5

☆☆☆


一方その頃。

岡田魅愛おかだみえ教諭は呑気に1人で食事をしていた。


別に1人になりたいわけではない。勝手になるのだ。何故か皆私を避けていく。何故だろう。やっぱり私が可愛いからか?ナイスバディだからか?


と、そんなことを考えているとトタトタ数人こちらに歩いてきた。

全員黒スーツ姿の男。一瞬、私を襲いに来たのかと思ったが違う。見覚えがある顔ぶれだったからだ。


――教育委員ですねわかります。


「岡田魅愛教諭。生徒から通報がありました、『先生に女装させられて女部屋に放り込まれた』というものです」


「え……」


アイツだな。絶対アイツだな!


「ということで、ちょっと場所を変えましょうか」


「いや、そのそれには訳が――」


急に腕を掴まれ引っ張られる。

それに抵抗する先生。


「暴れないでください。これは任意同行です」


なんか警察みたいだしよくわからないこと言い出した!?

女が男に力で勝てるわけがなく、岡田先生は引っ張られていった。


その頃、龍将は莉那と無言のままイスに座っていた。

龍将も莉那も読書をしていた。俺はたまたま本を持っていた。無論ラノベである。いや、ラノベしかないっしょ。マジラノベ神。

無言状態で、帰る勇気もなく本を読み続ける2人。

その時、廊下に響き渡るあの先生の声が聞こえてきた。


「ちょっと話ぐらい聞いてくれ!」


「だからあっちの部屋で聞くと言っているだろ」


どうやら相当テンパってるらしい。

ていうかあの人達誰だ?まさか岡先生を襲っているのか?……まぁそんなことはないと思うが。

と、近くにいた生徒の話し声が聞こえてくる。


「ねぇあれ教育委員でしょ?」

「岡田先生何やらかしたんだろうね〜?」


……おいマジか。ふざけ半分で通報したらまじで来たのか。教育委員マジ生徒思いっす!マジパねっす!


ておいマジかよ!このままいなくなっちゃうの!?なんか嬉しいけれども!けど見てよ!莉那を見てみろよ!さっきまで本に夢中だったのに今は恐ろしい顔して教育委員を睨みつけてるよ!?


「ちょっと殴って助けにいきましょうか……」


「待て待て待て!落ち着くんだ!」


いや、すごいマザコンということはわかりましたけど、一旦落ち着きましょう!?本当に殴りに行きそうで怖いんですけど!


本を閉じてイスの上に置き、今にも殴りにかかりそうな莉那を止める俺。


……どうしようどうしよう!真面目にやばいよ!完璧俺のせいだよ!

つか悪いのあの教師だろ!教育委員に捕まっても文句ないだろ!そうじゃないか!俺は別に悪くないんだ!そうじゃん!まぁいい放っておけばいいか。


と、莉那を止めるのをやめた瞬間。莉那は教育委員に飛びついた。


「「すみませんでした」」


「もう頭を上げてください」


今、頭を下げているのは岡田先生と俺である。何故か?俺が聞きたいはボケェ!なんで俺が謝らないといけないの!?


あの後、莉那が真面目に教育委員を殴りに行ってしまったので、体を張って止めたのだが、まさかの威力が強すぎて俺が吹き飛び、教育委員の人を巻き込んでしまったのである。ちなみにその教育委員の人は怪我をしてしまったようで。


何故か莉那の代わりに俺が謝る羽目になったのである。なんでだよ!俺逆にあなたを助けた側なんですけど〜!?なんで頭下げないといけないんだよ!


さてなんだろうこの無性に殴りたい気分は。でも手を出したら負けだ。

何事でも手を出したら負けである。人間、すぐに手をだそうとしてしまう。それは何故か?口で言うよりも何倍も効き目がいいからだ。


口で言われるなら人はどんだけでも(とは限らないが)耐えられる。しかし、肉体的にダメージを受けるとなるとわけが違う。肉体的にダメージを受けるということは、肉体と精神両方ともにダメージを受けることになる。そんなの、どんな頑丈な者だろうと最後まで耐え抜くことはできない。だからやり返してしまう。それが人間である。でも中にはやり返せない者もいる。


そう。それが『いじめ』だ。やり返せないから、一方的にやられる。これがいじめだ。俺はそれが許せない。いじめる方もいじめられている方も。どっちかが悪いなんてそんなのは決めれない。一般的に見ればいじめてる方が悪いのかもしれない。いや悪い。だが、全部が全部そうではないことを頭の隅には入れといてほしい。


口でわからなければ拳でわからせる。確かにその方がいいに決まっている。だが、そんなことをしていいとは限らない。今の時代、少し叩いただけでも訴えられる時代だ。少し暴言を吐いただけでも訴えられる時代だ。


――だから『犯罪』というものはなくならないのだ。


時代が人々を苦しめている。法律が国民を縛りすぎたのだ。縛りすぎたからこそ、些細なことが『犯罪』という形に変わってしまう。だから、『どうしたら犯罪はなくなるのか?』という疑問に対しての答えは1つだ。


――法律をもっと軽くするだけのことである。


(※あくまで津我龍将君という少年の意見でありまして、作者の意見とは違うものであります)


と、ああだこうだ心の中で言っているうちに話は終わった。やべぇ何も聞いてねぇ。


「では、津我龍将君が性転換をしたいという相談を受けたので、試しにやってみようとなった。ルームメイトの許可も校長の許可も取ってあると?」


「そうです。私はただ相談に乗っただけです」


おいおいおいおいおい。なんか俺が悪いみたいな雰囲気になってるのは気のせいかな!?


「……まぁ今回のことはそれでよしとしましょう。今後、このようなことがないように頼みます」


「わかりました」


ですよね〜……。ってこのようなことってどういうことだよ。俺が通報しないようにってか?

教育委員(?)がドタドタと部屋を出ていった。

無言になる部屋。


「おい……津我……お前が電話したんだな?」


「……すみませんでした」


よくわからないけど、とりあえず謝っておく。なんで謝る必要があるのかわからないけど、とりあえず謝っておく。

俺が謝ると岡先生は立ち上がり、腕を組み始めた。おいなんで上から目線なの?いや確かに俺よりは上だけどさ……俺何か悪いことした?え?電話したのが悪いことなの?え?岡先生がやったことは悪いことじゃないの?え?


……なんだろうこの無性に殴りたい気分は。さっきの教育委員の時よりも殴りたい。ボコボコにしたい。とわまぁできないもので。


「わかればいいんだ。これからはやめてくれよ?」


いやそれこっちのセリフだから!?


「……ったく……教育委員というものはうるさいものだな……な?莉那」


え?

と、ドアの方を見ると莉那が立ってこちらを見ていた。


「久しぶりですね。


「一応私は親なのだが」


「今は学校です。家庭のことは持ち込まないでください」


おいおい……どっちが大人なんだ。子供の方がまともだぞおい。


「はぁ……まぁいい」


あ、いいんだ。


「……なんでここにいるんだ?」


「この変態男に卑猥な言葉をかけられ、岡田先生方に助けに求めようと走ったら追いかけてきたんです。怖かったです。すぐ死刑で」


捏造にも程があんだろおおおおおお!?そもそも話しかけてきたのお前だし!?追いかけてねぇし!?お前が殴りそうになったのとめにかかっただけなんだけど!?


てか死刑っておい!安直すぎだろ!


「津我……職員室しょにご同行願おうか」


「なんでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


☆☆☆


「君〜?朝だよ〜?朝食の時間だよ〜?起きて〜?」


「ん……」


俺は藍里に起こされた。

なんだ……もう朝か……全然眠れなかった……。


昨日は何故か夜遅くに職員室に呼ばれ、なぜかいろんな先生に囲まれて怒られた。……なんででしょう。俺なんか悪いことした?いや、真面目にそこまで怒られなければならないことしましたか?


ほんとあの教師マジでクビになれよもう……。本当にありえない。訴えられるレベルだよこれは。


いや確かに俺だって承諾してしまったわけだし、2回目は自分から女装しましたよ?でもさ、そうさせたのは誰だろうね!?岡先生だよね!?


ここまで怒られることかな〜……てか地味にあの教師後ろで笑ってたし。ちょー本当訴えていいですか?絶対に勝つ自信ありますけど。他の先生も先生でそうだよ。そこまで怒る必要ありますかね!?真面目に怖かったよ!?もう死ぬかと思ったもん!涙出てきちゃったもん!


結局夜はそこまで眠れなかったし。ほんと訴えていいですか?

……初日から先生達に悪印象与えちまったよ……。


俺を起こして部屋を出ていった藍里を確認すると、俺はジャージを脱ぎ出して服を着た。まぁ制服ですけど。さすがに女子の制服を着るわけにもいかない。当たり前だが、男の制服だ。いわゆる学ラン。

着替えを済ませ部屋を出ると、もうすぐ朝食の時間だというのにルームメイトが全員待っていた。……なんていい子達なんだ。


「早く行くよ?」

「ちっ……おっせーな……」

「龍将君……一緒に……いこ?」

「……早くイこ……」

「君本当に遅いね〜」


と、それぞれが言ってくる。

……なんだろうこの安心感は。一気に心が浄化されたこの気分……すげぇ気持ちいい……。だからと言って、『学園ラブコメ』などというものはいらないけどな。


てか美野梨真面目キャラになっちまったよ!あの口を開けば下ネタしか言わないあの女が!登場してすぐに更生されちまったよ!さすがは美女ランキングだな!?でももう少し待って欲しかったな!(彼は行この本当の意味に気付いていません)


学園ラブコメはいらないが……ハーレムというものは悪くないものだな。


「あぁ行こうか」


まぁこんなのも少しぐらい許してやるかってことだ。

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