第5話 志願者の募集

「親方、アウロ村長と話をしてきたんですよね。どうなりましたか?」


 親方が仕事場としている工場に着くとそこには採掘者がたくさんいた。皆空洞について気になるようだ。


「ああ、さっき話をしてきた」

「おお、それで、どうなりました?」

「あの空洞を調査することになった。これから広場に志願書を張り出しに行くところだ。俺はその調査隊に隊長になった」


 皆親方の言っていることが理解できなかったようだ、アホみたいに口をあけて親方を見ている。

 そのうちの一人が、声を震わせながらも質問を投げかけた。


「親方、それってあの空洞の中に入るって事ですよね。蟲がいるかもわからないあの中に」

「まあ、その認識であっている。今から3日後に入る予定だ」

「そんなに早くですか!こうしちゃおけねえ、お前ら今すぐ準備しろ!」

『おうさ!!』


 工場にいた採掘者は示し合わせたように動き出した。これには親方も困惑したようで質問をしたやつに声をかけた。


「おい、ライラ。何してやがんだ?」

「親方こそ何言ってるんです。空洞の調査に行くんですよね?親方が行くんでしたら俺たちもついていくに決まってんでしょうが」

「命もかかってんだぞ!」


 少し怒鳴り気味に親方が言った。するとライラと呼ばれた男が逆に怒鳴りだした。

 ライラとは茶色の髪をヘアバンドで逆立たせてサングラスをしている少し派手な見た目をしている男だ。次代の親方とも呼ばれている。


「そんなのわかり切っています!穴の中に入るのが命がけなんて事は知っています。でも、俺は、俺たちはあんたのそばに居てえんだよ。それに親方、いや隊長。さっき自分で言ったんじゃないですか。志願書を張り出すって。つまり、志願すればいいんですよね」

「確かにそう言ったが、すぐに死ぬ決意が決まるものなのか?」

「ははっ、そんな決意なんてあるわけないじゃないですか。死ぬ決意じゃなくて、生きる決意ならありますけど」


 ライラは自分の身支度をしながら己の覚悟を言った。すると後ろのほうに居たほかの採掘者も決意を言い始めた。


「さすがライラ、すごいこと言うねえ。だったら俺も言ってやろうじゃねえか!俺の覚悟は皆でまた馬鹿騒ぎするためにあの中に入るぞ」

「俺はまたこの村の景色が見てえ、いい眺めのところがあるんだ」

「私は買いたいものがあるからその金稼ぎだね。生き死にの話じゃないよ」


 そこで笑いが起きた。皆が皆それぞれの思いを持って挑もうとしているんだ。

 親方も己の覚悟を決めたように言い放つ。


「わかった!お前らの思いはわかった。なら、おまえら。ひとつ聞きたい。またこの村に戻ってくる気はあるか?」

『当たり前だ!!』

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