第3話 リランの苦悩
いったいどうすればいいんだ。ノアとは昔からの付き合いだが、二人きりになるのなんか初めてだぞ。なんか話をしなくちゃ。
そのときに、ノアが話しかけてきた。
「あの~、リラン君?」
【なに?】
ノアは何を話そうとしてるんだろう。情けないけどどうにかこの空気から抜け出したい。
その思いを乗せてノアのほうを見る。
「む、蟲ってどんなものなんでしょうね?」
む、蟲?何でいまここで聞いたんだろう。明日に備えてのことかな?まあ何にせよ話題がひとつできた。がんばって伸ばして話そう。
【蟲って言うのは大きな分類でしかないんだ。蟲の中にも甲殻を持つものもいれば羽を持っているものもいる】
「へ~、そうだったんですか」
蟲を知ろうとしたらまずこの話になるけど、案外知らないものなんだな。だったら蟲の生態じゃなくて種類から話していくか。
【甲殻を持つものの中にも分類があって、はさみの様なものを身につけている蟲もいるし、角だってあるやつもいる。角の中にも硬かったり本数が多かったりとさまざまな種類がいる】
「な、なんだか難しくなってきましたね、私にはちょっと理解できないかもしれないです」
【そんな難しいことでもないよ。人間の中にもまったく同じ人はいないでしょ?それと同じだ】
「わかったような、わからないような」
【まあ、進化の過程によって変わってくるからね。たくさんの種類がいるって思っていればいいよ。どんな蟲かを知ることができれば対処の仕方がある程度わかってくるから】
「そうなんですか、リラン君は物知りですね」
ちょっとだけ恥ずかしいな。経験から学んだことを教えているだけなのに。
ノアがずっと難しい顔して考え事をしてるけどどうしたんだろう。
【何考えてるの?】
「いえ!あの、いま明るい話題を考えているところでして」
【話題を考えていたの?】
「う~、はい」
まさかのノアも考えていたとは。二人で考えてもこんなに出ないとは。二人になってからしばらく経つけど蟲の話しかしていない。ならもう、考えないで塞いだ穴のことを考えてじっとしていよう。そのためにノアを説得しよう。
【そんなこと考えなくてもいいよ。一緒にいるうちにいつかは話題が自然と出てくるものさ。だから今は考えなくてもいい】
「そうですか、わかりました」
あっさり説得が終わってしまった。苦し紛れの言い訳だと思ったんだけどな。頭の片隅にでも残ってくれているならいいや。そういえば、話を終えてから少ししたらノアが力を抜いたな。何があったかは知らないけど。二人きりになってからずっと緊張してたからな。それが抜けたならいいことだと思う。
今日は切り抜けたはいいけど、明日からどうしよう。
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