第13話返事

あれから、半月がたった。もう、彼から連絡が来ることはなかった。もちろん、会うこともない。私の中では終わったのだと自分を言い聞かせていた。でも、忘れることはできなかった。部屋にいても、常に、彼がいる気がして、余計寂しくなった。コンビニに、お茶を買いに行くとティアラの好きでいさせてという曲が流れていた。


ボタンを押したら、届くのになんでだろう?君の知らないメールが今日も溜まっていく。

会いたいなんて言わないから、側にいてなんて言わないから。届かない気持ちを伝えるにはどうしたらいい?誰か教えて。届かないこの気持ちは涙となってこぼれ落ちてゆく。言葉にしたら壊れてしまいそうで怖いんだ。気づいてよ。

瞳を閉じればいつでも君がいる。些細な思い出だけで私は生きている。空に描いた未来は手を繋いで笑い合っている。そんな少しの幸せでいいのにな。叶わないんだ。

ほんとはね側にいてほしいのにでもうまく君に伝えられない。届かない想いと分かってるけどねぇ?せめて好きでいさせて。お願い。


まるで私みたい。全部聞き終わるまで、コンビニを出なかった。


家に帰ると、彼からのラインが来ていた。私は、驚いた。くるはずもないと諦めていたのに。心臓が、バクバクいったのを感じながら携帯を開いた。

「久しぶり。手紙見たよ?会って話したいことがある。今日仕事終わったら行っていい?」

「うん。。。何時ごろ?」

「9時ぐらいには行けるから。待ってて?」

そうして彼が半年ぶりに私の部屋に来た。

しばらくの沈黙。。。先に口を開いたのは彼だ。


「あんな終わり方なんてないよ。。。俺だって美弥ねぇに話したいことが沢山あったのに。」

「ごめん。勝手なことして。」

「なんで言ってくれなかった?堕ろしたとか。」

「だって余計な心配させたくなかったし。話したら負担になるでしょ。」

「。。。俺はもし、あの時、話してくれてたら責任取るつもりだった。」

「無理じゃん。隠し子になるし、愛人の子なんて、世間に言えないよ。」

「それなんだけどさ。。。はぁ。」

彼は、大きく、ため息をついた。

「俺は離婚して美弥ねぇと一緒になるつもりだったよ。てか、もう、あの時から離婚しようと思うって話をしたかったのに、美弥ねぇが、避けるから嫌われたんだと思ってもう、いいやって、最初は思ったの。諦めようと思ったけどずっと美弥ねぇが、俺の頭の中から離れなくて諦めきれなかった。嫁は嫁で、相手と本気になってて、そいつと結婚したいって言い出してきて、子供も浮気相手になついてて、じゃ、お互いのために離婚しようってなって、俺が実家に戻ったの。で、俺ね、先月離婚したんだ。」

「。。。そうなんだ。子供とは、もう、会えないの?」

「会わないよ。まだ小さいから記憶に残らないし、嫁の浮気相手をパパって呼んでるからそのまま責任もって二人で育てていくって。」

「和くん、辛くないの?」

「辛いよ。でも。。。何より、美弥ねぇを失うほうがもっと辛い。もう、離れないでよ。俺にとって美弥ねぇは本当に必要だし、手紙に書いてあったように二人でありのままで笑ったり、支えあいながら、美弥ねぇと一緒に生きていきたい。俺は。。。美弥ねぇの夢を一番近くで、応援したい。もう、ほんとに、美弥ねぇなしじゃ生きていけないよ。離婚したばっかで、こんなこと言うのもどうかと思うけど、美弥ねぇ。。。?

俺と結婚してほしい。」

私は、固まってしまった。まさかのプロポーズ。予想もしていなかった。そういって彼は、ガザガザ何か出し始めた。

「これを受け取ってほしい。」

出されたのはティファニーの袋。その中には指輪の箱が入っていた。

「え?これ。。。」箱を開けると待ってましたと言わんばかりにキラキラ輝くプラチナの指輪がそこにあった。しかも、真ん中に、小さな、ダイヤモンド。私の誕生石だ。

「美弥ねぇ、4月誕生日だったでしょ。その時にほんとは渡したかったけど、離婚の話で長引いちゃった。ごめん。でもこれ見て?中に刻印してもらったんだ。」

To miya愛する人へFrom kazu


「いいの?ほんとに、貰っても。。。」

「当たり前じゃん!左手出して?」彼は、そう言って私の左薬指に指輪をはめた。

サイズもぴったりだった。なぜ彼が私のサイズを知っていたのかは謎だが、ほんとに、本当に嬉しかった。

「ありがとう。和くん。あたし、和くんのそばにいていいの?」

「うん。これからは堂々と俺の隣にいてよ。もう、どこにも行かないで。」

「ありがとう。。。でもいつかはあたし、宮城に帰らなきゃだよ?」

「あー。それね。手紙にも書いてあったね。でも、俺は、美弥ねぇが一緒なら、どこにでも行くつもりだよ。」

「え?仕事は?」

「だって、宮城にも、トヨタあるし、転勤願い出せば移動できるから問題ないし。」

「でも、今の地位はなくなるでしょ?見知らぬ土地で一からスタートになるじゃん。」

「美弥ねぇが、毎日一緒にいてくれるんでしょ?なら、大丈夫。俺また一からでも頑張れるから。」

彼の一言が今までの私の悲しさや、寂しさを溶かしていった。二人は抱き合い、激しく、激しく、キスをした。まるで永遠の愛を誓った口づけのように。もう、お互いの魂は離れることはできない。そう確信した。これからもずっっと、あなたと共に生きていく。もう、離さない。お互いの魂が、そう言っているように、お互いを激しく求めあった。


こうして翌週、二人で婚姻届を出しに行き、彼のご両親にも挨拶に行き私は、彼と晴れて夫婦になることができた。毎日が幸せだった。いつまでも恋人のような関係。夢に見たこの現実。神様がいるなら、本当にありがとう。と感謝をしたい。

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