第9話
閑静な住宅街に佇む、比較的大きめののどかな公園がある。僕達のミーティングルームはそこだ。木で出来た、割とお洒落な屋根とベンチがある場所もあるので、雨の時も安心だ。細くて長い、綺麗な手をしているツグミがコカ・コーラの缶をペプシッと開け、喉を鳴らして飲む。ぷはぁと息を漏らしてから喋る。
「取り敢えず、及川の動きに注意しないと。あいつら私達のこと嗅ぎまわってるわね」
「なんでも最近、少し風紀が乱れていて乱している張本人とそのグループが存在すると及川は睨んでいるようです。私達のしでかした岩下先生の一件や、今回の件によって生徒が賑やかになったのでしょう」
とクラス長山田。山田は学年長だから生徒会議に出るので、生徒会長の動向を伺うことが出来る。
「あの程度で風紀が乱れていると言えるなんて、この高校がよっぽど変に保守的で、人としての何かを失っている証拠だな」
僕は苛々としながら言った。
「生徒が目を覚ましはじめている証拠ね」
とツグミ。
「それはどういうことであろうか?」
と首を傾げる村井。
「彼らにとって生徒は眠っていて欲しいのよ。半分寝惚けたまま学生生活を送ってもらえると、楽だからね」
ふむぅと唸る村井。
「たけちん、シーソーしようシーソー」
村井の服を引っ張る維菜。
「おぉ、維菜どの」
がははと笑いながら維菜と村井は少し遠くにあるシーソー台まで行って乗り出した。
「しかし私達は別に処分を受けるほどのことはしていないわ。いや、たまにちょっとしてるけどあのぐらいなら大丈夫でしょ」
「それにしても、及川琥珀という人物。私が今まで会った人間の中でも、ずば抜けて不可解であります。なんだか、人として何処かが、圧倒的に欠如しているのです」
手を顎に当てて維菜と村井のほうを見つめながら言う伊集院。
「俺からしたらお前もかなり奇人変人の類に入るけどな」
と僕。
「たけちん、重すぎてシーソーにならないよー」
と維菜は言いながら、ほっぺたを膨らませている。
村井は頭を掻きながら「すまぬ維菜どの」と言っている。遠藤はそれ観て爽やかに笑っている。
「ニノが言うには、生徒会長はツグミのことを恐れてるんだよね?」
遠藤はすぐ隣にあるブランコに座り漕ぎをしながらそう言った。
「あぁ、奴は予測不可能な出来事に出くわすと頭が混乱して動揺するんだ。奴はツグミとすれ違っただけでいつも動揺している。俺は人の動きに敏感だからそれが見て取れて分かる。つまりツグミという人物が全くもって自分の想定の範囲外過ぎるのでツグミの醸し出す空気からそれを読み取って混乱するんだろう」
「なにそれ?私が超変人とでもいいたいわけ?」
とツグミが後ろからその長い手で僕の頭を掴んで力をググッと入れてきてドスの効いた声で言ってきた。「うん」と言うと胸倉を掴まれたので、冗談ッス、スイマセンッスと冷や汗を滲ませて苦笑交じりに言った。
「それはそうと、そろそろ中間テストだね」
青褪めた表情で言う遠藤。
「余計なことを思い出させてくれたな」
と僕。そう、みんなChallenge to delusionのミッションのせいでテスト勉強を全くしていないのだ。キィコキィコとブランゴの揺れる音と、夕焼けの空と、テスト勉強という重みが嫌なほどに郷愁を漂わせてマッチしていた。
――ホッ ベベンベンベンベン
佐久間高校 西に在りて 我ら英雄佐久間蹴球団 世にはばからん 生きる伝説
天下を睥睨 大和魂ここに在りき 東雲の空 輝けし一筋の光
我らの歴史に残されたり 栄光 築きたまえや
――アイヤッ ベンベンベベベベンベン
夜桜のように美しき かつ 吠え猛る獅子のごとく 我ら蹴球団 ここに在りき
天上天下・佐久間蹴球! 天上天下・佐久間蹴球!
天上天下・佐久間蹴球! 天上天下・佐久間蹴球!
――イィャァッ ベベベンベンベンベン
伊集院の津軽三味線、そして村井の和太鼓の音、更には吹奏楽部の演奏によって「天上天下・佐久間蹴球」の歌が扇町球技場に響き渡る。
周囲にチラホラと観客席にいる人達は唖然としている。
そりゃそうだ。爆裂!関東高校サッカー大会は対して大きい大会でも無いのにも関わらず、この盛り上がり様。しかもただの1次予選。
それなのに、ざっと100人の、魁!佐久間サッカー部ファンクラブ会員の女子が集結して、声援を飛ばしつつ、天上天下・佐久間蹴球の歌を歌っている。
その光景はただ一言、こう思わせる。『狂っている』と。
しかし、サッカー部員達は相当気合が入っているようだ。オーラと目の輝き様が相手選手と明らかに違う。相手の甲西高校の連中達はその光景に唖然としている。
しかし、どうやら佐久間高校のことは舐めているようだ。それもそのはず、甲西高校とは10-0で敗れているのだ。いくら相手が気合が入っていようと、歓声が凄まじかろうと、実力の差を埋めることは出来ない。と踏んでいる。
なんでも、人間は本来の力の10~30%しか力を出すことが出来ないらしい。例えば何かを殴った時に反動で自分にも同じダメージが加わる。
もし100%の力で何かを殴ったのなら、腕がへし折れる。なので脳が無意識で制御して10~30%しか力を出すことが出来ない。
火事場の馬鹿力という言葉がある。人間は脳内で興奮した時にアドレナリン物質が分泌される。危機的状況、人を助けねばならないという時に、ドーパミンが溢れて制御のネジが弾け飛び、100%の力を出せるのだ。マラソン選手は長期間走ることによって限界を超え、ランナーズハイというのを体験するが、あれはまさにドーパミンが溢れて疲れが吹き飛んで逆に快楽で満たされる症状だ。スポーツ選手はリミッターを外すために色々な工夫をする。ハンマー投げ選手はリミッターを外すために大声を出す。ボクシング選手のモハメド・アリは寝る時に天井に「俺は世界一強い男だ」と書いた紙を貼り、その言葉を繰り返していたらしい。練習中でも、試合前でも常に言葉に出して繰り返していた。要するに大切なのはアドレナリンだ。
アドレナリンによって実力の差を埋めることが出来る。僕達は抑えつけているネジを外すために女子を使った。
佐久間サッカー部よ。今こそ、人知を遥かに超えた力を見せる時だ。
「いよいよですね」
生唾を飲み、震える声で鈴香。
「甲西のボンクラどもをぶっ潰せー!」
叫ぶツグミ。甲西高校のサッカー部の奴らはその声を聴いて、こちらを睨んできた。そしてホイッスルの音が扇町球技場に力強く響いた。
ボールを持っていた深沢は大友にパスをする。
女子達が「大友先輩ー!」と狂ったように叫ぶ。
太鼓の音が激しくなり、ロック長の伊集院の三味線が激しさを増す。
大友は、うぐおおおと叫びながらドリブルをし、1人目を颯爽を交わし、次に横からスライディングをしてきた2人目をジャンプで交わし、物凄い速さで敵陣へと突っ込んでいく。3人目をフェイントで交わし、そしてゴール前にいる深沢にもシュートに近い威力でパスをした。ボールは深沢目掛けて強烈な速さで飛んでいく。そのパスを捕らえようとした奴達が弾かれて次々に吹っ飛んでいく。深沢はそのボールに頭を合わせてジャンプをし、渾身の力でヘッドシュートをした。威力を増して高速回転をするボールは相手のネットに突き刺さった。もはやキーパーは立ち尽くすのみ。
開始10秒後の出来事である。
女子達の絶叫、村井の和太鼓、伊集院の三味線、吹奏楽部の演奏の中、口を大きく開いて呆然と立ち尽くす甲西高校の奴ら。
もはや何かを凌駕していた。漫画の世界だ。そのうち羽とか生えてくるんじゃないのか。モンスターと化した佐久間サッカー部は容赦なく相手チームのネットを揺らし続ける。前半が終わる頃には甲西高校の連中は20歳ぐらい老け込んでいた。
それでも後半も容赦をせずにシュートを決めていく。後半はキーパーを含め11人全員が弾丸となって敵陣へと攻めていっていた。そして、試合終了のホイッスルが鳴り響く。結果は34-0で佐久間高校の勝利。34-0。34-0。
嘘だろ……なにそれ。ツグミはいぇーいと叫び歓喜の声をあげている。
甲西高校の連中は全員フィールドに倒れたまま動かなくなっていた。
大丈夫か?死んでないか?まるで戦場跡だ。その有り様は筆舌に尽くし難い。
まさか本当に人知を遥かに超えた力を見せてくれるとは。
そういえばなんだかこんな感じの映画、観たことがあった気がする。
恐るべし、女子の威力。これはもう佐久間サッカー部の力じゃなくて女子の力だ。
男を翻弄する女子力は世界を制するのかもしれない。そしてそれは歴史が証明している。三国志における赤壁の戦いでは曹操は大喬小喬という美女を巡って起こったとい説がある。トロイア戦争もそうだ。トロイアの王子に奪われたスパルタ王妃ヘレネを奪還することが戦争の大義名分となっていた。
世の中の半分はラブストーリーで出来ているのかもしれない。太宰は恋愛をタダの情欲に耽る二人の戯言みたいな感じで皮肉った。そう、悪く言えばエロの力ということだ。エロの力は世界を良いようにも悪いようにも変える。それは歴史が証明している。
翌日、『魁!佐久間高校サッカー部34-0の圧倒的勝利で1次予選突破!』と大きな文字で書かれた号外が校門前で「号外!号外!」と叫びながら10人ほどの生徒が配っていた。彼らもChallenge to delusionが雇った回し者である。
「何の騒ぎだ!」と及川生徒会長が部下と先生を引き連れて彼らを引っ捕らえていた。そう、奴は先生を「引き連れて」歩くのである。狂った権力。
僕はその様子を二階の自分の席の窓辺からぼーっと眺めていた。
「こりゃぁ優勝出来ちゃうね」
僕の机の上に座って含み笑いをしながら号外を読む遠藤。
「優勝出来たら初優勝じゃないの?」
と微笑をして僕。
「そうだね。佐久間高校サッカー部は最弱として有名だから他の高校は舌を巻いて驚くと思うよ」
と遠藤。
「最弱から最強か。いいね」
と僕。
「嬉しいけどちょっと、残念。はは」
悲しい顔をして弱々しく笑いながら言う遠藤。
「でも遠藤のおかげだし、遠藤が辞めてなかったらこうはなってなかったんだぜ」
と僕。
「ありがとう」
いつもの笑顔を取り戻して遠藤。
昼休み、弁当を持って1人で屋上へ行こうと廊下を歩いていると、前方から部下を複数引き連れた及川琥珀が僕を睨みながら歩いてきた。不機嫌そうな顔をしている。
生徒達は及川を避けて小走りに去っていく。
前から近づいてくる及川一味を僕は避けずに立ちはだかった。
「無礼者!誰を目の前にしていると思っている!避けい!避けい!」
と後ろの何人かの部下が僕の目の前に来て叫ぶ。
及川は片手を上げ部下達を退かせ、僕を睨みながら静かに言った。
「最近、無許可で誰かがサッカー部の記事を書いた雑誌や号外を学校中に撒き散らしているようだ」
「へぇ、そうなんだ」
とすました顔で僕は言った。
「誤魔化すな」
と強い口調で及川。
「お前たちが仕向けていることだと分かっているんだ」
僕は頭をポリポリと掻いて言う。
「何処に証拠が?でっち上げるなよ。生徒会長さん。それに、結果的にサッカー部が優勝出来るかもしれないし良いんじゃない?」
「結果なんぞどうでもいい。私は風紀の乱れを懸念しているのだ。結果が良ければ校則違反を犯しても良いと言うのか?倫理感の欠けた低俗な発言はよしたまえ」
僕に向かって指をさす及川。
「学校に悪影響が出ているのか?良い影響が出ているじゃないか。それに独裁的なほど保守的な佐久間高校の校則は絶対に変わらないし、俺達は何一つ新しい事が出来ない。向上心が無い人間は問題を起こさない。俺達を半分寝惚けた様で何も考えずに、疑問を何も持たせずに死んだように生かせるのがお前たちだ」
及川を睨みながら僕は言った。
「水掛け論はよしたまえ。風紀が乱れているのは確かだ。生徒達が騒がしくなっている」
声を荒らげて及川。
「今までの生徒の静けさが異常だよ。まるで何かに怯えているように感情が抑えこまれてさ。今のほうが人間として生き生きしているじゃないか」
「校則は守る。それが社会の常識です」
及川が僕に額を当てて押してきた。
「個人の尊厳を守るのが基本的人権の尊重。それが日本国憲法だ」
そう言いながら僕は押し返した。
火花がバチバチと散り、僕と及川の周囲の空気がユラユラと揺れ動く。気がする。
その時、背後から「あんたら何してんの?」とツグミの声。
及川はツグミを観た瞬間にうぅっと唸り、明らかな動揺をし、後ずさりをし始めた。
「きっと、後で後悔することになるだろう」
と冷酷な声で言い、及川は部下を引き連れてその場を後にした。
それにしても冷徹冷酷な奴である。奴の額も心なしか冷たくて硬かった。
「及川の奴、大分ムキになってるな。気をつけないと」
及川とその部下達の小さくなっていく背中を見送りながら僕。
「あっそー」
気にも留めないでツグミは昼食のサンドイッチをもぐもぐと食べている。
「せめて屋上着いてから食べたらどうなんだよ。はしたない」
そう言うとツグミはうるせぇと言い僕の背中を殴ってきた。
それから一週間後の2次予選も35-0で相手をぶち破った。そして準決勝も強豪高校を25-0で圧勝。そしていよいよ決勝を迎えた。決勝前夕。
公園でのミーティング。この日は雨が強く降っていたので公園の屋根のあるところへ避難した。
「いよいよ。明日勝てば優勝ね」
とツグミ。
「もう優勝間違いないでしょうな」
ワッハッハと痛快に笑う村井。既にみんな優勝気分である。
しかし遠藤は険しい顔をしていた。
「どうした?遠藤」
僕は遠藤の顔を覗き込む。
「それが、明日の決勝の相手なんだけど、極魔高校と言うんだが、かれこれ全国大会10連勝中の伝説の高校なんだ……」
「10連勝って凄いな。っていうかそれ以前に凄い名前の高校だな。でも佐久間高校サッカー部は既に人間を超えてるから大丈夫だろ?」
笑いながら遠藤の肩を叩く僕。
「いや、正直言って奴らも人間を超えた実力なんだ。奴らは2軍も3軍も含めて全員物凄い体つきをしている。まるでステロイドでも打ってるんじゃないかという。そしてその実力は凄まじい。奴らと対戦するとその鬼のような鬼畜攻めによって必ず負傷者が出ると恐れられているんだ。人呼んで地獄の使者達と呼ばれている」
「誰よそんなダサい呼び名を付けたのは……赦せない」
とツグミ。赦せないのはそこかよ。
「実際ステロイドは打っているのですか?アスリート、武道家にとってそれは在るまじき行為」
低い声で唸るように村井。遠藤は首を横に振って言う。
「いや、ステロイドかどうか、何なのか分からないが。一度奴らの試合を観たことあるんだが、試合が始まる前にみんなで何かの錠剤を飲んでいた。
その錠剤を飲むと奴らの筋肉が痙攣し、大きくなったように見えた。
ちなみにその試合は54-0で極魔高校が勝った。試合が終わる頃には相手チームのほぼ全員が担架で運ばれていた」
「もうなんかサッカーの試合の点差じゃないだろそれ。本当にお前はその時サッカーを観戦したのか?」
と僕。
「あぁ、そして奴らは何か間違いなく筋肉増強剤なのか、卑怯な力を使っている」
握りこぶしを作る遠藤。遠藤は卑怯なことをする奴が嫌いなのだ。
この前もじゃんけんで後出しをして結構本気で怒られた。
「本来人間が持っている自然の力と奴らの自然をねじ曲げた科学の力か。勝負してやろうじゃないの」
胸を張るツグミ。伊集院が静かに口を開いた。
「極魔高校は10年前にシマヅというマッドサイエンティストとして裏の世界で有名な科学者の権威を持つ男を雇いました、シマヅは物理の先生として、そして、サッカー部の顧問としてそこに居ます」
伊集院の目が心なしか睨んでいるかのように鋭く感じる。それにしても、展開がだんだんと飛躍してきて疲弊してきた。
「取り敢えず、ドーパミンを上げるためにいくつか手を打っている。それに期待しよう」
と遠藤。
人間が本来兼ね揃えている超自然的な力か。或いは人間が何千年と培ってきた人工的な力か。自然VS科学の勝負ということか。
「ちょっとちょっと、あんたんとこのサッカー部凄いらしいわね。井戸端会議で聞いたわよ。明日決勝戦でしょ?」
夕食のカレーを食べている時に母が言ってきた。
「あぁ、そうだよ」
何食わぬ顔で僕。
「ねぇねぇ、お父さん。凄いと思わない?今まで弱小サッカー部が一気に強くなったんだって。ドラマチックね」
嬉しそうに母。
「お前は何か部活はしないのか?」
カレーを一心不乱に食べながら、しかし声は冷静に、父。
してるといっちゃぁしてる。それもそのサッカー部に大きく関連性がある。しかし言えない。
「してないよ」
そう言いながらカレーをぱくりぱくりとリズム良く口に放り込んでいく僕。
「部活はしたほうがいいぞ。特にスポーツ系をオススメする。私は陸上部に入ってそれなりに活躍したものだ」
カレーの湯気で曇った眼鏡のまま食べ続ける父。
「そうなんだ。それは意外だね。それにしても、何故スポーツ系の部活に入ったほうがいいんだい?」
と僕。
「そこには理不尽なことがたくさんある。先輩のユニフォームを洗わされたり、運動場の整備をいつもやらされたり、顧問の先生からは水も飲まされずによしと言われるまで延々と走らされたり。そういった理不尽さに耐えていくことで社会に出てからの理不尽さに耐えていくためのハートが鍛えられる」
と淡々と語る父。
「社会とはそんなにも理不尽なものなのかい?」
と僕。
「そう、社会とはそんなにも理不尽なものなのだ。それが現実だ。しかしそんな現実に逃げていると、社会的地位が低くなり不自由な暮らしを虐げられることとなる。もっともスポーツ系の部活に入らないと社会的地位が低くなるということではない。ただ、理不尽な社会で生きていくためには或いはそれも有効な手段だということだ」
と父。
いつの間にかみんな夕食を終え、くだらない芸能人の格付け番組を観ながら余韻に浸る。
「一郎は将来何になりたい?」
と爪楊枝を加えながら父は言う。
「そうだね。夢は作家だよ。なれると思っていないけどね」
「そうか。それなら今から本を書くべきだ。本を書いているか?」
「書いていないよ」
「そうか。それなら難しいな。今日、本を書いているなら、なれるだろう。しかし、今日、本を書いていないなら諦めたほうがいいだろう」
父は冷静に言った。
言わんとしていることが分かった僕は、なんだか腹が立ち自室に篭った。
それはそうと、明日はとうとう、決勝戦。相手は人造人間のようなものだ。勝てるのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます