第3話
僕達は無事着地した。そして着地するや否や楕円形だったビショップは僕を吐き出した。
彼に丸呑みされて何も見えないまま地面に
そして命は無事だと分かった彼は一旦安心した後、
人の言葉を理解したり
そう思いながら辺りを見渡した。ひたすらに真っ暗な空間だった。そう言えば、オズが大気汚染について話していたのを思い出した。
「動くな!」
中国語が唐突に聞こえた。直ぐさま僕の機械としての機能が役割を果たし僕の言語を最適化してくれた。
声の方向へ視線を向けると僕よりも小さな子供達が僕とビショップに銃を突きつけている。
「君達そんな事しちゃいけないよ、うちに帰らないと」
「黙れ!
黒子。それが何を意味するのか僕には分からなかった。ビショップが代わりに口を開いた。
「君達は何時から武装集団になったんだ?」
響めきが起こった。ある子供は犬が喋る、という事情を目の前にして尻餅を付き、ある子供は驚きの余り持っていたAKを手から落としてしまっている。
これが当たり前の反応なんだろうなと思うとSGの仲間達は以下に異常か再確認出来た。
「俺達は黒色なんだ。暗い暗い闇の中を生きる事しか出来ないんだよ!」
黒子達の中でもリーダー格であろう少年が僕とビショップに向け吠えた。そうだそうだと賛同する子供達の声。
どこまで大きくなるのか分からない声を聞きながら僕は
[無事、爬虫類達の縄張りに入れた様ねルーク。早速お困りかしら?]
通信相手はカレン・ラーソン。僕達の
「黒子について教えて欲しい、それと僕達が今いる場所も」
[任せて、えっと、あぁこれね。黒子ってのは中国が長い間とっていた一人っ子政策の裏で生まれてしまった子供達の事ね]
「じゃあこの子達は何処にも帰る場所が無いって事?」
[そのようね、纏まっている方がまだ安全よ。アンドロイド達も危険だし、何より爬虫類共が武装してる彼等を見つけたら絶対に消すに決まってる]
醜い物は存在しなかった事にする、自分にとって不利になる事象は揉消す。それが国と言う生き物が繁栄の為に手に入れた
子は親を選べない。同じく国も選べない。彼等は何も悪くないくて、ただ理不尽とも言える彼等にはどうしようもない力が、脈々と受け継がれてきた歴史が、黒子という名の
[今あなた達がいるのは
そう言われて対岸を見るとそこには大きな壁があった。
単なる壁では無い。あの中で今まさに総書記が囚われていて、さらに核燃料を今か今かと待ち望む殺戮マシーンが潜んでいるんだ。僕達の目の前に広がる大きな河が壁への行く手を塞いでいる。
何とかしなければなら無い。対岸へ何とかして渡らなければ。
「おい、ルーク!何とかしてくれ!」
ふと気がつくと子供達にビショップがこねくり回されていた。喋る犬に対する免疫がついたのか彼等はビショップが可愛くて仕方がない様だ。仕方なくビショップを、抱き抱え彼等から遠ざける。
「ねぇ、君達。僕達はこれからリィ・ジョウゲンを助けに行くんだ。どこか近道はないかな」
「助けに?じゃあ今ジョウゲンは誰かに捕まってるのか?」
リーダー格の少年が過敏に反応した。自国の最高権力者が何者かに捕らえられている。それがどれ程この国を脅かすか不安なのだろう。
「そう。だから僕達は助けに行くんだ。教えてくれない?何処かに対岸に渡る近道はないかな?」
「余計な御世話だ、あいつも、その前のお偉いさんも俺達を否定した。見ようともしなかった!お断りさ手助けなんて俺達はしない!そうだろう皆、これは天罰さ!」
子供達の声は大きくなった。自業自得だ、さっさと死ね、あらゆる種類の暴言が飛び交っている。
さっき彼が僕に総書記が捕まった事を確認したのは何も国の為やこの先が不安だったからじゃなく、ただ自分達を苦しめていた人間が今まさに危機に陥ってるという事に心の底から歓喜したかっただけで、小さな子供達は自分達の置かれている状況をしっかり把握していた。リィ・ジョウゲンや、その前の総書記達が勝手に創り上げた政策により自分達は親の愛も知らず生き方も知らず自分達だけで生きてきたんだ。
僕は自分の楽観的な考え方を恥じた。
「ごめん、僕は君たちの事何も知らなかった。今も勿論全てを知った訳じゃない。でも、総書記を助けたら僕から総書記に君達の事を伝える。だから教えてください」
子供達は僕の言葉に耳を傾けてくれた。数分の沈黙の後で黒の洞窟と、リーダー格の少年がボソッと呟いた。すると他の黒子達は恐怖でガクガクと震えだした。僕達の目の前で子供達は明らかに恐れを示している。
[
「ありがとう、カレン」
数分して黒の洞窟は如何やらアンドロイド達が対岸に渡る為に使う近道という事が分かった。それを恐れているのはアンドロイドに酷い目にあわされたからだろう。
「ビショップ、カレンの話は聞いてたね?」
「勿論だ。洞窟探検だろ?」
抱き抱えているビーグル犬の顔が微笑んでいる。この犬はこの任務を楽しんでいるんだ。僕の両手だけでなく、自分の両前脚にも世界の命運がかかっているというのに飄々としているなと思いながらも、そんな相棒が隣にいてくれるから自分は自分で冷静でいられるという事を感じ、探検へ向かった。
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