第9話葛藤

彼との関係は、いけないことだと、分かっていても続けている。彼を失いたくない。彼と共に生きたい。私は、彼を愛している。


だが、子連れのお客さんで若い夫婦を見ると、彼も、あんなふうにパパをやっているんだろう。私を抱いたその腕で子供を抱き寄せる。。。

そう思うと、私の知らない彼が、彼の生活の大半を占めているのだ。とても寂しくなるし、その子供に対して申し訳なくなる。ほんとは、その隣に一緒にいて、笑い合えたらどんなに幸せなんだろうか?叶わない妄想をいくらしたところで現実は変わらない。


不倫は、男からしたら、所詮、遊び。地位も名誉も子供も、家族も捨てて、周りの反対を押し切ってまで、愛人との新しい人生に踏み出そうとはしない。分かっている。でも、もし、彼が、私に対して、本気で失いたくないと思ってくれてたら?そんな儚い期待をしている自分が情けない。


だから、私は、自分の都合のいいように考えた。この恋は私の片思い。と。


そう、自分の中で、決めていても、幸せな妄想は膨らむ一方だった。彼と会えばお互いが自然体で笑い合える。無理なくお互いに思い合い、愛しあう。だが、現実は小さな子供の父親。

私が、罪悪感に耐えられるうちは我慢ができる。ただ、この先、独立をしたいと思うと、側で応援してて欲しいし、支えとなって欲しかった。

本音を言えば、彼が、離婚して私のところにきて、共に生きて行きたかった。


だが、こんなこと言えるはずもない。不倫で、不倫相手が、本気になったら、大体の男が、重たいと思い、関係が終わってしまう。

それが怖かった。今の私には、心の支えが必要なほど弱い人間になっていたのだ。彼は、間違いなく、私の支えとなっていた。

いつまで続けるのだろう。この中途半端な関係を。期限を決めていつかはサヨナラしなきゃと、思っていても、なかなか、簡単にはできることではなかった。


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