第10話 一時の安らぎ
「よし、腐ってないな」
「なんか、その確認いやですね」
「文句があるなら食わなくても良いんだぞ、なかなか食えない肉だけどな」
【ライラ、意地悪しない】
食堂らしき場所に着いた三人は、肉や魚を見つけそれを調理していた。ただ、茹でて焼きなおすだけだが。
「串ないか?」
「そういえばありませんね。茹でることしかしてこなかったんでしょうか?」
【それは無いと思う。火があるなら真っ先に焼くことが出来るから。串以外に焼く道具があったんだと思うよ】
「けど、その道具が見当もつかないんだけど」
「道具置き場に何か有りませんでしたか?」
「なべ以外にもなべをものすごく薄くした感じのものはあったな」
ライラはそう言いながらなべを見つけた場所から取り出す。
「結局何に使うか分からなかったから言わなかったけど。これで焼くのか?」
【でも、それ以外に何も無いでしょ】
「それもそうか。でも、これで本当に焼けるのか?」
「何事も挑戦してみなければ分かるものも分かりませんよ。それに、まだお肉も沢山ありましたし」
【ノアの言うとおりだよ。一回でも良いからそれで焼いてみよう】
ライラはなべの隣で薄いなべを使い焼き始める。
鉄串に刺して焼いているため、薄いなべの淵に置く形になる。そのまましばらく待っていたが、特に変化が見られない。
「なあ、火で直接に焼いたほうがいいんじゃねえか?」
【それらしき道具を見つけたんだから使ってみたいんだよ】
「少しいいですか?その薄いなべにお肉が当たってないから焼けないじゃないですか
?」
「じゃあ、それをやって焼けなかったら火に直接な」
いうや否や肉を鉄串から抜いて焼く。しばらくすると肉の焼ける匂いが漂ってくる。
「いいにおいがしてきたな」
「そうですね、早く食べたいです」
【ライラ、早く】
「そう急かすな。そろそろいい頃合だと思うから」
ライラは薄いなべを斜めに傾け、肉を見つけた皿に移し始めた。
「じゃあ、食うか」
【ノアはもう食べ始めてるよ】
「そんなに、腹が減っていたのか」
ノアは、肉の脂で服が汚れないように食べている。しかし、食べる勢いはとまらない、下品なくここまで食べるのはある意味すごいことなのだろう。
肉を食べながらこれからのことを話し始める。
「まずは、この部屋の周りにここと同じように開いている部屋が無いか探すことが先決だ」
「ですけど、先に睡眠もとらないといけませんよ」
【食料はここにあるものでしばらくは大丈夫だと思うし、少し休息を取ってからでも良いんじゃないか?】
「でも、軽く周るぐらいなら良いだろう」
【じゃあ、交代で睡眠をとった後に見に行こうか】
「私はそれに賛成です」
「先に見て周りたかったんだが、ここで反論ところで疲れるだけ出しな。そうしとくか」
飯を食った後は机が置いてある場所に戻り、毛布を並べて寝る準備を始める。寝るのはノアが最初で次にライラ、最後に俺が寝る。一人ずつだ。必ず部屋に一人、起きているやつがいること。これがとりあえずの決まりだ。
「では、今から寝ますけど。何かしてきたら容赦はしませんよ?」
そう言うノアは目がまったく笑っていなかった。俺とライラは引き気味になりながらも頷く。
しばらくすると、ノアの寝息が聞こえてくる。やはり、疲れていたのだろう。
「さて、ノアも寝たことだし男の二人談義と行きますか。」
【何が悲しくてそんなことをしなきゃいけないんだ】
「良いじゃねえか、これから先何が起こるかわからないんだぜ?交友を深めても良いじゃねえか」
【それもそうだが、なぜここでそれをするんだ】
「べつに、思いついただけ」
【さっきは、ここの周りを見て周るとか行っていたくせに。一人だと怖気づいたのか】
「まあ、似たようなもん。だってさ、俺蟲なんか見たことも無かったんだよ。でも、あの穴から落ちるときに見た蟲の目、すげえ怖かった。俺達を餌としか思っていないような目。あんなのに対抗できるのかって」
【人間は蟲に対抗することはできないよ。でも、抵抗することは出来る。人間の特徴はしぶとさだ。でなきゃここまで人間が残ってるわけも無い】
「それもそうだな」
落ち着いたのか、目を瞑り静かにし始める。何か思うところでも有ったのか、ノアを起こす時間になるまで黙ったままだった。
ノアが起きた後も特に問題なく、俺が寝る時間が来る。明日は、ここから出る手段が見つかれば良いなと思いながら意識が薄れていく。
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