第12話 人と蟲
『デハ、今イルココノ説明ヲ始メマスネ』
「あー、先にちょっといいか?」
『何デショウカ?』
ライラがろぼっとの言葉を遮り何かを言い始める。それは、お前の体を直せないかということだった。
『部品トナルモノハココニアルノデ直ス事ハ可能デス』
「なら、」
『デスガ、私タチロボットハロボットニ手ヲ加エルコトガ出来マセン。ソレハ、反逆ノ目ヲ摘ミ取ルタメデス。ナノデ修理スルコトモ出来ナイノデス』
ろぼっと曰く、修理を許してしまったら己の体を改造して人間を滅ぼすかもしれない。と、想像していたらしい。それをこのろぼっとが知っているのは最後の人間が教えてくれたからだそうだ。しかし、その設定を解除する前に死んでしまったらしい。
なので、いままでも体を直すことが出来なかった。古い体のまま過ごしてきたのだ。
【設計図ある?】
『データトシテ残ッテイマス』
【なら、俺がお前の体を直せるか試してみよう】
「そうか、リランは整備士だもんな。だけど、先祖さまが作ったろぼっとなんてもの直せるのか?」
【設計図があればなんとなくで】
「では、まずそのろぼっとさんを直しましょう!」
ノアがこの場を締め、ろぼっとが工場となる場所につれて行ってくれた。
ついたのはろぼっとを作っているところではなく、10人入ればちょうどいいぐらいの部屋だった。
「ここはなんだ?」
『ココハ研究室デス。設計図ハココニアリマス』
【ここは整備することも出来るの?】
『量産型ノモノハ出来マス。オリジナルハソレヲ作ッタ場所デナイト出来マセン。ココハ一般ニ空ケラレテイル場所ナノデ利用率ガ高イノデス。デスカラ、スグニ使ウコトガ出来マス』
【じゃあ、使い方を教えて。覚えたらすぐに取り掛かる。まず、そのかめらって言うものから直したい。一人だけ変な方向に石版を向けてるから】
「それ、気にしてたのか」
ライラに石版を見せ付けるようにして言う。
【ライラも筆談で過ごしてみるといい。今この場所の疎外感が凄いから】
「お、おう」
「そうですよライラ君。私たちが向き合って話しているのに、リラン君は一人さびしく石版をかめらに向けているのを笑うのは」
「ノア、俺そこまで言ってないしお前のほうがひどい事言ってるからな」
【ろぼっと、早く始めよう】
『デハ、此方カラ説明ヲシマショウ』
俺はこの疎外感から脱却するべく、ろぼっとを直す。ついでに直せるなら他の部分も直していこう。
***
『ありがとうございまス。まだ本調子ではないものノ、以前よりは良くなりましタ。カメラも見えるようになりましたシ』
【カメラ以外にもスピーカーも直しておいた】
「すぴーかーってなんですか?」
【砕いて言えば声のこと】
「だから前よりも聞きやすくなっていたのか」
『皆様にお聞き苦しい音をお聞かせてしまっテ、申し訳ありませんでしタ。しかシ、リラン様に直してもらいましたのデ、ノイズ音は少なくなったと思います』
設計図をみてこのロボットの構造がある程度知ることが出来た。今の俺たちには無いものばかりだったけど勉強にもなった。この型以外のものもあったし。
「じゃあ、この場所の案内をしてもらうんだが、先に行きたい場所がある。あればいいんだが」
『それは何処でしょうカ?検索してみまス』
「歴史についての本が置いている場所は無いか?それとこの場所に入るための出入り口」
「あと、寝室は何処ですか?」
『でハ、ここから一番近い寝室へ向かいましょウ。その後にゲート、制御室に向かいましょウ』
俺たち三人とロボットは研究室から出て、一番近いといっている寝室へと向かう。その途中たくさんの扉を横切ったが、そのほとんどが閉められていた。
【なあ、今まで通ってきた扉の中は何があるんだ?】
まだ周囲にあるカメラを使って俺たちを見ていたのか、石版を掲げると後ろを振り向く。そしてカメラを調整しながら文字を追う。
『ここは所謂工場エリアなんでス。今まで通ってきた扉の中には私以外のロボットが作られていたリ、生活上必要なものなどが作られているのですヨ』
「その必要なものって何ですか?」
『一番必要とされていたのが消耗品でス。他にも家具や食器の類、ここには無いんですけど食料加工場などがありまス』
「武器とかは無いのか」
『一応ながら有りまス。ですガ、普段は使われることが無いでしょウ』
【何故?】
『私たちの脅威となる者がいないからでス』
昔の人間には争いごとが無かったということだろうか。だが、上で見た壁画には争いごとが描かれていた。今の時代も、村と村との距離はあるが穴の中で鉱石の奪い合いの様なものはする。ここに住んでいれば何でも作れるからだろう。
「蟲とかはいなかったのか、その時に」
『観測はされていましタ。この施設の外デ。ここに住んでいた人間は基本的に外には出ませン。この中で産まレ、生キ、そして死んでゆク。ですので蟲なんてものを見たことが無いなんて方もいますヨ』
「外から入ってくることは無かったのか?」
『稀にですガ、中に入ってくることもありましタ。しかシ、先ほど言った武器を使い殺してきましタ』
「どこから入ってきたんですか?」
『施設の壁の整備をしているときにでス。蟲は今の時代のものと比べると小さク、大体子供と同じ大きさでしタ。なので壁を破る力も無ク、そのような場所から入ってくるのでス』
【じゃあ、ここで見た蟲は壁を破ってきたのか】
『そうでス。さア、到着しましタ。居住エリアでス』
最果て 秋楓 @unknowun
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