋なのだろうか?なんか今更疑問に思ってきた。性転換?なわけあるかボケェ。あの教師、真面目に捕まればいいのに。
「さ、さぁ食べよう!」
と、ランキング1位『空気読めない』登場。いや、空気読めてるな。今は食べるべきだ。これ始まってからもう30分経ってるけど誰も食べてないしな。
テーブルの上には豪華な食事が並んでいる。色彩豊かになっており、バランスもバッチリだぜ!となっている。無論、飲み物は牛乳だ。牛乳パックの方の。やっぱり成長時期には牛乳が一番だよな。俺はもう終わったけれども。
俺も食事をし始めようとした時、妹のクラスメートの1人がただマジマジと並べられた食事を見つめたまま、全く動かず無表情の子が目に入り、俺の指が止まった。
藍里が肘でつんつんとつついてきた。……うんなんかお前絶対勘違いしてるよな。何その『ロリコン』を見るような目は。何その変態を見るような目は。いや確かにこの格好して女子部屋に住んでる時点で変態ですけども。それ俺のせいじゃなくてあのクソ教師のせいだからね。
……俺は食事を続けた。
結局、最後まで1部が喋っていた(美野梨は葵に黙れと言われたので黙っていた。もうこれは葵と美野梨のペア成立じゃないだろうか)。まぁ1部というより3人ですけれども。
最後は皆で「ごちそうさま」と手を合わせて食事を終えた。だが、どうやらまだ喋るようだ。ちょっと俺はさすがにこれ以上はキツイ、と席を立ちトイレへ向かった。
トイレがすぐそこにあったのでよかったのだが、もし遠かったら1kmもはなれるのでもうキツイとかそういうレベルじゃない。というか体育館が広すぎるんだよ。
と、トイレの入口のところで立ち止まる。
……俺ってどっちに入ればいいんだ?
そう。男子トイレに入るか女子トイレに入るかという、人生最大の選択である。何故かって?……まず普通ならば女子トイレに入るだろう。だが、もしバレたらどうする?変態扱いされるよりも『逮捕』だよ?警察に捕まっちゃうよ?だからと言ってこの状態で男子トイレに入るのもダメだ。さてどうしようか。
男子トイレ?女子トイレ?これは入れ替わりと違って、女装しているだけだから完璧に犯罪になる。それだけはやっていはいけないことだと思う。
犯罪というのは、誰しもやってしまいそうなるものである。だが、そこで如何に他の方法を見つけれるかによって変わってくる。ミステリー小説なんてまさしくそうだ。勝手な思い込み、憎み、嫉妬、ストレス……これらが主にそうだろう。
全て解決策はある。
ここでやってしまう人とやらない人との差が出てくる。やってしまう人は、何も考えずに感情やらなんやらに流されてやってしまう。
やらない人は、感情をコントロールし周りに流されなず自分で考えれるからやらない。つまり、考える努力の差というやつだ。やってしまう人の中には「ちゃんと考えたのにでてこなかった!」とか言う人がいるが、果たしてそれはどうなのだろうか?ちゃんと考えた、俺はそう聞くといつも笑ってしまう。
ちゃんと考えたならば答えは見つかるはずだからだ。見つからないわけがない。物事には必ず答えというものが存在するからだ。
――ちゃんと考えないやつが偉そうなことを言う資格はない。
ちゃんと考えるんだ。何か方法はあるはず
――と、ここで思いつく。
そうだ、専用トイレを使えばいいんだ。
専用トイレ。俺はそう呼んでいる。スーパーとかでよく見かける、男子トイレと女子トイレの間にある老若男女誰でも使えるトイレ。
そう!そこなら俺が入っても怪しまれはしないぞ!
だが、そのトイレは体育館の上にあるジムの前にある。つまり、階段を上がって2階に行かなければねらないということだ。別にトイレに行きたかったわけではなかったのに、何故か今になってものすごい『トイレに行きたい!』病にかかってしまった。だから、早く行かなければ!
俺はすぐさま2階へと向かった。
トイレを済ませ、体育館に戻ろうとした時。ある女子を見つけた。……あの黙り込んでいた俺と同じ女だ。椅子に座って本を読んでいた。
俺は少し気になり(どういう本を読んでいるのか?とかだからね?)女子の隣に座った。
「……なんでしょう?」
普通の本を読んでいた。なんだ、ラノベじゃないのか。
女にそう言われても、俺は声を発せないわけで。
無言で本を見つめた。
「あの?」
「……」
ここで喋ったら人生が終わる。と――
「あの、男だとわかっているので喋ってもらって構いませんが」
「な、何ぃぃぃ!?」
久しぶりに声出した。
てかこいつ今なんつった!?
「……まず1つ、胸部からパンツが見えたこと。女性ならそんなことしません。いれるならシリコンです。そもそも、パンツを入れたのにCカップということは、元々が真っ平だったということを証明させます。はい、男だという線がでてきました」
……何言ってんのこの子。真っ平な女の子もいるぞ。
「そして2つ目、あなたが1回も声を出さなかったことです。七彩先輩に話しかけられた時もあなたは返事すらしなかった。とても仲良さそうなのに返事すらしないのはとてもおかしなことです。日本のマナーである「いただきます」と「ごちそうさま」を言わなかったことです。ありえません。つまり、声を出したくはない理由があったに違いません。はい、男だという線が強まりました」
……何この子コ○ン君?金田〇少年?
「そして3つ目、名前です。龍簀ノ子ちゃん?何それウケるんですけど。もうフルネームじゃないですか。まさしく、今唐突に考えたということが丸分かりです。それに、そんな名前を付ける親など存在しません――」
とその時。遠くから。
「
という男の声が。
あれれ〜?今存在しないって言ったよね〜?今のは何かな〜?
「――あれは下等生物達のあだ名でしょう」
「ひでぇ!?」
逃げやがった!すげぇ言い訳しやがった!
「……戻しますが、つまり男っぽい名前だったということがわかります。はいさらに男だという線が強まりました」
一気に持ってきやがった!
……何この子探偵か何か?
「そして最後に、あなたがわざわざ2階にトイレをしに行ったことです」
何この子ストーカー!?ストーカーは1人で十分よ!?いや1人もいらないけど。
「ここのトイレは結構広いですし、あまり人の出入りがないので空いているはずです。しかも、トイレに入る前数秒立ち止まりました。推測すると、どっちに入るか迷っていたのでしょう。そしてあなたは2階へ行きました。2階なら老若男女誰でも使えるトイレがありますしね。そちらに行ったのでしょう。つまり、男子トイレに入ろうか女子トイレに入ろうか迷ったわけです。そして、その格好からして男性であることがわかります。はい男性確定です」
やばいよこの子!この子ちょっと頭おかしいよ!探偵やったら儲かるよ!やった方がいいよ!
ちょっとなんか汗かいてきてしまった。おぉこれがミステリー小説でよくあるやつか。犯人だとバレそうになる時やけに汗でるよな。犯人の気持ちがよくわかります。恐ろしいですね。
「……それに、私はあなたがここに来ることを予測していました。現に今あなたは私の隣に座っています。まるで私を連れ去ろうとするかのように」
「一言余計だ!そんなことしません〜!」
この女恐ろしすぎる……本読みながらよくそんなこと言えるよな。
「……ただ1つ、わからないことがあるのです。何故あなたは女装をして、女子部屋に紛れ込んでいるのか」
いやそれはあのクソ教師がね。
「……まず、性転換という線を考えましたがどこか違うはずです。性転換を本気でしようと思うなら、今頃もうないでしょう」
ないってアレのこと?ねぇアレのこと!?
「次に、犯罪の方を考えました。「女子の下着クンカクンカしたいぜウへへ」とか「女子風呂入って直接見るぞ」とか。でも、それなら別に女装してまでしなくてもいいことなのです」
おいなんかこいつやたら演技上手いな!なんか一瞬俺の声に聞こえたよ!?俺はそんなつもりじゃないけどな!
「……わかりません。それ以外に思いつかないのです。……何故あなたは女装をして紛れているのですか?」
「ん……」
もうこれは正直に言うしかないな。
「……実は、岡田先生という先生が間違えて、俺の名前を女子の欄に書いてしまったんだ。訂正しようと校長に頼みに言ったのだが、校長が「まぁいいんじゃない?」とか言ったもんだから俺はなぜかそのまま女子部屋に。でも、それじゃ怪しまれるから女装しろと言われたのさ。ルームメイトは俺が『性転換』するとか岡田先生に吹き込まれたから性転換するという設定にしてあるが、バレるのも時間の問題だ。この事を知っているのは、妹とルームメイトの筧藍里と岡田先生とお前だけだ。ということで、これは他言しないように」
「……なるほど。謎が解けました。ありがとうございます。……名前を聞いていませんでしたね。お名前は?」
「
「私は
手を出したのに手に触れてすら貰えなかった。というか、こっちを向いてくれない。小学校の頃習わなかった?話す時は人の顔見て話そうって。
……ん?てか名字岡田?まさかな。よくある名字だしな。たまたまだろう。気にすることはなさそうだな。
「その岡田先生の娘です」
「マジかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます