第6話クリスマスプレゼント

時が立つのは早いもので、もう、11月も終わる。彼には、早めの誕生日プレゼントを送った。毎日会社に付けていってくれてるようで、嬉しかった。

すぐに、12月に入り、街は完全にクリスマス一色だ。イルミネーションが鮮やかに光り輝き、カップル達が仲良さそうに手を繋いで歩く。私は、疲れきった自分の顔をショーウインドーのガラス越しにみていた。またこの季節がきたか。と。


12月最初の休みに彼からの連絡だ。時計をみたら、9時を回っていた頃だった。いつも、休みの日には10時ぐらいまで、ずっと寝てるのだが、その日は彼からのモーニングコールで起こされた。

寝起きでまだ、頭が起きてないままに、電話に出た。

「もしもしー?おはよう。」

「美弥ねぇ!おはよ。起こしちゃった?」

「ううん、大丈夫。どしたの?」

「渡したいものがあるから今から、家行っていい?」

「え?寝起きだけどあたし。髪もボサボサ、すっぴんだし、スウェットで、ぐちゃぐちゃなんだけど。。。」

「いいよ?気にしないから。」

「なら、いよ?」

「分かったぁ!じゃ、今から行くね?」

数分後、彼が到着し、満面の笑みを浮かべ、部屋に入ってきた。

「渡したいものって?」

「はい。これ!クリスマスプレゼント!!もうね、ずっとこれを渡したくてウズウズしてたんだ。」

「ほんとに?いいの!貰っても」

「当たり前じゃん!早く開けてみて?」

「なになに?ピアス?」


彼が私に渡したのは小さな茶色い小袋だった。前に彼の誕生日プレゼントを渡した時に逆に何が欲しいかと聞かれ、ピアスやネックレスなどの身に付けるものがいいとリクエストしていた。袋を開けると中には、ビニール袋に入ったシルバーのネックレスが入っていた。

「わ!可愛い!!え?まじで、嬉しいんだけど♡」

私は一気にテンションが上がって燥いだ。

「しかもね?これ。見て?」

彼がそう言って自分のしているネックレスを見せた。金色の、馬蹄のネックレス。私の貰ったやつは、シルバーの馬蹄のネックレス。色違いのお揃いだった。

「まぁじで?!キャハ。ほんとに?嬉しいよ?お揃でしょ?」

「そうだよ。ピアスは、センスが問われるし、難しいから、ネックレスにしたんだ。」

早速、付けてみようとしたが、寝起きで指先に力が入らず、上手くつけられなかった。

それを見て、彼が「付けてあげようか?」

「うん。寝起きで力入らないや。お願いしてい?」

彼に近づき、髪をかきあげ、後ろを向いた。そっと、彼は私にネックレスを付け、首筋にキスをしてきた。

「どう?似合う?」

「うん。やっぱり、凄く似合ってる。綺麗だよ。美弥ねぇ。」

「ありがとう。」私はお礼に彼の唇にキスをした。

「美弥ねぇに、似合うやついっぱい探したんだけど最終的に、これにして良かった。温泉はダメだけど、普通にお風呂入るときとかは付けてても、錆びたりしないから大丈夫だよ。ちゃんとした、シルバーだし、結構いい値段したんだ。時計のお返しね。」

「高かったでしょ?大切にするね。ありがとう。」

彼は、それを渡したあと、用事があるとのことで、帰っていった。

私は鏡を見て、一人でニヤけた。首にはキラキラと光る馬蹄のネックレス。とても、とても嬉しかった。クリスマスプレゼントを貰ったこともそうだが、何より、彼がお揃いのネックレスという意外な決断をしたからだった。セフレ、または、都合のいい女ぐらいにしか、思われてないんだろうなと思っていたが、大切に思ってくれてたことに初めて気づいたのだ。彼の気持ちをしっかり受け取った。通常、付き合ってもない女に、まして、気もない女には、お揃いのネックレスを送ったりしない。それぐらいは男心を知っているつもりだ。

後日、男性が、女性にネックレスを送る意味、馬蹄のネックレス意味、それぞれを調べたが、ネックレスを送る意味は、繋がっていたい、独占したいの意味だ。馬蹄は、幸せが、訪れるという伝説が言われていて、魔除けや幸運のお守りとして有名だ。

彼の気持ちが入ったこのネックレス。未だに私を一段と輝かせてくれている。

私の宝物だ。


12月は、飲食店は繁忙期。クリスマスメニューや、おせちの準備などで、なかなか休みの日も自由がきかなくなる。しかも、年末は、31日までずっと休み無しの勤務だった。もちろん、クリスマス期間中は、多忙のせいもあり彼とは、会えずじまい。クリスマスが、やっと終わり、一段落ついた時私は彼に、クリスマスプレゼントで、彼が欲しがっていたブランド物のダウンジャケットを買ってあげていたのを渡すため、連絡をとったが、彼は、あまり乗り気な感じではなかった。


「今日会える?」

「なんでー?」

「クリスマスプレゼント渡したいからさ。」

「あー。。。まじで?じゃ、今から行くー。」

「ハァイ。鍵開いてるからね?」

「あ、俺、今日車だから、下降りてこれる?」

彼は車で来て、部屋には上がらなかった。それが何を意味していたのかは、その時は分からなかったがどことなく思いつめたような暗い表情をしていた。テンションも、すごく引くかった。疲れているのだろうと思って私も、無駄に口を開かなかった。


「ハイ。これ。クリスマスプレゼント」

「ありがとう。」

彼は、黙々とプレゼントの袋を開け、私の予想よりはるかに期待はずれな喜び方をした。

「モンクレールじゃん。ありがとう。着てみるね。」

彼は、そう言ってダウンジャケットを着始めた。「サイズどう?大きくない?」

「大丈夫じゃない?すごく、似合ってるよ?」

「ありがとう。」

それから、しばらく沈黙が続いた。次の日も仕事があるため、私も遅くまで遊ぶわけには、いかなかった。

「このあと、どうする?どっか車止めてお話する?」

私は、今までと違う空気を感じた。彼は、私と、あんまり今日は居たくないんだと悟った。

「いや、明日も、仕事だし、帰ろうかな。」

一瞬困った顔をした彼を見ないようにして、車から降りた。

「美弥ねぇ?。。。

いつでもまた、誘ってね?俺も誘うからさ?」

「うん。ありがとう。ゆっくり休んでね。おやすみ。」

「おやすみ。またね。。。」

そう言ってキスをし、車は消えていった。彼は、確実に私に、何かを言おうとしていた。何か話したかったのかもしれない。だが、きっと私にとってはいいことじゃない。女の勘だ。彼が、こんな態度に出たのは初めてだった。たまに、気分屋なのかと思う時もある。自分勝手だと思う時もある。モラハラなのかと、疑う時もある。だがそれは、彼の中で何かモヤがあるときだ。なんとなく、最近ではそれが判ってきた。


年末年始。唯一ののんびりできる休み。私は、彼と、ともに過ごしたかった。だが、彼にも、友達など付き合いがあるだろうと思い聞いてみた。


「ねぇ。年始は、誰かと過ごすの?」

「ん?家族とか、いろいろだよ?」

私の入る隙間がないと思い、諦めた。

「そか。良いお年を。」

それから彼からの連絡はなかった。

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