青の騎士

かさかさたろう

プロローグ 内乱

昔ーーー。と言っても、それほど遠くない昔、世界は聖なる騎士と崇められた『青の騎士』と呼ばれる人々に守られていた。数百年前に混沌としていた世界に突如現れ、世界を「光」によって融和させた『青の騎士』達は、オルトワール王国という平和を最も愛する国を好み住処とした。青の騎士達は少数ながらも勇猛さと賢明さ、優しさを持ってオルトワール王国の要職につきながら活躍し、やがて世界連盟という組織を築き上げる。

そして、その10年後に起きた内乱の中で姿を消したーーー。


カーン、カーン、カーン。

警戒の鐘の音とあたりに次々と浮かぶ煙に、フローラは目覚めた。父と母の姿を探すがいない。……どこにもいない。あるのは、この前生まれたばかりの小さな男の子フランの姿だけだった。産着に包まれ、すやすやと眠る弟をそっと抱いて、ようやく8歳になったばかりのフローラはこの異常事態に冷静に頭を働かせながら、フランを抱き、その場を離れようとした。

その時だった。


「へっへっへ、お嬢ちゃ〜ん……どこに行くのかなぁ」


ヒヒヒと下衆な笑い声をあげる兜と鎧の出で立ちをした兵士が、手に剣をもってこちらに近づいてくる。

フローラは男を鋭くにらみながら、懸命に活路を見出すべく考えた。

後ろの階段は火の海、前には明らかに危険があり兵士がゆっくり詰め寄ってくる、部屋に戻れば窓があるが、ここは三階、飛び降りることは困難を極める。どうするのか……。


「お嬢ちゃんも運が悪いねぇ。……青の騎士に生まれてくるとはねえ。そこの赤ん坊もねぇ。さあ、今楽にしてあげるからね……」


兵士が飛びかかる瞬間、今、フローラが出てきた側の廊下の壁から巨大な人間が壁ごと兵士を押しながら部屋の反対側の壁までぶち抜いて、城の外へと押し出した。丁度壁と壁に挟まれたサンドウィッチの具のようになって兵士は城から落ちていく。


フローラは流石に突然のことで思考回路も限界点に到達した。心臓のドキドキが止まらない。しかし、生きるためにも、次の脅威を確認せねばなるまい。ゆっくりとその巨体を下から上まで確認していくと、そこには、青の一族のメイド長、アムトの姿があった。


「アムト……。」


ふっと、気が緩んだその時に、フローラはフランを守りながらもその場に崩れるよう倒れ込む。

そのギリギリのところで、巨体のその指が彼女の小さな体を優しく包んだ。

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