第2話優しさ
あれから数日、またもや、携帯が鳴る。彼からだ。
「こないだは楽しかったね。今度いつ会えるかなぁ?」
私は、嬉しかった。出会い系サイトで知りあった人の中にはやるだけやって、次の日から、音信不通な最低な奴もいるからだ。気に入ってくれたんだと、安心した。正直、あの夜が忘れられなかった。
「明日は?」
「いーよ♡俺も仕事休みだから。19時位には、時間空くから、それからなら」
次の日休みだったため、彼を部屋に呼んだ。出会って二回目なのに、体が勝手に彼を求める。
いつの間にか、ベットに、彼が横になり、私が彼の、熱くなったところを咥えている。彼の、漏れる吐息で、私は感じていた。
「お姉さん、スタイル良すぎ!まじで、俺好み。ヤバイわ。」
「えー。そんなことないよ?」
そんな甘い時間が、なんとも言えない幸せな時間になっていった。
次の週の休みは、私が調理師免許をとりに区役所に行かなくてはならなかった。専門学校を卒業し、今の職場に入り、しばらく放っておいたが、独立を考える年になり、その際に必要だからと、そのタイミングになってしまったのだ。
その時はお店の経営も、最悪状況で、給料が、3ヶ月遅れ、生活も、非常に苦しかった。家賃の更新もあり、貯金も全て底をつき、カード会社や、保険会社から、督促状がきていた。
仕方なく、親に頼ろうと電話をかけた。
「あ、お母さん?ちょっと悪いんだけど、お金貸して?」
「何いってんの!こないだ2万貸したばかりでしょ?」
「いや、分かってるけど、今月家賃の更新だし、今給料遅れてて、手元にないんだよね?」
「こっちだって、年金で暮らしてんだから、そんな、給料遅れるようなとこ辞めてしまいなさい!」
その言葉に私は、溜まってた何かが爆発して、逆ギレした。
「ふざけんな!どんな思いで、こうやって頑張ってると思ってんの。あたしだってすきでこんなふうになってるんじゃない。辞めれるわけないでしょ!もう、いい!一切頼らないから!!辞めてしまえなんて言うなら親子の縁きるから!」
本当は、この喧嘩がなければ、もう時期来る、夏休みに、実家に帰って、料理を振る舞う予定だった。しかし、兄弟までもが中に入り、親に心配かけるなと散々怒られた。
分かっている。三十路手前にして、年金暮らしの親に心配かけて、泣きついて、なんとも情けない話だ。
これをオーナーに相談した。
「お店の状況も、分かりますが、今、家賃が、払えなくて督促状がきてます。親にお金貸してほしい。と言ったら断られ、大喧嘩しました。どうしたらいいでしょうか。」
「分かった。お前の分は最優先すべきだな。今のこの現状を作ったのはお前たちなのに、結局俺は、経営者として、失格なんだな。お前の親にまで心配かけてしまってる。」
ひどく落胆した、オーナーが、私に対しての怒りを表してるのが、伝わる。
お店の売上を落としたのは確かに私と、もう一人の、ホールスタッフだ。
というのも、こじんまりとしたレストランなので、少ない人数でやっているため、一人で2人分以上働くのは当たり前だ。だが、私の部下である人は、モンスターで、全くと言っていいほど言うことを聞かない。やる気がない。彼がいたら、お店が、スムーズに回らない。常に出るのは人のせいにしたり、言い訳ばかり。そんな彼と、お客様の前で言い争いをした。営業中、満席の中、彼は、何もしない。私の悪口を、メモし、陰険にそれを、見えるとこに、コソコソ隠す。そんな、やり取りをさんざんしてきて、私も、仕事に対しての意欲はなくなっていった。ただ、人生観を教えてくれた、オーナーを救いたかった。もし、店を潰してしまえば、オーナーに、何千万もの、借金が残り、一家離散になるからだ。
そんな悲惨な目に合わせたくなかった。私がここに、入り、料理、人生、人としてどうあるべきかを教えてくれた人、そして、私が心から、愛した人だったからだ。
そう、元カレの前の彼。不倫相手だった。私がこれまで生きてきてこの人以上は、いないと思い、人生をかけてもいいと思える素晴らしい人で、ほんとに尊敬していた。だが、オーナーとは、お店の経営も、悪くなり、それどこではなくなってきて、自然消滅。お互いに戻る気はなかった。
「お前さぁ?辞めて実家帰るか?」
「なんでですか?」
「これ以上、お前の人生狂わすわけに行かないだろ?あいつがいる限り、店は、よくならないんだし、お前の、親に心配かけてるし、お前も、もう、やりたくないだろ?」
「。。。」
「無理しないで帰りなさい。お店は、来月で潰すから。」
「やだ。無理!それだけは絶対しないよ。お金はどうにかするから!」
「この戦いの、終わりは見えないんだよ?いいの?」
「いいとか、悪いじゃなく、このままあなたを見捨てて、惨めな、思いさせるわけには行かないから。」
近くの公園に、呼び出された私は、オーナーと泣きながら話した。
どいつも、こいつも、なんで、辞めろって言うの?あたしが、なんのためにやってると、思ってんの。夢の実現のためだよ?確かに、悪いのは、あたしだけど、なんで、みんな、分かってくれないの?
サングラスで、顔が隠れてたが、泣きながら家に帰った。
鏡を見ると、両目が、赤くなり、腫れてる。まるで土偶だ。ひどい顔。誰にも、理解してもらえない孤独感から、憂鬱で、夕食も、何も食べる気がしなかった。落ち込んだ。なんと情けないんだろう。人に迷惑をかけない。それが、あたしのモットーだったが、気がつけば、周りの人間みんなを傷つけて、人に迷惑をかける人間になっていた。自暴自棄になって、死にたくなった。
そんな時、彼から、ラインの着信だ。
「ヤッホー?お疲れ様。今から会える?」
会って泣きつきたかった。でも、見せれる顔じゃない。私は、断ろうとした。
「ごめんね。会いたいのは、山々だけどいろいろあって、泣きじゃくって、ひどい顔してるから、会えない。」
「大丈夫?行こうか?でも、お姉さんが、会いたくないなら、無理にとは言わない。ただ、俺は、少しでも、力になれるなら会ってギューしてあげたい。」
「見せれる顔じゃないよ?」
「気にしないよ?」
「甘えていい?
「はーい!」
数分後ピンポーンと、家のベルが鳴る。
「大丈夫?」
下を向いたまま、私は、彼に全てを話た。
何も言わずに、ただうなずいて聞いてくれた。
私は、甘えてしまったのだ。彼の優しさに。
そっと寄り添い、彼の、胸の中に、頭を埋めた。彼は、優しく抱き寄せ、大丈夫だよ。と言って抱きしめてくれた。信じられないことに、その瞬間、今までの嫌なことが体内から消えていくのが分かった。
スーっと、毒素が、抜けていく様な感覚。こんな経験は初めてだった。
「なんでだろ。嫌なことが全部消えていくのが分かる。ありがと。。。」
彼の、優しさに、救われた。その後は二人の愛の時間。
「俺、なんか、弱みに、漬け込んで、やりに来たんじゃないからね?ほんとに、お姉さんが、心配でさ。でも、大丈夫だよ?ほんとに、強い人間は、自分の弱さを人に見せられる人間だから。お姉さんは、強いんだよ?負けないで、頑張ろ?」
「ありがと。。ほんとに、ありがとう」
彼は、優しく、思いやりのある人だ。そんな彼に私は徐々に惹かれ始めていた。この時はまだ、自分でも、気づいていなかった。。。
ただのお気に入りのセフレ感覚だったはずだ。
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