フランとフローラ

「ただいまー!」

元気な声が響く。活発そうな男の子がその姿を見せた。もう歳は15くらいかそこらの長身で痩せているが締りのある体つきをしていた。彫りがそこまで深い訳では無いが、きちんと通った鼻筋に、切れ長の一重まぶたで睫毛は長かった。髪は黒く透き通っていて短く全体的に小顔だった。フランである。

「おや、おかえりなさい。今日は何びきくらい釣れたね」

アムトが椅子に座っていた。もう歳もかなりいっていた。あれから15年が経っていた。

「大漁だったよー!5匹もメバラが釣れた。姉ちゃんは?」

「ああ、2階で編み物をしているよ」

15年も経っていたのである。世界はどうなったのか、説明しておきたい。あれからオルトワール王国はジガン帝国に名を変えた。アムト率いるメイド軍団と青の騎士団の生き残りたちはオルトワール王国と最も仲の良かったユムル王国に何とか逃れた。大きな川で国境を隔てられていて、かつ、軍団も強いユムル国は青の騎士団を大切に守り、ジガン帝国とは反対側のエルファ共和国に近い山の中に姿を隠させた。ジガン帝国は強く、ユムル王国を度々侵略しようとしたが、世界連盟軍を崩すことは出来なかった。そこでジガン帝国は世界連盟軍の結束をつき崩す行動を取り始め、ユムル王国に攻撃を加えつつ、ユムル王国とは反対側の国々を次々に支配下に置いていった。

「姉ちゃん、ただいま!」

2階に上がって、姉の部屋を開けると、姉は編み物をやめて新聞に目を光らせていた。

「なにしてんの」

「エルムンガンドが堕ちたわね。これで北方の国全てがジガン帝国の支配下にあることになったわ」

「んー、そんなことよりさ、今日は大漁だったよ!メバラが5匹も釣れたんだ」

フローラは長い髪を指で人撫でして、ため息をひとつついた。その美しさは彼女を見ている鳥さえ、飛び方を忘れてフワフワと落ちていくようなものだった。彫りが深く、金色の髪の毛をしていて軽いウェーブがかかっていた。フラン程の身長はないが、フローラも女性にしては身長が高く、また、女性特有のメリハリのある体つきをしていた。それはとても知的なメリハリであって、決して緩慢ではなかった。

「青の騎士の末裔がこれとは世も末ね」

フローラは、とりあえずご飯作りましょうかとフランの肩を叩いて階下へ誘った。

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青の騎士 かさかさたろう @kasakasatarou

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